この記事は2024年3月8日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「女性ファン獲得戦略が的中したオリックス・バファローズ」を一部編集し、転載したものです。
(オリックス・バファローズ球団公式サイトほか)
パ・リーグ3連覇を達成したオリックス・バファローズは、2005年にオリックス・ブルーウェーブが大阪近鉄バファローズを吸収合併するかたちで発足したプロ野球チームだ。オリックスは合併当初、大阪市内に本拠地を持ちながらも、チーム成績が振るわずファン獲得に苦心した。
そこで、オリックスは12年に、ファンクラブ会員向けの顧客管理システムを導入。ファンの傾向について分析を開始した。その結果、男性ファンはチームを応援する一方で、女性ファンは選手個人を応援する傾向が示された。そこで、女性ファン獲得に向け、選手個人のグッズのバリエーションを増やしたほか、選手との接点を持てるイベントを企画することに注力した。
14年の七夕イベントでは、女性ファンを「オリ姫」と称して「女性来場者にオリジナルユニフォームを無料配布」「選手との食事会」など数々の企画が当たり、大好評を博した。こうした女性ファンを対象とした方策が実を結び、14年に8対2だったファン男女比が、23年には6対4と女性のファン比率が飛躍的に伸びた。最近球場では、ペンライトや選手の顔が入ったうちわを手に、まるでアイドルのライブを見るような感覚で試合観戦する女性ファンが目立つ。
男女を問わず野球に関心の薄い層の支持を得るため、試合前後に行われるパフォーマンスにも力を入れた。その取り組みの一つが、14年に結成された「Bs Girls」だ。Bs Girlsは、他球団のダンス主体のチアリーダーとは異なり、ダンス&ヴォーカルユニットとして結成された。そのため、音楽ユニットがライブを行い、それをファンが楽しむというスタイルが確立されている。メンバーの衣装には選手同様に背番号が記載され、メンバーのグッズも販売されており、野球以外の目的で来場するファンの獲得に一役買っている。
24年のオリックス春季キャンプは、2月1日から22日までの間に20万人近くの観客(前年同期比130%)を動員した(図表)。同じ宮崎県宮崎市でキャンプを行っている巨人や地元・ソフトバンクにも匹敵する。もちろん最近のチーム順位の好調さも影響しているが、この10年間のファン獲得戦略の成果といえるだろう。
江戸川大学 客員教授/鳥越 規央
週刊金融財政事情 2024年3月12日号