この記事は2024年3月1日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「新球場を味方に逆襲を図る日ハム」を一部編集し、転載したものです。


新球場を味方に逆襲を図る日ハム
(画像=Alex/stock.adobe.com)

(北海道日本ハムファイターズ決算資料ほか)

2004年シーズンから北海道に本拠地を移転させた北海道日本ハムファイターズは、フロント主導でデータを駆使した経営手法で成功を収めた球団である。移転して3年後の06年にリーグ優勝を成し遂げ、日本シリーズを制覇。以降、07〜16年までの10年間は、リーグ優勝4回、Aクラス8回と安定した成績を残してきた。

日本ハムが、FAやポスティングでの主力選手の流出が多い中で継続的に結果を出し続けられたのは、ベースボール・オペレーション・システム(BOS)によるところが大きい。BOSとは、試合分析、スカウト活動、選手査定、各球団別情報、トレーナー情報等を統括するITシステムだ。

BOSを用いることで、現場とフロントがチーム編成について客観的な数値に基づく共通の理解の下に選手を育成し、高額年俸のベテランを適宜放出。年俸総額を抑えながらチーム力を維持し、選手全員を戦力として活用することを実現した。しかも12年のドラフトでは、大谷翔平選手を単独1位で強行指名。大谷選手を投手と野手の二刀流育成プランで主力選手に育て、16年のリーグ優勝の立役者に仕立て上げたことで、BOSの有効性がさらに実証された。

しかし、17年オフに大谷選手がメジャーリーグに移籍した後の日本ハムは、翌年こそAクラス入りを果たせたものの、その後はBクラスのまま低迷が続く。それは、パ・リーグの他球団もデータ活用による運営を本格化させたこともあるが、日本ハムが抱える足かせも大きく影響していた。それは、本拠地球場にかかるコストが経営を圧迫し、選手年俸の総額を上げることができないというものだ。

日本ハムは18年、その足かせを払拭させるため、北海道北広島市に自社が運営する新球場を建設し、その周辺をボールパークとして開発すると発表した。球場の自社運営により球場使用にかかるコストを削減し、売店の売り上げや広告収入による収益を確保することで安定的な経営を可能とする。その結果、チーム力の強化につながる好循環を目指した。

そして、23年に新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」が開業。当初、開幕3連戦は満員だったが、交通アクセスの悪さが指摘され始め、開幕戦以降は球場の半分も埋まらない試合が散見された。そこで、球場周辺に駐車場を拡充するなどの対策を講じたほか、交流戦あたりから球場内飲食店の評価が高まったことで来場者が急増。ふたを開ければ、プレオープンの3月12日から9月30日までの203日間で、来場者が当初の目標の300万人を超える303万人を達成した。さらに球団の営業利益は、19年の9億5,000万円から23年は172%アップの26億円が見込まれる(注)。球団発表の観客動員数が188万人であり(図表)、野球観戦以外の目的で来場した客も多いことがうかがえる。長く低迷が続いた日本ハム。新球場を味方につけ、今シーズンの逆襲なるか。

新球場を味方に逆襲を図る日ハム
(画像=きんざいOnline)

江戸川大学 客員教授/鳥越 規央
週刊金融財政事情 2024年3月5日号