特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
大学院修了後、大手上場企業にシステムエンジニアとして就職。 退社後、関東を中心にエステティックサロンを展開する(株)フェリークを2003年に設立し、代表取締役に就任した。その後に化粧品製造販売事業を取り扱うグループ会社として、(株)アクシージアを2011年に設立。
事業変遷について
ー2011年に株式会社アクシージアが設立され、2021年に新規上場を果たし、今年の2月に市場区分を変更されましたが、ここまでの経緯について教えてください。
株式会社アクシージア 代表取締役社長・段 卓氏(以下、社名・氏名略)
私は中国出身で、1990年に留学生として日本に来ました。その後、日本の大学を卒業し、1998年に東京のIT企業に就職しました。システムエンジニアとしてプログラミングなどの仕事をしていましたが、独立して創業する意欲が強く、2002年頃からビジネスを模索していました。
そんな中、友人に誘われてエステティックサロンを始め、東京を中心に30店舗ほどまで展開していました。当時はフェイシャルや痩身などのサービスがあり、その中で化粧品を使用していました。2011年に自社で化粧品を作ることになり、株式会社アクシージアを設立しました。
当初は自社のサロンへの商品供給がメインでしたが、徐々に日本と中国でエステティックサロン向けに販売を拡大し始めました。展示会を通じての販売を主に行っていましたが、日本では差別化ができず、なかなか売れませんでした。一方、当時中国のエステサロン向けに日本の化粧品を販売している会社は数社しかなく、中国では2012年頃から展示会を開催し、サロンを開拓していくことができました。
ー中国でBtoBサロン向けにビジネスを展開していた日本の化粧品メーカーが少なかったとのことですが、どのように展開していったのですか?
段:当初は約2万円台の高額化粧品のみを扱っていたため、「なんでこんなに高いのか」と疑問を持たれていました。しかし、実際にサロンで使った経験があるお客様から「使ったことがあるが、良い化粧品だ」と口コミで広がり、ネットでも地道に売上を伸ばしていきました。
また、中国では2013年あたりからスマートフォンが普及し、EC市場が拡大し始めました。当社でも、アリババグループのネット通販サイトでの販売を開始したころに、さらに一定の知名度を保つことができるようになりました。
そして2016年から、お客様の依頼で一般向けのBtoC商品を作ることになり、「飲んだら綺麗になる」というコンセプトでドリンクタイプのサプリメント「AGドリンク」を作りました。この商品が大好評で、一気に中国での知名度を上げることができました。今でもこの商品は人気が高く、今年で5回目のリニューアルを迎えています。
ーその後の展開はいかがでしたか?
段:2019年に、「Tmall Global(天猫国際)」に自社の旗艦店を出店することが決まりました。「Tmall Global」は、中国で最大規模の越境ECプラットフォームで、当時はTmall側から依頼がなければ自社の旗艦店を開設できなかったのですが、タイミング良く出店でき、そこから本格的に広告宣伝を行い、知名度を上げることができました。
コロナ禍の影響
ー2020年のコロナ禍の影響はいかがでしたか?
段:2020年2月、武漢が封鎖され、その後上海も封鎖されました。しかし、お客様が家の中で過ごすことが増えたことから、当社のEC売上は落ちることがありませんでした。したがって、経営資源をECのチャネルに集中投下することでコロナ禍でも売上を伸ばすことができ、結果として2021年2月にマザーズ市場(現グロース市場)に上場することもできました。さらに、今年2月にはプライム市場に市場区分を変更し、3期連続で過去最高益を達成しております。
現在は中国市場での売上が全体の約9割を占めていますが、今後は中国と日本のバランスを考慮して会社を発展させていきたいと考えています。
ー自社で製品の開発から販売まで行っているとのことですが、事業を拡大していく際に、この部分はどのように考えていますか?
段:これからは、研究開発に力を入れていきたいです。我々は、自社の研究開発を強化し、より良い製品を市場に提供することで、差別化をはかっていきたいです。実際に、昨年株式会社ユイット・ラボラトリーズを子会社化したことで、これまで外注していた製造を内製化できるようになり、今年から新製品は自社工場で作るように計画しています。また、R&Dセンターも去年から立ち上げており、今後は自社での研究開発を強化していく予定です。
自社での製造拡大のため、採用も強化していきたいと考えています。また、日本は地震が多い国ですので、拠点を分散させるために第2工場を設立することも検討しています。
アクシージアの経営ヒントと今後の展望
ー順調に売上を伸ばしているようですが、今後はどのように展開していくつもりですか?
