アメリカの現代アーティスト、ジャン=ミシェル・バスキア。彼がグラフィックをはじめとした現代アートに与えた影響は大きく、その功績と作品のテーマ性から現在も多くのアート愛好者に支持されています。
コレクターからの注目度も高く、実業家の前澤友作氏が2017年にバスキアの作品を123億円で落札したニュースは記憶に新しいことでしょう。
今回の記事では、独創的な作風はもとより、その価値を裏付ける高い取引額にも関心が寄せられている理由について解説します。
(TOP画像引用元:THE Hollywood REPORTER)
バスキアの半生
ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)は、1960年12月22日にニューヨークのブルックリンで生まれました。若い頃から才能あるアーティストとして認知されたバスキアは、グラフィティアートの世界で名を上げていきます。
1970年代後半には、友人とSAMO("Same Old Shit"の略)という名義で、ニューヨーク市内でグラフィティを描き始め、独特なスタイルで注目を集めました。
その後バスキアは、1979年にアンディ・ウォーホルと初めて出会います。ウォーホルはポップアートの旗手であると同時に、ニューヨークのアートシーンで名を馳せていました。
1980年代にはウォーホルとバスキアは共同制作に取り組むようになり、バスキアの知名度を高めていきます。ポップアートとグラフィティアートを組み合わせたオリジナリティで注目を集めますが、1986年にウォーホルは死去。
深い悲しみに襲われたバスキアは、薬物中毒に陥り生活が乱れていきます。その後、混乱の渦中でも彼は作品を残しつつ、1988年に27歳の若さでこの世を去りました。しかし現在でも世界中で彼の作品は高い評価を得ています。
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バスキア作品の特徴
バスキアの作品は抽象的な画風でありながら、その多くに社会的・政治的なメッセージが込められています。
メッセージは、資本主義に対する反発、階級、基準、性別、国籍といった社会的な差異への思いが中心。身近に起こり得る問題へのメッセージを通じて、美術の知識を持たない方にも制作意図が理解しやすい作品となっています。
彼が得意としていたのは「挑発的二分法」と呼ばれる手法です。例えば「富豪と貧乏」「白人と黒人」のように、相対する2つのモチーフを並べることで作品にインパクトを持たせています。
バスキアの作品が高く評価される理由
バスキアはアートとストリートカルチャーを融合させたグラフィティ・ポップアートの文脈を汲んでおり、その土壌を築いた存在と言えます。
彼の作品が持つメッセージはとても伝わりやすく、ファンは美術愛好家にとどまらず、ジャズやヒップホップなどの音楽文化のファン層にも影響を与えています。美術界隈だけではなく、一般のコレクターにも愛される存在です。
短い生涯を終えたバスキアは作品点数が限られており、わずか10年ほどの活動期間に残した作品は3,000点以上のドローイングと1,000点以上の絵画。その希少性も価値を高めている要因です。
こうした魅力が多くの人々の心を動かし、バスキアの作品は高い評価を得て、現代アート市場では自ずと価格が高騰しています。
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高値で取り引きされるバスキア作品
バスキアの作品は高値で取引されています。先ほどご紹介した前澤氏が、海外のアートオークションでバスキアを落札したニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。
前澤氏が所有していたバスキアの一作品が、落札時より約47億円以上の高値をつけて落札されたことを考えると、アートが資産としての価値を持っていることを実感します。
絵を購入する際に注意するポイント
今後、絵画の購入を検討されている方は、購入する前にいくつか注意すべきことがあります。
一つはオークションハウスやギャラリーに「認定機関の登録」があるかどうかを確認しましょう。
もう一つは「認定書の確認」です。作品に付属する公式書面がある場合は、その文書を確認することで作品の真贋性を判断することができます。
バスキアの人気作品3選
Untitled(1982)
2017年に行われたサザビーズの現代アートイブニングセールで、前澤氏が1億1,050万ドル(当時のレートで123億円)で購入した作品です。ニュースは広く伝えられ、バスキアが改めて日本での知名度を高めるきっかけにもなりました。
バスキアは幼いころに母親から与えられた医学書の影響で解剖学を知っており、作品は頭蓋骨をモチーフに描かれています。
バスキアの代表作の一つであり、ストリートグラフィティからアートの世界に進出するタイミングで描かれたターニングポイント的な作品です。
In This Case(1983)
2021年5月、クリスティーズの21世紀美術イブニングセールにおいて9,310万ドル(約101億円)で落札されました。
2021年上半期に最も高額で取り引きされた作品は、バスキアが髑髏をモチーフに描いた3作品の一つで、その生々しさが感情を大きく揺さぶるインパクトを持ちます。
Untitled(Devil)(1982)
前澤氏が、2016年5月にクリスティーズ・ニューヨークで開催された「戦後・現代美術イブニングセール」にて、約62億円で落札したこの作品。
2022年5月には、フィリップス・ニューヨークで開催された「20世紀・現代美術のイブニングセール」に出品され、約109億円で落札されたことでも知られています。
「闇と光」がテーマに描かれたこの作品は、恐ろしい悪魔の姿と対照的な明るい背景が際立っており、先述した挑発的二分法が取り入れられた作品です。
バスキアとファッションブランドのコラボ
バスキアの作品は、しばしばファッションブランドとコラボレーションしています。
ユニクロ
UT(Tシャツ)のグラフィックとして、バスキア、アンディ・ウォーホル、キース・へリングとのコラボレーションアイテムを発表しています。
比較的、手にとりやすいアイテムのデザインに起用されることで、若年層からの認知も受けることになりました。
WACKO MARIA
元Jリーガーが2005年に創業した国内ファッションブランドのWACKO MARIA(ワコマリア)もバスキアと継続的にコラボレーション。
Tシャツやスウェット、ハワイアンシャツなど広くプロダクトを展開しています。
まとめ
今回は、バスキアの半生や作品が持つ価値について解説しました。アメリカのアートシーンに強い影響を与えた重要な人物であり、美術だけにとらわれないバックグラウンドから発されたメッセージ性の高さを持つ作品は正に唯一無二です。
アート市場でも高値で取り引きされているバスキア作品を通じて、投資対象としてもアートに興味を持たれた方はぜひリサーチしてみてください。
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