アタックスグループは、中小企業のニーズに焦点を当て、社会的価値を生み出す目的で創業された。 アメーバ経営の採用や社員の自由と自律を尊重する文化は、組織全体が共通のビジョンに向かって進む土壌を作り上げており、デジタルトランスフォーメーションを通じての新しいサービス展開を視野に入れている。 今回は当社代表パートナーである西浦氏に、同社の事業変遷、強み、そして未来への展望について話を伺った。
(執筆・構成=野坂汰門)
アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 1972年 一橋大学卒。 1981年 株式会社アタックスを丸山弘昭と共同創業後、1990年 今井会計合同事務所(1946年創業)と経営統合し、アタックスグループを結成。 「社長の最良の相談相手」をモットーに、オーナー企業の事業承継、経営戦略、事業再生、税務・会計戦略、 人事・組織改革、後継者育成など、 延べ数百社の顧問先をはじめとする多くの中堅中小企業の様々な課題解決に対応している。 現在、アタックスグループのトップとして、 公認会計士、税理士、 中小企業診断士、社会保険労務士、その他スタッフ総勢約200名を率いる。
事業変遷について
ー 最初に御社の事業変遷について教えてください。
最初は私と丸山という大学が同窓の公認会計士で事業を始めました。 当時、アメリカにBig8と呼ばれる8大会計事務所がありました。その一つであるアーサー・アンダーセンが倒産したことを機に、業界再編成により、今日ではBig4(4大会計事務所)になったのですが、そこには監査、税務、コンサルティングという3つの機能があります。彼らは、1社あたり30万人を擁する、世界で最も成功している会計事務所グループです。私たちは、Big4を真似、ローカルに展開しよう、監査はやらないでおこうと決めました。税務はいずれ始めればいいと考えました。そして、まずはコンサルティング事業をスタートさせ、途中で、高岡次郎氏が率いる会計事務所と経営統合しました。
初期の事業展開には苦労もありましたが、Big4が採用しているパートナーシップが、プロフェッショナルにとって世界で最も良い仕組みだと考えました。人を大事にすることを徹底したことや、売上の1割を未来に投資することで、事業を軌道に乗せることができました。
具体的には、経営理念に共感してくれる人財を採用して、未来に投資してきました。これにより、ささやかながら成長を遂げることができました。
ーそれは素晴らしい成果ですね。
若い社員からは、「アタックスは自由を重視してくれる」という声をよく聞きます。やる気のある社員が、「私はこれをやりたい」と言えば、それを応援してきました。
ーなるほど、やりたいことを自由にさせて、それを肯定し応援することで成果につながっているんですね。
そうですね。また、私たちは稲盛和夫さんが唱える「アメーバ経営」の考えに賛同しています。小さなチームを作り、そのリーダーになると、多くの人を指導する結果、経営者の視点を持つことができ、組織全体を見る視野が身につきます。
中堅中小規模のオーナー企業の課題を発見するには、「所有」「家族」「経営」というスリーサークルの視点からものを見ることが重要です。大企業では経営だけを見ることでも問題ありませんが、中堅中小規模のオーナー企業では、この三つの視点からものを見ないと、正しく課題を洗い出せません。言い換えれば、オーナー企業の経営者目線が持てないのです。
ー 若いうちから経営者目線になるように仕組み化を行っているのですね。
おっしゃる通りです。さらに、成長するための戦略として、社員からもお客様からも「愛される会社」になることを目指しています。
他にない価値を生み出すことで、特定のお客様から喜ばれ、多くの感謝を得ることができ、その結果、社員も「私はいい会社にいる」と自覚し、お客様からも社員からも愛されます。この結果、社員力を高めることができます。私たち自身が「愛される会社」になることで、強くて愛される会社を一社でも多く世に生み出し、お客様からも社員からも愛される「強い会社」になることを目指しています。
アタックスの強みとは
ー 成長の戦略として愛されることを重視しているのですね、素晴らしいです。そのような御社の一番の強みは何ですか?
社員には、「自分で自分自身の生きざまを自由に選べる」ことと、「社会のお役に立ちたい」という思いが強いですね。 世の中には高学歴の人々がマッキンゼーやボストンコンサルティングなどの大手コンサルティング会社を目指す傾向があります。しかし、我々は中小企業を専門に扱ってきた経験を活かし、中小企業の課題を解決することに全精力を注いでいます。日本の企業のうち、99.7%が中小企業です。また、日本の雇用の70%は中小企業が担っています。中小企業対象であることは社会的価値が非常に高いと考えています。その対象を絞った戦略こそが我々の強みです。
また、アタックスには、「アタックス・アカデミー」と称して、社員が自律して行動する力を身につけるためのプログラムがあります。オーナー企業の悩みの一つとして、社員が自律して行動しない、指示待ちの状態になってしまうという悩みをよく聞きます。それに対して、私たちの社員は自発的に行動し、自己を磨くことを求めているため、新入社員から役員まで、自由に行動しています。そこも、組織としての私たちの強みと言えますね。 一人のリーダーが全てを決定する、いわゆる独裁的な経営スタイルも一部の企業では見られますが、私と丸山の二人で会社を立ち上げたということもあり、そのような事態にはなりませんでした。
私たちは、今まさに事業承継の真っ最中ですが、後継者が仕事をしやすいように、あまり干渉しないようにしています。私たちが期待しているのは、その後継者が素晴らしい仕事をしてくれることです。それぞれが自分の考えを述べ、やりたいことを実行できるような企業文化を作り上げてきました。その強みこそが成長につながる鍵だと感じています。
アタックスが見据える将来像
ー ありがとうございます。そのように強みを活かし、後継者の方々の成長も考えた企業文化をとっているとのことでしたが、未来のビジョンについてはどのように描いていますか?
5年前、ITに強い4人の公認会計士を現場の仕事から解放し、クラウド推進室を設立しました。税務会計顧問業務の半自動化を可能にするFOCUS・GAIA (ともにアタックスグループのシステム名)に力を入れること、コンサルティング部門もDXにシフトしていくことを考えました。 世界の動きを見ても、会計事務所の主な仕事である税務申告書作成は、5年から10年後にはかなり自動化が進むと考えています。その結果、税理士の業務も売上も大幅に減少すると予想しています。 その対策として、数値を活用しての経営コンサルティングに力を入れ、会計事務所のお手伝いをしたいと考えています。
ー なるほど。さらに、アウトプット経営というやり方を取り入れて、業界全体が喜ぶようなサービスを提供しようとしているとのことですが、具体的にはどのようなサービスを考えていますか?
私たちは、規模拡大よりも、「強くて愛される会社」を一社でも多く世に生み出すことができる経営コンサルティングの環境を整備し、独立心の強い人々が、会計事務所業界で活躍できるように支援することを考えています。これが我々の「グレーター・アタックス構想」です。
ー なるほど、それは興味深いですね。企業の強さと愛される要素を組み合わせた進化は、全体の流れに乗っていますね。
そうですね。私たちは、IT基盤を一番下に置き、その上に税務顧問を配置するという構造を考えています。そして、税務顧問の仕事が減ると、その上に問題解決(事業承継のご支援、並びに、数値をベースとした経営コンサルティング)という新たな役割を配置することを考えており、その中で最も大きな役割が後継者育成です。ご支援している会社が「強くて愛される会社」になれるような仕組みづくりを考えています。
ー 素晴らしいお話をありがとうございました。西浦さんの使命感、そして何のために事業を行っているのかという理念が非常に伝わりました。本当にありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
- 氏名
- 西浦 道明(にしうら みちあき)
- 会社名
- アタックスグループ
- 役職
- 代表パートナー