「週刊朝日」が今年5月の最終週号を最後に休刊する。100年余り前(1922年)に創刊された日本最古の総合週刊誌だという。発売元の朝日新聞出版によれば1950年代には発行部数が100万部以上あったという。昨年12月の平均発行部数は約7万4000部だった。朝日新聞出版には週刊誌「アエラ(AERA)」があるが、これも発行部数は約7万部。こちらを残すという方針になったのか、こちらも休刊を検討中なのか。なお、朝日新聞社が発行するジャーナリズム専門誌「ジャーナリズム」も、今年の3月号をもって休刊する。
新聞社系の週刊誌と言えば、2008年12月14日号を最後に休刊した読売ウイークリー(旧週刊読売)があった。残っているのは「サンデー毎日」(毎日新聞出版)ということになるが、その平均発行部数はなんと3万7520部(日本雑誌協会による印刷証明付部数)だというから、失礼ながら休刊は時間の問題だろう。
もう新聞社の経営危機は至るところで報じられている。何度も書くが、政治・経済・社会の日々のニュースについて総合的に報道できるのは、朝・毎・読の三大新聞に代表される一般日刊新聞だけである。WEBニュースは、きちんとした取材体制を持っているこうした一般日刊新聞なしでは成立しないのである。だから必ず残る。いや、残らなければならないのだ。
しかし、こうした大新聞の窮状がはっきりと現れたのが今年1月3日、1月4日の「ルイ・ヴィトン」の新聞広告だ。1月3日には、なんと日本経済新聞を丸ごと包んでしまうカバーラップ広告が登場した。読者は一体何が起こったのか、呆気にとられたのではないだろうか。天下の日経が、その第1面と最終面をラグジュアリーブランド業界の帝王「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広告にジャックされたのである。ある意味で屈辱でさえある。このカバーラップ広告は、別名カバーオンカバーとも言って、私が編集長を務めていたファッション週刊紙「WWDジャパン」で1990年代に日本で初めてお目見えした広告である。「WWDジャパン」はタブロイド版のファッション業界紙であったから、そんな広告もむしろ面白がられたのだが、ブランケット版の一般紙のカバーラップ広告が登場するとは思いもよらなかった。恐らくカバーラップ全面広告4ページ分の広告料金は軽く1億円を超えるのではないかと思うが、「お金さえ出せばこのカバーラップ広告をやらせてもらえるんですか?」という問い合わせがありそうだ。「ルイ・ヴィトン」と草間彌生とのコラボ広告だったからOKというのでは済まされないのではないかとも思うが。
さらに1月4日には、読売新聞、朝日新聞の最終面にあるテレビ番組欄がやはり「ルイ・ヴィトン」の広告でジャックされているという「事件」が起こった。「クサマ・ドット」のハンドバッグを持ったモデルの上にマルチカラーの「クサマ・ドット」がちりばめられているという広告が最終面になっているのだ。この最終面にあるテレビ番組表は、特に高齢者には人気のページなのだが、「あれテレビ番組欄はどこだ?」という高齢者の狼狽の声が聞こえてくるようだ。
今年の1月1日号には、毎年恒例の百貨店の全面広告が一般紙に見られず、さらに年初らしいご祝儀広告も少なく、新聞社の厳しい台所事情がうかがわれたが、表紙や最終面(テレビ番組欄)が「ルイ・ヴィトン」広告にジャックされるとは驚きである。
ラグジュアリーブランドの広告も、WEB広告がメインになってから久しいが、紙媒体に広告を出すならこれくらいのインパクトがないと出す意味がないと考えているのではないだろうか。
すでに全世界での年商は100億ドル(1兆3000億円、1ドル=130円換算)を軽く超えていると推定される王者「ルイ・ヴィトン」のパワーを知らしめると同時に、大新聞の凋落がはっきり見てとれた正月の広告だった。その後もたびたびテレビ番組欄のジャック(朝日新聞1月20日号)は行われているようでいずれ、裏表紙のテレビ番組欄は広告になる日も近いのではないか。