この記事は2023年11月10日に「The Finance」で公開された「ゼロゼロ融資とは?わかりやすく解説【2023年版】」を一部編集し、転載したものです。


新型コロナウイルス感染症の拡大は経済へ大きな影響を及ぼしました。多くの個人事業主や中小企業において売上減少、倒産の危機に直面するなか、政府が実施した制度「ゼロゼロ融資」について、本稿ではわかりやすく解説します。

目次

  1. ゼロゼロ融資とは
  2. ゼロゼロ融資が行われた背景
  3. ゼロゼロ融資の条件・金利・返済期限
    1. (1)日本政策金融公庫のゼロゼロ融資(新型コロナウイルス対策マル経融資)
    2. (2)商工組合中央金庫のゼロゼロ融資(新型コロナ感染症特別貸付)
    3. (3)民間金融機関(新型コロナウイルス感染症対応資金)
  4. ゼロゼロ融資のメリット
  5. ゼロゼロ融資のデメリット・注意点
  6. ゼロゼロ融資の返済に困った場合の対策
    1. (1)コロナ借換保証
  7. まとめ

ゼロゼロ融資とは

ゼロゼロ融資とは?わかりやすく解説【2023年版】
(画像=Song_about_summer/stock.adobe.com)

ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルス感染症流行の影響によって売り上げが減少した個人事業者や中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資を行う仕組みのことです。
コロナ禍が始まった2020年から開始され、政府系金融機関は2022年9月、民間金融機関は2021年3月まで新規貸付の受付をしていました。日本公庫を活用した場合、条件を満たすことで個人事業主は最大6,000万円、中小企業は最大で3億円が実質無利子で借りられ、返済が滞った場合でも元本の8割あるいは全額を信用保証協会が肩代わりする仕組みになっていました。
中小企業庁によれば2022年6月末時点で融資実績は国全体で約234万件、42兆円とされており、今後はゼロゼロ融資を受けた事業者からの返済が本格化することになっています。

ゼロゼロ融資が行われた背景

新型コロナウイルス感染症の影響により、日本では2020年4月に最初の緊急事態宣言が発せられました。この緊急事態宣言によって、国民の行動制限や20時以降の飲食店営業の制限、イベントの延期や中止などが相次ぎ、結果として観光業や飲食業をはじめとした多くの事業者や企業が売上減少に陥りました。
総務省が発表している「令和3年 情報通信白書」によれば、2021年3月の売上高が、コロナ以前の2019年3月と比較して半減以下と回答した業種の多くは、宿泊業などの非製造業であるとしています。
ゼロゼロ融資は、こうしたコロナ禍の影響を受けた事業者や企業を支援するための施策として発出されています。

ゼロゼロ融資の条件・金利・返済期限

(1)日本政策金融公庫のゼロゼロ融資(新型コロナウイルス対策マル経融資)

対象者 次いずれかに当てはまる小規模事業者
・最近1か月間の売上高または過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5パーセント以上減少しているまたはこれと同様の状況にある方
・債務負担が重くなっている方(債務償還年数13年以上)
※いずれの場合も商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けており、商工会議所等の長の推薦が必要
用途 運転資金、設備資金
融資限度額 別枠1,000万円
金利 1.20パーセント(令和5年10月2日時点)より当初3年間、0.5%引下げ
返済期限 設備資金20年以内(5年以内(別枠の1,000万円以内))
運転資金20年以内(5年以内(別枠の1,000万円以内))

(2)商工組合中央金庫のゼロゼロ融資(新型コロナ感染症特別貸付)

対象者 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の(1)または(2)のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方

次のいずれかに該当する方
(1)最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方
(2)業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
ア:過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
イ:令和元年12月の売上高
ウ:令和元年10月から12月の平均売上高

債務負担が重くなっている方(所定の条件あり)
用途 運転資金、設備資金
融資限度額 別枠8,000万円
金利 基準利率
ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.5%(注)、4年目以降は基準利率
(注)令和5年10月1日(日)のお申込受付分から、融資後3年目までの金利引下げ幅が縮小(基準利率-0.9%→基準利率-0.5%)となりました。
返済期限 設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金 20年以内(うち据置期間5年以内)

(3)民間金融機関(新型コロナウイルス感染症対応資金)

対象者 以下のいずれかの認定
・セーフティネット保証4号(売上高▲20%)
・セーフティネット保証5号(売上高▲5%)
・危機関連保証(売上高▲15%)
用途 運転資金、設備資金
融資限度額 6,000万円以内(都道府県によって独自の追加枠を設けている場合あり)
金利 【法人等】売上高▲15%以上で当初3年間無利子
【小規模個人事業主】当初3年間無利子
※融資実行段階から無利子となる「リアルタイム方式」と、事業者が利子額を一旦支払った後に都道府県等から支払った利子額の支給を受ける「キャッシュバック方式」があります。(地域により異なります)
返済期限 10年以内(据置期間5年以内)

