過去20回の連載にわたり、かつて富裕層や機関投資家に限定されていたプライベート市場の“民主化”を目指す動きが広がっていることをレポートしてきた。このような潮流の中で重要な役割を担っているのが、テクノロジーを活用し、革新的な金融サービスを提供する「Fintech(フィンテック)」の存在だ。最終回はオルタナティブ投資の未来を担うポテンシャルを秘めたFintech動向についてレポートする。
オルタナティブ投資、さらなる成長への課題とは?
近年の目覚ましいテクノロジーの進化は、金融セクターにおける効率性やコスト、市場構造の在り方などに大きな影響を与えており、その影響はオルタナティブ投資の領域にも広がっている。
最近では、「Black Stone(ブラック・ストーン)」や「Fidelity(フィデリティ)」などのグローバルな投資ファンドが率先して個人投資家のプライベート市場へのアクセスを拡大する一方で、「i-Capital(アイ・キャピタル)」や「Yieldstreet(イールドストリート)」「Moonfare(ムーンフェア)」といった革新的なプラットフォームを提供するFinTech企業が、オルタナティブ投資市場に旋風を巻き起こしている。
これらの企業が目指しているのは新たな顧客層の獲得、すなわちオルタナティブ投資市場の“民主化”だ。個人投資家は世界の運用資産(AUM)の約半分を保有しているにもかかわらず、個人投資家の資産がオルタナティブ投資ファンドのAUMに占める割合は16%に留まるという(「Why Private Equity Is Targeting Individual Investors」(Bain&Company))。つまり、個人投資家にプライベート市場を含むオルタナティブ投資市場を開放することにより、企業側は新たな利益創出の機会を、個人投資家は新たな投資の機会を得ることができるというわけだ。
このような背景から、個人投資家がアクセスしやすい環境創りと、企業側がプロセスを合理化し、コストと労力を大幅に削減するためのソリューションが、オルタナティブ投資市場のさらなる成長に向けた重要課題となっている。