この記事は2022年9月28日に「月刊暗号資産」で公開された「日本政府、暗号資産のマネロン対策強化で顧客情報の共有義務化へ」を一部編集し、転載したものです。


欧州政府が推進する規制型暗号資産サービス 「世界初の仮想通貨銀行」も登場
(画像=sumire8/stock.adobe.com)

日本政府が、暗号資産(仮想通貨)のマネーロンダリング対策強化を念頭に、国内暗号資産交換業者に対して新たな送金ルールを導入する方針であることがわかった。27日、日本経済新聞が報じた。

銀行と同程度の規制を設け、犯罪者による資金移動を追跡し、監視を強化する。犯罪収益移転防止法を改正し、顧客情報を業者間で共有することを義務付ける予定だ。暗号資産交換業者は顧客から預かった暗号資産を別の業者へと送付する際、氏名や住所を含む顧客情報を提供する。

改正法案を来月3日に招集が予定されている臨時国会に提出し、来年5月の施工を目指す。違反した暗号資産交換業者に対し、行政始動や是正命令を下せるようにする。命令に違反した場合には、刑事罰の対象とする予定だ。

今回のルール導入では、ステーブルコインも対象として適用される。今年6月に成立した改正資金決済法に基づき、ステーブルコインの発行主体となる銀行や信託会社、取引と管理を担う仲介業者らに対し登録制を導入する。

また、政府は犯罪収益移転防止法のほか、外為法等も一括で改正することで、暗号資産の監視体制を一層強化する狙いがある。

犯罪収益として得た暗号資産やデジタル資産を募集対象とすべく、組織犯罪処罰法も改正されるものとみられる。さらに、税理士らにも暗号資産による疑わしい取引を確認するよう義務付ける方針だ。

暗号資産のマネーロンダリング対策強化の背景には、ロシアをはじめとする経済制裁対象者への移転を防ぐ狙いがある。

特にロシアに関しては、今年に入り日本をはじめとする主要7ヵ国(G7)が経済制裁対象に暗号資産を含めている。その後、日本政府も暗号資産交換業者に対し、経済制裁対象者への暗号資産の移転を行わないよう要請した。今年3月には、岸田文雄首相が外為法の改正案を提出する意向を示した。

さらに、一連のマネーロンダリング対策強化を巡る動きではFATF(金融活動作業部会)が策定したトラベルルールの存在が見え隠れする。

FATFは昨年8月、日本のマネーロンダリング対策を評価した第4次対日相互審査報告書を発表しており、その際、全体的に改善の余地があると結論付けている。

この中には暗号資産も含まれており、自主規制団体であるJVCEA(日本暗号資産取引業協会)も対応を迫られた。

なお、JVCEAは今年4月より自主規制規則におけるトラベルルールを導入した。今年10月から本格的に施行され、送付依頼人および受取人の住所に関する情報のほか、取引目的等も取得することになる。(提供:月刊暗号資産