段:中国では、引き続きECを強化していきます。日本では、主に3つの事業戦略に基づいて展開していくつもりです。
1つ目はインバウンドの売上を取り込むことを重視しています。具体的には、百貨店に自社店舗を設けることで、インバウンドの売上を取り込むとともに、日本人のお客様にも我々のブランドを広く認知してもらうことを目指しています。
2つ目は、SNSを活用して売上を伸ばすことを狙っています。特に、今年設立した子会社アクシージアバリュークリエイターを活用して、SNSの影響力を最大限に利用し、売上拡大を図る予定です。
3つ目は、当社がメインで取り扱う中・高価格帯商品も市場が大きく競争が激しいため、独自のポジショニングを確立することを目指しています。我々は工場を持っていて、原価を抑えつつ、品質を良くすることができるので、この強みを活かしながら展開していきたいと考えています。
ーありがとうございます。次に、エクイティの活用についてお伺いしたいです。
段:2011年から事業を始め、少しずつ売上を拡大し、2018年には売上高20億円に達していました。当時は利益も出ており、経営は順調でした。ある時、シンガポールでビジネスをしている80歳ぐらいの経営者の方に出会いました。
彼は以前上場企業を経営していたことがあり、私が上場の理由を尋ねると、グローバル市場で戦うためには上場企業というブランドも必要だと教えてくれました。それを受けて、日本で上場準備を進めることにしました。実際に上場には約2年半の年月がかかりましたが、上場してからは信用力や資金調達力が向上しました。同時にプレッシャーもありましたが、それが逆に原動力となりました。株主からの期待も大きいので、どんどん前進しなければならないと感じています。
ー今年、上場市場区分の変更をされましたが、事業戦略や展望にどのような変化があるのでしょうか?
段:中国市場は引き続き重要なターゲット市場だと考えています。今年10月には当社の上海子会社と、中国でエステ事業のフランチャイズ起業支援を行う会社で合弁会社を設立し、中国でエステサロン業界へ参入することを発表しました。今後はエステサロン向け製品開発を起点に成長してきた強みを生かし、中国市場により幅広い形で参入していく予定です。
また、日本では売上強化とともにM&Aも積極的に展開していきたいと考えています。さらに、私たちはグローバル企業としても意識しており、日本だけでなく海外にも積極的に進出していきたいと考えています。
東南アジアではすでにシンガポールの子会社が設立されており、ベトナムやタイ、マレーシア、インドネシアにも子会社を通じて市場を開拓していきたいと思っています。東南アジアは成長し続けており、人口も多いため、将来は有望な市場だと考えています。一方、北米市場には数百万人の中国人が住んでいると言われており、彼らは中国現地の人と同じメディアを使用しています。中国での宣伝が北米にも影響を与えるため、流通チャネルや物流が整えば一定の売上を上げることができると考えています。このように中国、日本、さらには東南アジア、その他北米等の第3市場への展開を強化し、アクシージアという日本ブランドを世界で広めていくことが目標です。
ー金融/経済市場に関して、アクシージアまたは代表ご自身のファイナンスにおける課題や重点テーマについて教えていただきたいです。
段:以前は事業をメインでやっていたので、金融の世界にはあまり詳しくなく、上場したばかりの時は、資金調達できる強みがあり、実際に資金も潤沢で、安心感がありました。
しかし、資金の保持量が高いと機関投資家からご意見をいただき、資金を使って事業を発展させて行かなければならないと感じました。今後も資金を効率良く使って事業を展開していきたいと考えています。
読者へのメッセージ
ー最後に、弊社の投資家の方々に向けて一言お願いします。
段:アクシージアは、日本だけでなく世界中に展開するグローバル企業となることを目指しています。我々はこれからもお客様に対して最高の製品とサービスを提供し、皆さんにとって、私たちの製品が、美の実現に役立つものであることを願っています。ぜひこれからもアクシージアを応援していただけますと幸いです。
- 氏名
- 段卓(だんたく)
- 会社名
- 株式会社アクシージア
- 役職
- 代表取締役