かつて日本経済をけん引してきた、家電をはじめとする電気機器メーカー。近年は海外勢に押されがちだが、業績を着実に伸ばしている企業もある。ソニーだ。平均年収や業績などをもとに、同社の動向を見ていこう。
家電業界の平均年収ランキング
まず、大手家電・電気機器業界の平均年収ランキングを紹介する。平均年収は、各社が会計年度ごとに公表している「有価証券報告書」を参照した。なお、金額はいずれの企業も2020年3月31日時点を基準としている。
<大手家電・電気機器企業の平均年間給与ランキング>
順位 | 企業名 | 平均年収 |
1位 | ソニー | 1,057万1,348円 |
2位 | 富士フイルムホールディングス | 1,002万8,486円 |
3位 | 日立製作所 | 902万6,872円 |
4位 | 東芝 | 867万5,871円 |
5位 | オムロン | 828万9,000円 |
6位 | リコー | 827万9,315円 |
7位 | 日本電気(NEC) | 814万8,125円 |
8位 | 三菱電機 | 806万9,144円 |
9位 | 富士通 | 803万6,835円 |
10位 | パナソニック | 754万6,379円 |
1位:ソニー 1,057万1,348円
ソニーがトップに輝いた。従業員数は2,682人、平均年齢42.4歳、平均勤続年数は16.6年。
2位:富士フイルムホールディングス 1,002万8,486円
2位は、デジタルカメラをはじめとしたイメージングソリューションやメディカルシステム機器などを手掛ける富士フイルムホールディングスで、ソニーとともに1,000万円を超えた。従業員数は228人、平均年齢42.7歳、平均勤続年数は17.2年。
3位:日立製作所 902万6,872円
3位は1910年創業の総合電機メーカー・日立製作所で、上位2社に水をあけられたものの900万円超と高い水準を誇っている。従業員数は31,442人、平均年齢42.3歳、平均勤続年数は19.1年。
ソニーの平均年収の推移
ソニーの平均年収が業界首位であることがわかった。過去10年間の推移を見ると、波はあるものの2018年3月期に1,000万円の大台を突破し、その後は堅調に推移していることがわかる。
営業利益は2018年3月期に過去最高を更新し、以後高い水準を維持している。好業績が年収にしっかり反映されているようだ。
<ソニーの平均年収と営業利益の推移>
会計年度 | 平均年収 | 営業利益 |
2020年3月期 | 1,057万1,348円 | 8,454億5,900万円 |
2019年3月期 | 1,050万9,690円 | 8,942億3,500万円 |
2018年3月期 | 1,013万6,934円 | 7,348億6,000万円 |
2017年3月期 | 910万6,527円 | 2,887億200万円 |
2016年3月期 | 935万4,904円 | 2,941億9,700万円 |
2015年3月期 | 859万8,828円 | 685億4,800万円 |
2014年3月期 | 885万772円 | 264億9,500万円 |
2013年3月期 | 891万2,306円 | 2,301億円 |
2012年3月期 | 951万5,714円 | -672億7,500万円 |
2011年3月期 | 923万5,955円 | 1,998億2,100万円 |
ソニーの最近の業績は?
前年比約155%増の営業利益を記録した2018年3月期は、モバイル・コミュニケーション分野とその他の分野を除くすべての分野で増収となり、為替変動もプラスに働いたようだ。
2019年3月期はモバイル・コミュニケーション分野で大幅な減収があったが、ゲーム&ネットワークサービス分野の大幅増収などにより、前期比約21.7%増となった。
新型コロナウイルスの流行が始まった2020年3月期は、音楽分野やゲーム&ネットワークサービス分野で大幅な減益となったが、イメージング&センシング・ソリューション分野が大幅増益となり、営業利益は前期比5.5%減にとどまった。
2021年3月期の業績は4月28日発表予定となっているが、2月発表の第3四半期決算では、ゲーム&ネットワークサービス分野や音楽分野、金融分野など多くの分野で10 月時点の見通しを上回っている。
巣ごもり需要として、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」やモバイル向けゲームアプリケーションが好調に推移しているようだ。また、大ブームを巻き起こした「鬼滅の刃」の映画配給を、子会社のアニプレックスが東宝とともに担っていることも大きい。
新規事業に向けたソニーのチャレンジは続く
カメラやスマートフォンなどのエレクトロニクス分野をはじめ、ゲームや音楽、映画といったエンターテインメント分野、イメージング・センシング分野、金融分野と事業を拡大し続けるソニーは、家電・電気機器メーカーの枠にとらわれないコングロマリットに成長した。
今後は、自動運転技術の開発が進む車載分野にも大きな期待が寄せられる。自動運転で必須とされるセンシング領域において、CMOSイメージセンサーをはじめとするソニーのセンシング技術は高く評価されてる。
2020年にはオリジナルの試作車両「VISION-S」を公開し、業界を驚かせた。このほかにも、AIロボティクス領域で推進するドローンプロジェクトやクリエイティブ領域のAI開発、2020年に衛星を打ち上げる予定の宇宙エンタメ事業など、新しい領域に向けたソニーのチャレンジは続きそうだ。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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