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不動産投資と聞くと、アパートやマンションを所有して家賃収入を得るビジネスモデルを想像する方が多いのではないでしょうか。
しかし、それだけが不動産投資ではありません。住居向けの物件以外にも投資は可能で、その中でも代表格といえるのがオフィスビル投資です。
オフィスビルには、住居向け不動産とは異なる特性やメリット・デメリットがあります。
当記事ではオフィスビル投資の世界を案内するとともに、最大のネックである資金の問題を解決する方法についても解説します。
オフィスビルでも不動産投資ができる
テナントビルを所有する会社があって、そこに企業や事業者が入居するというビジネスモデルがあるということは、オフィスビルでも不動産投資が成り立つことは想像できるでしょう。
最初に、オフィスビル投資のビジネスモデルや「アパマン投資」との違いについて解説します。
1.オフィスビル投資のビジネスモデル
アパートやマンションを所有する不動産投資は、個人投資家も多く参入している定番のビジネスモデルです。
オフィスビル投資はその「オフィス版」といえるもので、もちろん個人投資家も参入可能です。対個人のビジネスをBtoC、対法人のビジネスをBtoBといいます。
アパートやマンションへの投資がBtoCだとするなら、オフィスビル投資はBtoBのビジネスといえるでしょう。
2.アパート、マンション投資との違い
アパートやマンションは住むための不動産で、オフィスビルは企業などが事業で使用するための不動産です。
このように用途が大きく異なるため、立地条件の考え方や賃料の計算方法なども異なります。
立地による需要の違い
住居向け不動産は、静かで治安・環境の良い立地条件の物件が好まれます。それに対してオフィスビルは都心や主要駅の駅前など、ビジネス目線での利便性が重視されます。
賃料の計算方法
オフィスビルの賃料は1坪あたりの単価で表示されます。一方で住居向け不動産に坪単価の概念はなく、1戸の物件に対して家賃が設定されます。
一般的に、住居向け不動産はコンパクトな物件ほど坪単価は高くなります。
景気の影響を受けやすい
「衣食住」という言葉があるように、住宅は人間の生活に欠かせないものです。そのため、住居向け不動産の需要は景気変動の影響を受けにくいといえます。
それに対してオフィスビルは事業用なので景気変動の影響を受けやすく、不景気になると空室リスクは高くなります。
3.REITにもオフィス型の商品がある
REITとは不動産投資信託のことで、投資家から集めた資金で不動産を運用し、その利益を投資家に分配する仕組みになっています。
REITの中でも東京証券取引所の上場している銘柄群はJ-REITと呼ばれ、2024年1月時点で58銘柄が上場しています。
この58銘柄の中には「事務所主体型」と呼ばれる銘柄が含まれており、これらのJ-REITはオフィスビルを運用対象としています。
「ジャパンエクセレント投資法人」や「いちごオフィスリート投資法人」といった銘柄はいずれも事務所主体型で、運用主体である投資法人はオフィスビルに投資しています。
証券取引所に上場しているJ-REITの中にもオフィスビル投資を手がける銘柄あることからもわかるように、オフィスビル投資はすでに確立しているビジネスモデルといえます。
オフィスビル投資6つのメリット
オフィスビル投資には、特有のメリットがたくさんあります。ここでは6つの項目に整理してオフィスビル投資のメリットを解説します。
1.総じて利回りが高い
不動産投資家にとって利回りは大きな関心事ですが、オフィスビル投資は総じて利回りが高いことが魅力の一つです。
東京のオフィス街などオフィス需要が高い地域の物件であれば、賃料の坪単価が高くても入居者を見つけやすく、収益性の高い不動産投資が可能です。
ただし、オフィスビルは需要の偏りが大きいため立地条件の影響を強く受けます。そのため、オフィスビル投資で高い収益性を確保するには立地条件を鑑みた物件選びが非常に重要です。
2.安定性が高い
安定性の高さもオフィスビル投資のメリットです。オフィステナントは入居期間が長くなる傾向があるため、一度入居したテナントがすぐに退去することはあまりありません。