ゼロゼロ融資のメリット

ゼロゼロ融資の最大のメリットは、実質無利子・無担保であることは間違いありません。融資された金額は返済することが必要であり、どの事業者にとっても利子負担は大きなものでした。
たとえば日本政策金融公庫が行っている「セーフティーネット貸付」の金利は、基準利率が設けられており、担保を提供する融資であれば1.10%以上の利率がかかります。ゼロゼロ融資はこうした利率がかからず無利子かつ無担保で融資を受けられるため、どの事業者にとってもメリットは大きなものです。
さらに担保なしで何度でも借入を行えるため、コロナの影響が長引いた際でも、影響を回避するのに有効な施策になっていました。

エヌエヌ生命保険株式会社の調査によれば、2022年2月上旬における全国の中小企業の利用率は2割を超えており、平均約2,000万円にまで上っています。半数以上の企業がコロナ禍以前と比較して売上が減ったと回答しており、こうした資金繰りが苦しい企業の救済にもゼロゼロ融資は役立っていました。帝国データバンクの調査によれば、2021年における企業の倒産件数は6,015件となっており、この数字は半世紀ぶりの歴史的低水準になっています。

ゼロゼロ融資のデメリット・注意点

ゼロゼロ融資は実質無利子・無担保受けられますが、実質という言葉が使われている通り、利子の免除期間は3年間に設定されていました。この3年間を過ぎると、4年目からは利子が発生します。ゼロゼロ融資は2020年3月から開始された施策のため、すでに返済をスタートさせている企業が大半になります。
帝国データバンクの調査によれば、ゼロゼロ融資の返済額が融資額の5割以上と回答した企業は13.3%に止まっており、3割未満の企業が42.3%を占めています。つまり、今後返済に追われてしまう事業者や企業が増えてしまうことが懸念されています。

ゼロゼロ融資は何度も借りられるメリットがある反面、返済計画を立てず無計画に借りてしまうと返済に追われてしまい、売上が回復しなければ倒産に陥ってしまう可能性もあるのが懸念点です。
さらにコロナによる影響に加えて、世界情勢の影響をうけた物価高や円安などによって支出が増加してしまっている企業にとってはさらなる負担が増えていると言えます。

ゼロゼロ融資の返済に困った場合の対策

(1)コロナ借換保証

コロナ借換保証とは、一定の要件を満たした中小企業者が借入時の信用保証料を大幅に引き下げられる、経済産業省が創設した借換保証制度で、事業者への支援策として2023年1月10日からスタートしました。
背景には、コロナの影響が長期化したことや物価高の影響によって資金繰りが苦しくなっている企業が急増していることが挙げられます。

借換とは、融資などの返済が難しくなった場合に別の金融機関から借入を行い、その借入金で既存の融資の返済額に充てることです。借換を行うことで、現在の金利よりも低い金利にできる、複数の金融機関から借入金がある場合は一本化できるなど、返済の負担が軽減されるなどのメリットがあります。

対象者 1. セーフティネット4号の認定(売上高が20%以上減少していること。最近1ヵ月間の実績とその後2ヶ月間の見込みと前年同期の比較)
2. セーフティネット5号の認定(指定業種であり、売上高が5%以上減少していること。最近3ヵ月間の実績と前年同期の比較)
※1.2.について、コロナの影響を受けた事業者は、前年同期ではなくコロナの影響を受ける前との比較でも可
3. 売上高が5%以上減少していること(最近1ヵ月間実績と前年同月の比較)
4. 売上高総利益率/営業利益率が5%以上減少していること(3.の方法による比較に加え、直近2年分の決算書比較でも可)
保障限度額 1億円
保証期間 10年以内
据置期間 5年以内
保証料率 0.2%等(補助前は0.85%等)

コロナ借換保証の申請は、以下の流れに沿って進められます。

  1. 経営行動計画者の作成
  2. 所定の金融機関へ申し込み
  3. 金融機関から認定審査および保証審査の依頼
  4. 金融機関からの融資および継続的な伴走支援

コロナ借換保証を受けるためには、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」の作成が必要になります。経営行動計画書には、自社の財務分析から必要な資金使途、将来目標、返済計画などを網羅させる必要があります。
金融機関は経営行動計画書の作成と共に、市区町村向けにセーフティーネット保証の認定申請、保証協会向けの保証審査依頼を投げ、審査を依頼します。
審査後、融資の実施がされたら、経営行動計画書に基づいた、取り組みをスタートさせます。金融機関による継続的な伴走支援も受けながら、事業の再構築などに努めていきます。

ゼロゼロ融資による利子補給期限までの対応が困難な場合は、コロナ借換保証に切り替えることで、保証料を0.85%から0.2%等に大幅に引き下げられるため、返済負担の軽減が可能です。なお、引き下げ利率が0.2%等となっており、一律0.2%が適用されるとは限りません。申請時には、利率が何%で適用されるのかをきちんと確認しておく必要があります。

まとめ

ゼロゼロ融資は、実質無利子・無担保で融資を行う施策でコロナ禍によって影響を受けた多くの事業者や中小企業を倒産から救いました。しかし、返済が本格化し始めた昨今において、なかなか事業を立て直せなかった事業者は、返済が困難な状況に陥ってきています。
円安や物価高などの影響も重なり、今後さらに返済に困窮してしまう事業者が増えてしまうことも十分に考えられます。資金繰りが苦しくなっている、返済の負担が大きいなどの課題を抱えている事業者は、コロナ借換保証を活用してみると良いでしょう。


[寄稿]TheFinance編集部
株式会社セミナーインフォ