トヨタGR86・RZ 価格：6SAT 351万2,000円 試乗記
GR86はスポーツカー好きが気になるクルマの代表！
年齢を問わず、スポーツカーに乗りたいと思っているユーザーは多い。彼らにとって、本格スペックが手ごろな価格で味わえるGR86／BRZは、大いに気になる存在に違いない。
モデルチェンジした2ndモデルの開発コンセプトは「継承と進化」。ライトウェイトFRスポーツという美点はそのままに、2.4リッターに拡大されたエンジンを筆頭に、各部は大幅にリファインされた。それぞれ走りのキャラクターを鮮明にしたのも特徴で、GR86は「打てば響くメリハリのある動き」、一方BRZは、「安定と洗練」を追求している。今回は、「日常ユース」がテーマ。あえてAT車をメインにチェックした。テスト車はGR86の上級グレード、RZである。
GR86は２ドアクーペ。日常的に使ううえでまず気になるトランクは、ハッチバックではなくリンクを備えた独立したリッドを持つ。開口形状は使いやすさを重視していることがうかがえる。スペースは実用十分。容量はサーキット走行会などに配慮。後席を倒すとちゃんとタイヤ４本が収まる。ただし、フロアが高いのであまり天地高のある荷物は積めない。
ドアは大きくサイドシルは高め、開口部はそれなりに広い。先に後席について説明すると、やはり乗降するのは簡単ではない。座ると頭頂部はリアウィンドウ下になり、足元も余裕はない。
それでも、座ってしまえばなんとかなる。「＋2」として十分に使えるという印象だ。日常的に4名乗車は辛いが、やはり後席の存在はありがたい。
一方で、前席は思った以上に余裕がある。低い位置に座りながらもインパネは低く、ドアミラーやピラーによる死角も比較的小さい。そのおかげで、意外なほど見晴らしがいい。微妙にふくらんだ左右フェンダーの稜線は車両感覚をつかみやすくする効果もある。
足元空間が広いことにも驚いた。エンジン搭載位置やフロントアクスルとのバランスが絶妙なのだろう、タイヤハウスの存在を感じさせない。FRのスポーツカーとは思えないほどだ。
各種コントロールの操作性も優秀。物理スイッチやダイヤルを適度に残したシンプルなレイアウトは直感的に使える。運転姿勢からすべてが目視できるようにレイアウトされている点も好印象だ。運転席周囲の収納スペースも、スポーツカーとしては十分。さらに、細かな配慮も万全だ。レバー式サイドブレーキは、センターコンソール側のドリンクホルダーやシフト操作を妨げない位置に置かれ、ドアの取っ手部分はスマホを置くことを想定したような形状となっている。大容量のグローブボックスも便利だ。
ATでもスポーツ感たっぷり。街中でも楽しく、面白い
走りはスポーツカーそのもの。ATでもここまでできる、という好例だ。走行モードがノーマルでもスロットルは早開きぎみ。発進では飛び出し感を覚えるほど。シフトチェンジは素早く、軽いショックをあえて感じさせるようにしている。いわゆるダイレクト感は十分だ。せっかくGR86を買うのである。この設定を「スポーティで心地いい」と評価するユーザーは多いだろう。筆者もそのひとりである。とはいえ、「煩わしい」と感じる人がいても否定はしない。ここは好みの問題だ。
スポーツモードにするとさらに元気になり、普通に流すには適さないほど。「これから走るぞ！」という特別なときのためにとっておいたほうがよさそうだ。ちなみにGR86とBRZでは、ATの特性が異なり、GR86は「シフトショックよりシフトスピード優先」となる。とはいえ、両車の違いはわずかだ。
エンジンの余裕も十分。実はこれまで、クローズドコースを中心に攻めた走りにトライしてきた経験からいうと「2.4リッターに拡大されたとはいえ、パフォーマンスはいま一歩」と感じていた。
だが、今回公道で普通に走ってみたところ、とくに市街地ではあまり物足りなさを覚えなかった。むしろパワフルな印象だった。やはり排気量アップによる低速トルクの増大が走りに効いている。GR86は絶対的な速さより、軽快な吹き上がりが大きな魅力のクルマだ。その持ち味はＡＴでも十分に味わえる。
乗り心地は硬め。リアが引き締まったGR86はピッチングが生じやすく、日常ユースでは、それをより顕著に感じる。ただし、車速域が高まると徐々に落ち着いてくる。高速巡行ではそれほど不快ではない。
