本記事は、大内一敏氏の著書『トヨタの営業マン「ざんねん」なヒトと「できる」ヒトの違い』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
商品価値を伝える
ポイント―売れる営業スタッフは商品の説明に加えて、商品価値を説明する
商談においては、「商品自体」の説明に加えて、「商品価値」を伝えることが重要だ。商品価値は「商品」が「価(格)」に「値(する)」と読み下すことができる。つまり、お客様は商品を購入する際に、その対価として、商品に値する代金を支払うことになる。つまり自分が支払う代金が、商品価値に見合っていれば購入するが、逆に見合っていないと判断すれば購入を見送ることになる。次の通りだ。
商品価値≧価格→購入する 商品価値<価格→購入しない
だから営業スタッフは「商品自体」の説明に加えて「商品価値」をしっかり訴求することが求められる。
因みにお客様が支払額について高いと思っているとき、一番短絡的で簡単な方法は値引きだ。弱気の営業スタッフの常套手段である「お客様、あといくら負けたら買っていただけますか」である。しかし「値引」と「利益」は二律背反の関係で、値引すればするほど利益が減ってしまう。
なので値引きに頼らず、適正な利益を確保しつつ受注するためには、商品価値をお客様にしっかりお伝えして、納得して頂くことが肝要だ。ところが営業スタッフの商談をさり気なく聞いていると、商品自体の説明だけで、あまり商品価値を伝えていないのが現状だ。
たとえばリゾートマンションを買う人はビルの一室が欲しいのではなく、快適な余暇が欲しいのだ。コンサートのチケットを買う人は、紙切れが欲しいのではなく娯楽が欲しいのだ。毛皮のコートを買う女性は防寒性ではなく、優越感や満足感が欲しいのだ。
同様に車を買う人は、車を購入することによって得られる快適なカーライフを手に入れたいのである。だから「①商品自体」の説明に加えて、「②商品価値」をしっかり訴求することが求められる。
事例的にいうと「①キャビンが広い→②くつろげる」「①ホイールベースが長い→②乗り心地が良い」「①加速が良い→②爽快感」「①燃費が良い→②経済性」「①自動運転→②楽である」等である。
では、ここで商品価値をお客様に確実に伝えるための効果的なプレゼンテーション話法である「F・S・Vの三段論法」をご紹介しよう。(図1参照)
F・S・Vは、FACT、SCENE、VALUEの頭文字をとっており、FACTは「事実」で商品自体の機能・特長を伝えれば良い。SCENEは「シーン」で事例・体験談を織り交ぜ、活用シーンを伝えれば良い。VALUEは「価値」で効果・効用等、商品価値を伝えれば良い。
仮にABSを「F・S・Vの三段論法」でプレゼンテーションすると、以下の通りである。(図2参照)
F:「ABSは、アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)の略で、安全装置のひとつです。」
S:「例えば、急ブレーキをかけた時にタイヤがロックするのを防止することで、車の走行安定性を保ち、危険を回避しようとするシステムです」
V:「このことによって、走行中のお客さまの安全性が確保できます。」これは私がトヨタ自動車営業人材開発部にいるとき開発した話法で、今でも社内研修で活用されており、営業スタッフも実際の商談で活用している。
●〝大内流〟営業実績向上の極意
商品を使うのは人である。したがって、商品を購入することで、その人が得られる商品価値を伝えることが肝要だ。売れない営業スタッフは商品中心の説明で終始するが、売れる営業スタッフは、商品説明に加えて人間中心の説明をすることで、商品価値をしっかりと伝えている。
×「ざんねん」なヒト(売れないドツボ) 商品自体の説明で終始してしまうので、商品価値が伝わらない。
〇「できる」ヒト(売れるコツ) 商品自体の説明に加えて、商品価値を伝えることで、購買意欲を刺激する。
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