サザビーリーグとリッツカールトンのラーメン戦略に「商機」はあるのか?
(画像=セブツーより引用)

昨年9月30日、サザビーリーグは京都のラーメン店「麺屋 猪一(めんや いのいち)」を運営するエスエフピーダイナースの全株式を取得した。

「麺屋 猪一」(京都市下京区寺町通)は2013年に京都で創業し、現在は本店と「麺屋 猪一 離れ」(京都市高辻通)の2店舗を運営している。動物系脂を一切使用せず、数種類の削り節をブレンドし、低温で旨味を抽出した透明感のある「魚介出汁100%スープ」を使ったラーメンを提供している。「ミシュラン・ビブグルマン」(ミシュランが進めるコスパがよい料理店)に2016年から7年連続で選出されている。ランキンググルメサイト食べログの評価は、「麺屋 猪一」が3.70(レビュー数449件)、「麺屋 猪一 離れ」が3.69(レビュー数485件)だ。最低価格の出汁そば(白・黒)は1200円と1000円を超えている。

「アフタヌーンティー」「アコメヤ」「KIHACHI」「シェイク シャック」などの飲食店を運営しているサザビーグループが京都のこだわりのラーメン屋を買収したからといって特段驚くべきことには思えないだろう。それより「なんで今更ラーメンなの?日本のラーメン市場はもう限界ギリギリだろう?」という疑問すら湧く。このサザビーリーグというライフスタイル全般をビジネス領域にしている企業は、ビジネスの可能性に関する圧倒的な嗅覚と流行に対しての鋭敏な感覚を持っている。その嗅覚とセンスは並の企業では絶対にマネができない。そのサザビーが動いたということはここに商機があると判断していい。「時代の流れはラーメンにあり」、しかもこの京都発の「麺屋 猪一」のような「非動物系節系魚介出汁100%ラーメン」に商機があると考えているようだ。まだ具体的な動きは出ていないが、いずれ東京店、日本でのチェーン展開、全世界展開と広がっていくのだろう。一風堂(「力の源ホールディングス」の企業名で東証プライム上場)の例を挙げるまでもなく、ラーメンの世界展開の可能性はファッションやアパレルよりもはるかに高いのだ。

この「時代の流れはラーメンにあり」というのを実感させるような人気ラーメン店とのコラボが最近目立って多くなっている。特に驚きだったのが「ザ・リッツ・カールトン日光」(栃木県日光市)とラーメン店「AFURU(アフリ)」のコラボ。同ホテルは日光連山を代表する標高2486メートルの男体山の眺望が売り物のラグジュアリーホテルだ。そのホテルの1階の「ザ・バー」では1月25日から「AFURI 共作 栃木 柚子塩らーめん」を提供している。今回の共作ラーメンでは、新鮮な鶏ガラと香味野菜、昆布や鰹節などの魚介類から丁寧に抽出したスープに特製の塩ダレを加え、床井柚子園(宇都宮市)が栽培した「宮柚子」の黄柚子果汁をブレンド。麺は栃木益子焼(栃木)の陶芸家である松崎健氏によるという超こだわりのラーメンだ。価格もサービス料込みでなんと5800円!

「AFURI」は、2001年に中村比呂人氏が神奈川県厚木市七沢の山奥で創業した「ZUND-BAR(ズンド・バー)」を総本店にするラーメンチェーンだ。現在は関東圏のみならず海外11店舗で展開。丹沢山系の東端にある大山(通称阿夫利山)の麓から湧き出る清らかな天然水でスープを仕込んでいる。総本店「ズンド・バー」の最低価格はらーめん(塩・醤油)の1080円だ。山奥にもかかわらず行列が絶えない。食べログの平均点は3.74でレビュー数は932件だ。ラーメンEAST100名店に選ばれている。

ラーメン業界の最近の動きで注目されるのは、1000円が壁だった価格がインフレで一気に突破してしまったことだ。この「壁」突破で、「ザ・リッツ・カールトン日光」の例でもわかるように超こだわりの超高額ラーメンが続々登場している。このあたりが、サザビーリーグがラーメン業界参入を決定した最大のポイントのような気がしている。