ハンドリングは、やはり高水準。滑らせることなく公道を普通に走っても、どことなく楽しさがある。ブレーキを踏んでステアリングを切り、アクセルを踏んで立ち上がるというごく普通のプロセスでも、その奥に潜むエキサイティングなものの気配を感じさせる。ちなみにクローズドコースを攻めるとBRZとの違いは顕著。GR86はかなりテールハッピーである。
現状、完成度という面では、総合バランスを重視したBRZが優位といえそうだ。とはいえ、楽しさに注目すると、ひとクセあるGR86のほうが勝る。その点はMTでもATでも変わらない。
通知表／トヨタGR86 価格：6SAT 351万2,000円
総合評価：65点
Final Comment
スポーツカーの“ドライビングプレジャー”を追求
居住性や快適性も及第点
スポーツカーなので居住性や快適性に関する点数が低めになるのはやむを得ないところ。全体としてはまずまずの結果となったように思う。走りについて、“スムーズさ”という観点では低めの評価となった項目もあるが、このクルマはそれでよい。内装の質感や装備類の充実度は車格のわりに“頑張っている”印象を受けた。2.4ℓの自然吸気ならもう少し燃費が伸びてもよい気もしたが、テスト時の燃費はATのほうが若干上回ったのが意外だった
※基本テストコース（燃費ルート）は、市街地と首都高速を含めた周回コース。東京・世田谷区用賀を起点に環状8号線（内回り）、中原街道を走行、荏原ランプから首都高速2号線に入り、3号線の用賀ランプで降りる約30㎞（市街地11㎞／首都高19㎞）。全車、平均速度が約30㎞/hになるよう条件を揃えている。なお、テスト走行は本コース以外にも市街地や高速、ワインディングをドライブし、各項目をチェックしている。
トヨタGR86・RZ 主要諸元と主要装備
グレード RZ
価格＝6MT 334万9000円／6SAT 351万2000円
全長×全幅×全高＝4265×1775×1310mm
ホイールベース＝2575mm
トレッド＝フロント：1520／リア：1550mm
車重＝1270（AT1290）kg
エンジン＝2387cc水平対向4DOHC16V（プレミアム仕様）
最高出力＝173kW（235ps）／7000rpm
最大トルク＝250Nm（25.5kgm）／3700
WLTCモード燃費＝11.9（AT11.7）㎞／リッター（燃料タンク容量50リッター）
（市街地／郊外／高速道路＝8.0／12.8／14.2（AT7.2／12.7／14.9）㎞／リッター）
サスペンション＝フロント：ストラット／リア：ダブルウィッシュボーン
ブレーキ＝前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ＆ホイール＝215／40R18＋アルミ
駆動方式＝FR
乗車定員＝4名
最小回転半径＝5.4m
主な燃費改善対策：筒内直接噴射／可変バルブタイミング／電動パワーステアリング／ロックアップ機構付きトルクコンバーター（AT）
主要装備：トルセンLSD／Vタワーバー／フロントパフォーマンスロッド／フロントスポーツブレーキパッド／アクティブサウンドコントロール／水冷式エンジンオイルクーラー／アルミ製フロントフード＆ルーフパネル＆フロントフェンダー／フロントバンパーダクト（空力テクスチャーパターン）／前後エアアウトレット／サイドシルスポイラー／ダックテールトランクリッド／デュルテールパイプ／フルフロアアンダーカバー／バイビームLEDヘッドライト／本革巻きステアリング＆シフトノブ＆ハンドブレーキレバー／TRACKモードスイッチ／アルミパッド付きスポーツペダル／左右独立温度調節式オートAC／BOXERメーター（7インチカラー＋LCD液晶）／キーレスアクセス＆プッシュスタート／8スピーカー／ウルトラスエード＆本革コンビシート／シートヒーター／ブランノーブ表皮メーターバイザー／後側方警戒支援システム／アイサイトコアテクノロジー（AT）
ボディカラー：スパークレッド（op5万5000円）
※価格はすべて消費税込み ※リサイクル費用は8790円
撮影協力：小田急・箱根レイクホテル
（提供：CAR and DRIVER）
