新型コロナウイルスの感染拡大は、宿泊業界にも大きなダメージを与えた。赤字転落、債務超過、そして経営破綻する企業も相次いだ。しかし、その中で黒字を維持したホテルチェーンがある。アパホテルだ。
コロナ禍がホテル業界に与えた影響
新型コロナウイルスがホテル業界に与えた影響は、東京商工リサーチが定期的に発表している「新型コロナ倒産」に関するデータを見るとよくわかる。
2021年6月4日時点の新型コロナ関連の経営破綻(負債1,000万円以上)は、累計で1,518件。業種別で見ると飲食業が最も多く276件で、建設業が145件、アパレル関連が131件、宿泊業が81件と続く。
<新型コロナ関連の経営破綻(2021年6月4日時点)>
飲食業 | 276件 |
建設業 | 145件 |
アパレル関連 | 131件 |
宿泊業 | 81件 |
こうして見ると、宿泊業の経営破綻が少なく見えるかもしれないが、飲食業を営む企業に比べて宿泊業を営む企業がはるかに少ないことを考えると、宿泊業も多大なダメージを受けていることがわかるだろう。
特にホテル運営のWBFホテル&リゾーツの経営破綻は、宿泊業界における大型倒産として大きな衝撃を与えた。帝国ホテルが2021年3月期の連結決算で117億1,000万円の営業赤字を出したことも印象的で、営業赤字となるのは1961年に上場してから初めてだった。
アパホテルの業績
宿泊業界に赤字転落や経営破綻といったニュースが飛び交う中、窮地をしのぐために休業を決めたホテルや旅館も少なくない。そんな中でアパホテルは、黒字を確保したのだ。
2021年2月、アパホテルを運営するアパグループは2020年11月期の連結決算(2019年12月〜2020年11月)を発表した。売上高は前期比34.1%減の904億3,200万円となったが、9億4,900万円の黒字を確保した。
<アパグループの2020年11月期の連結決算>
項目 | 2020年11月期 | 前期比 |
---|---|---|
売上高 | 904億3,200万円 | -34.1% |
営業利益 | 20億4,400万円 | -94.3% |
経常利益 | 10億900万円 | -97.0% |
当期純利益 | 9億4,900万円 | -95.5% |
ホテル業界の利益率は5〜10%程度といわれている。そのような薄利で売上高が30%以上も落ちると、通常は固定費の負担に耐えきれず赤字に転落する。では、なぜアパグループは黒字をキープできたのだろうか。
アパホテルと他のホテルチェーンは何が違っていたのか?
アパホテルがコロナ禍でも黒字を維持できた主な理由は、以下の4つだ。
自社で予約サイトを運営
アパホテルは自社で予約サイトを開発し、ホテル予約サイトやホテル比較サイト経由の予約が極力少なくなるようにしている。そうすることで、予約サイトや比較サイトに支払う手数料を抑えられるからだ。手数料は10〜18%程度で、利益率に大きな影響を及ぼす。
格安キャンペーンに成功
ホテルの部屋は、誰かが泊まってはじめて売上が立つ。その視点で、アパホテルは1泊2,500円で宿泊できる「コロナに負けるなキャンペーン」や、創業50年に合わせて3,900円で宿泊できるプランを打ち出し、薄利でも売上減を何とか食い止めようと努めた。
軽症者向けに施設を有償提供
新型コロナウイルスの感染が拡大し、軽症者の受け入れ病床が不足する中、アパホテルはいち早く軽症者の受け入れ施設として手を挙げた。軽症者の受け入れ施設となると、自治体に有償で部屋を貸し出すことになる。これが売上減に歯止めをかける一因となった。
不動産のほとんどを所有
アパホテルは、運営するホテルの不動産のほとんどを所有している。もちろん、購入時には多額の費用がかかっているはずだが、自社所有であり賃料が発生しないため、コロナ禍のように宿泊客が大幅に減るような事態に強い。
「日頃の行い」の重要性も気付かせたコロナ禍
アパホテルの4つの強みを紹介したが、これまで積み重ねたアパホテルに対する信頼、そして人気やブランド力も、コロナ禍でのホテル運営を下支えした。
平時の革新的な取り組みが、コロナ禍のような緊急時に奏功したといえるのではないだろうか。
文・MONEY TIMES編集部
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