トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス 価格:6MT 456万円 試乗記

GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス GRヤリスはWRC(世界ラリー選手権)での勝利を目指し先進テクノロジーを投入 1.6リッターターボ(272ps)のRZ/RC系(4WD)をメインに1.5リッター(120ps)のRS(FF)も設定

G16E-GTS型「ハイスペックターボ」搭載。全身モータースポーツ直系

 GRヤリスは、1999年に生産を終了したセリカGT-FOUR以来、20年ぶりに復活したスポーツ4WDである。コンセプトは「ストロングスポーツカー」。トヨタのスポーツ戦略車として、「次期WRC(世界ラリー選手権)ホモロゲモデル」、「素のままでローカル競技で勝てるパフォーマンス」、「誰でも買えるスポーツカー」という3つのミッションが与えられた。

 とはいえ、トヨタは20年の空白期間でスポーツ4WDの「技術」と「技能」を失っていた。それを短期間でリカバリーするために、開発を担当したGRカンパニーは「モータースポーツから学ぶ」手法を選んだ。強いクルマ作りはWRカーを手がけるTMR(トミ・マキネン・レーシング)、評価はレーシングドライバー/ラリードライバーから学んだそうだ。
 クルマ作りにも工夫がある。「高い目標」と「課題の明確化」のためにトヨタ自動車のさまざまなカンパニーと連携する「クロスファンクションチーム」を樹立。実はこれ、WRCを戦う「トヨタGAZOO Racing ワールドラリーチーム」と同じ手法である。

 GRヤリスの心臓部はG16E-GTS型。専用開発の直列3気筒ターボだ。ボア×ストローク87.5×89.7mmで排気量1618cc、圧縮比10.5、最高出力272ps/6500rpm、最大トルク370Nm/3000~4600rpm。最近主流のダウンサイジングターボではなく、まさにハイスペックターボである。
 開発エンジニアはWRカー用エンジンの製作を担当するTGR-EでWRCでのエンジンニーズを調査。「軽量/コンパクトである」、「中低速トルクの豊かさと、ハイパワーを両立させる」、そして「扱いやすい」という希望を把握し、これをすべて実現した。

 エンジン生産はトヨタの下山工場で行われる。通常のエンジンとは比較にならない高精度実現のために各部品の重量合わせや組み付け精度を理想値とするための工夫を施し、量産する新システムを構築した。完成したエンジンには、ブロック側面に「GR SHIMOYAMA 匠」のエンブレムが装着される。
 設計者の理想値実現を保証する証明である。

GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
1618cc直3DOHC12Vターボ 272ps/6500rpm 370Nm/3000〜4600rpm WRCニーズを盛り込んだハイパフォーマンス設計 全域パワフル ターボはボールベアリング式
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
G16EーGTS型ユニットはシャープな吹き上がりと圧倒的なパワーでドライバーを魅了 速さは超一級 独特のビートを奏でるエンジン音も刺激的 パワーウェイトレシオ:4.70㎏/㎰

すべてに「こだわり」満載。走りは刺激たっぷり

 GRヤリスはエンジン以外にもこだわりを満載した。トランスミッションはGRヤリス用に強化&最適化された6速MT。シフトアップ/ダウン時にエンジン回転数を合わせる「iMT制御」も採用する。
 AWDシステムはシンプル&軽量なハイレスポンスカップリング(電子制御多板クラッチ)を用いたGR-FOUR。前後駆動力配分は3つのドライブモード(ノーマル60対40/スポーツ30対70/トラック50対50)が設定され、前後1000対0~0対100までアクティブに制御される。RZハイパフォーマンスにはフロントとリアにトルセンLSDが組み込まれる。

 プラットフォームはフロントが標準ヤリス用のGA-B、リアセクションはひとクラス上のGA-Cと言うハイブリッド仕様。WRCのレギュレーションを考慮してさまざまなアイデアを盛り込んだ結果、ほぼ専用設計になった。
 ボディはマルチマテリアル構成。軽量化と低重心のためにボンネット/ドア/リアゲートはアルミ製、ルーフはC-SMC製(カーボン)だ。バッテリーのリア配置で重量配分の適正化を行っている。
 サスペンションはフロントがストラット、リアにはダブルウィッシュボーンを採用。ブレーキは対向ブレーキキャリパー(フロント4ポッド/リア2ポッド)+大径ローター(フロント2ピース、リアドラムインディスク)、タイヤは225/40R18を装着する。
 生産は愛知県の元町工場に新設した専用ラインのGRファクトリーが担当。タクトタイム600秒、ベルトコンベアなしで1台1台丁寧に熟練スタッフの手で生み出される。

