この記事は2026年7月17日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「日米株の下値は限定的、高値更新は半導体・AI株の反発次第」を一部編集し、転載したものです。
日米株式市場は、AI投資拡大への期待や中東情勢の緊張緩和を材料にした上昇が一服し、6月下旬以降は上値が重い。米国のハイパースケーラーによる積極投資の持続性への懸念に加え、日米の金融政策を巡る不透明感や長期金利の上昇が投資家心理の重しとなっている。
もっとも、相場の実態は悲観一色ではない。半導体を中心とするAI関連株に集中していた資金が相対的に割安な業種へ循環している側面が強く、株価指数全体では底堅さが維持されている。この動きは企業業績の面からも説明できる。
TOPIX(東証株価指数)と米S&P500種指数の12カ月先予想EPS(1株当たり利益)は2026年にかけて上昇基調を維持している(図表)。一方、アナリスト予想の上方・下方修正件数から算出されるリビジョン・インデックスは、4月にゼロ近辺、あるいはマイナス圏まで低下し、EPSの改善との乖離が生じた。しかし、5月以降に米国、次いで日本も持ち直した。
4月にはホルムズ海峡封鎖や原油高による業績悪化が多くの銘柄に織り込まれたが、AI投資需要の恩恵を受ける一部銘柄が全体の利益を支えた。その後は停戦期待の高まりとともに原油価格が落ち着き、より多くの銘柄で業績悪化への懸念が一服した。実際、日本では輸送用機器や空運、海運、米国では一般消費財・サービスやヘルスケアで予想EPSの下げ止まりが見られ、株価の下値を支えている。
足元では、米・イラン間の緊張再燃や長期金利上昇を受けてバリュエーション調整が起こりやすい。だが前述のことを踏まえると、軍事衝突や海上封鎖が本格化しない限り、下値は限定的と考えられる。筆者は、TOPIXは予想PER(株価収益率)が16倍まで縮減した3,900ポイント、S&P500は20倍まで縮減した7,300ポイント前後が目先の下値メドになるとみている。
今後の焦点は、日米共に4~6月期決算である。すでに市場が織り込みつつあるように、幅広い業種で利益見通しの改善が確認されれば、相場の下値は切り上がる公算が大きい。特に日本株は、ドル円相場が日銀短観(6月調査)の想定為替レートを上回る円安水準で推移しており、輸出関連企業を中心に業績上振れ余地はある。
とはいえ、高値更新には不安定な推移が続く半導体・AI関連株の反発が不可欠だ。7月末以降のハイパースケーラー各社の決算でAI向け設備投資の継続や需要の強さが確認されれば、株価指数の一段高も期待できよう。他方、投資継続性への懸念が払拭されなければ、下値こそ堅いものの上値も限られ、レンジ相場が長引く可能性が高い。
MCPアセット・マネジメント ストラテジスト/大塚 理恵子
週刊金融財政事情 2026年7月21日号