 走りは刺激たっぷりだ。フットワークは「軽さは正義」を実感する。車両重量は1280kgだが、体感上は1200kg前半のイメージ。セオリーどおりに走る限りは、オンザレールのハンドリングが印象的。グイグイとノーズがインを向くアンダー知らずのフロントとドシッと踏ん張るリアのバランスは秀逸だ。しかもドライバーのアクション(アクセルやブレーキ、ステアリング操作)次第でオーバーステアまで持ち込める自在性も持ち合わせている。
 GRヤリスの走りは、これまでのトヨタ車になかったセットアップである。
 偉大なる先輩たち……三菱ランサー・エボリューション、SUBARU・WRX・STIが生産終了となった現在、スポーツAWDのDNAを受け継いだ「令和のラストサムライ」と呼びたい1台である。

GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
4WDシステムはシンプル&軽量なハイレスポンスカップリング式 走行モードはノーマル/スポーツ/トラックを設定
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
GRヤリスはファットなフェンダーが印象的 RZハイパフォーマンスは前後トルセンLSD標準 サスペンションはハイパフォーマンス専用チューニング ボディカラーは写真のプレシャスブラックパールなど全4色設定
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
インパネ造形は標準ヤリスと共通 GRヤリスは専用スポーツステアリング装着 中央は8インチディスプレイオーディオ RZハイパフォーマンスはJBLサウンド標準
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
RZハイパフォーマンスはプレミアムスポーツシート装備 前席はサポート性に優れたバケット形状 後席は実用的な広さ
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
メーターは2眼式 速度計は280km/hスケール 中央液晶に前後トルク配分など各種情報を表示
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
6速MTはクロースレシオ設定 しっかりとした操作フィール シフトアップ&ダウン時に最適な回転制御を行うi-MT機能付き
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
4WDモード切り替えスイッチはコンソール部にレイアウトする
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
ACCを含む安全装備トヨタセーフティセンスはop(24万9700円)
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
RZハイパフォーマンスは225/40R18ミシュラン・パイロットスポーツ4S+BBS鍛造アルミ標準
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
フロントブレーキはアルミ対向4ポッド仕様 鮮烈なレッドキャリパー 制動能力抜群
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
フロントマスクはGR車共通のファンクショナルマトリクス形状
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
排気エンドは左右ツイン 刺激的なサウンド発生 中央にバックランプ装着
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
ボディはマルチマテリアル構成 ルーフは軽量カーボン(CーSMC)製

トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス 主要諸元と主要装備

GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由

グレード=RZハイパフォーマンス
価格=5MT 456万円
全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース=2560mm
トレッド=フロント:1535×リア:1565mm
車重=1280kg
エンジン=1618cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=200kW(272ps)/6500rpm
最大トルク=370Nm(37.7kgm)/3000〜4600rpm
WLTCモード燃費=13.6km/リッター(燃料タンク容量50リッター)
(市街地/郊外/高速道路:10.6/13.8/15.3km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/40ZR18+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=4名
最小回転半径=5.3
主な燃費改善対策=筒内直接噴射/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング /アイドリングストップ/充電制御
主要装備=アクティブトルクスプリット4WDシステム/4WDモードセレクトスイッチ/スポーツモード付きVSC/トルセンLSD/専用チューニングサスペンション/フロント18インチアルミ対向4ポッドキャリパー&リア16インチアルミ対向2ポッドキャリパーブレーキ/空冷インタークーラー/カーボンルーフ(フィルム)/アルミ製ボディパネル/リアスポイラー/3灯LEDヘッドライト/スポーツメーター/本革巻きステアリング&シフトノブ/アルミペダル/スマートエントリー/プレミアムスポーツシート(ウルトラスエード&合成皮革)/フルオートAC/8インチディスプレイオーディオ/BBS製鍛造アルミ/ミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤ/盗難防止システム/JBLサウンドシステム+アクティブノイズコントロール
装着メーカーop:トヨタセーフティセンス(プリクラッシュセーフティ+レーントレーシングアシスト+レーダークルーズコントロール+ブラインドスポットモニター+クリアランスソナー&バックソナーほか)24万9700円/シートヒーター2万7500円
ボディカラー:プレシャスブラックパール(op5万5000円)
※価格はすべて消費税込み リサイクル費用は8820円

GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
GRヤリスを「令和時代のラストサムライ」と呼びたいこれだけの理由
Writer:山本シンヤ Photo:小久保昭彦

(提供:CAR and DRIVER