入居者が退去する際、マンションなど住居向け不動産の場合は2ヵ月前に解約を通知するのが一般的です。
解約の意思表示から退去までの期間が短いため空室が発生するリスクが高くなりますが、オフィスビルは6ヵ月前に解約を通知するのが一般的なので、空室が発生するリスクが低くなります。
3.定期借家契約が多くオーナーの意向を反映しやすい
賃貸契約には、大きく分けて普通借家契約と定期借家契約があります。
住居向け不動産では普通借家契約が一般的なので、オーナーの意向で入居者を退去させたり、契約更新を拒否したりするのは難しいといえます。
定期借家契約の場合は、契約期間満了時に双方が合意しなければ再契約が交わされることはありません。
後者のほうがオーナーにとって有利な賃貸契約といえますが、オフィスビルでは後者の定期借家契約が一般的です。
賃貸契約においてオーナーの意向を反映しやすいこともオフィスビルのメリットです。
4.人口が減少しても都市部のオフィス需要は影響を受けにくい
日本は人口減少が社会問題になっています。そのことが不動産投資の需要にも暗い影を落としているとの指摘もありますが、それが主に起こっているのは過疎地などの住居向け不動産です。
都市部のオフィス需要は人口が減少してもすぐに減衰するわけではないため、人口減少の影響を受けにくいという特性があります。
5.オーナーの負担が少ない
オフィス物件はシンプルな造りになっているものが多く、多くの物件には浴室やキッチンなどの水回りがありません。
そのため物理的に壊れる可能性のある部分が少なく、維持や原状回復のコストを抑えられます。
6.保証金を活用しやすい
住居向け不動産の賃貸契約では、保証会社を入れることで保証金や敷金などの初期費用を下げるケースが多いです。
ところが、オフィス物件では保証金が高めに設定されるケースが多く、賃料の3~12ヵ月分が一般的です。
保証金なので、退去時には契約どおりの金額を返還する必要があります。
ただ、先ほど述べたように入居期間が長くなるケースが多いため、オーナーは預かっている保証金を運用することができます。
保証金を運用して得られた収入も、もちろんオーナーのものです。
オフィスビル投資の3つのデメリットやリスク
次に、オフィスビル投資のデメリットやリスクについて解説します。留意しておくべきことは、以下の3つです。
1.物件価格が高額になりがち
多くのオフィスビルがあるのは地価の高い都心です。優良物件となればなおさらでしょう。
そんなビルを土地も含めて一棟丸ごと買うとなると、物件によっては数十億円の資金が必要になります。
物件価格が高額で参入障壁が高いことは、個人投資家にとって大きなハードルとなります。しかし、この問題は後述する区分オフィス投資によって解決できます。
2.景気の動向が空室リスクに直結する
住居向け不動産は「衣食住」の一角であるだけに、景気変動の影響を受けにくいというメリットがあります。
しかし、オフィスビルの利用者は事業を営む企業や事業者なので、景気が悪くなるとたちまち需要が減衰します。
景気が後退している局面では空室リスクが高くなるため、賃料の引き下げやフリーレントといって契約後の一定期間は賃料を無料にするといった条件を提示せざるを得なくなることもあるでしょう。
3.金融機関の融資難易度が高くなりやすい
オフィスビルは高額であるがゆえに、購入にあたっては金融機関の融資を利用するケースが大半です。
融資の際には入居する(入居が想定される)テナントの業態や経営状態も審査の対象となり、この点は住居向け不動産を購入する際の融資審査と異なります。
融資額が高額になることも相まって、金融機関の審査に通過する難易度は全体的に高くなります。
高額になりがちなオフィスビル投資を少額から始められる
メリットの多いオフィスビル投資ですが、デメリットの一つである初期投資額の大きさが最大のネックです。この問題を解決できるのが不動産小口化商品です。
個人投資家でも取り組みやすい不動産小口化商品の概要と主な種類について解説します。
1.不動産小口化商品とは
不動産は高額商品の代表格であり、多くの人が「初期投資額が大きくて手が届かない」という問題に直面します。
「手持ちの資金は少額だが不動産に投資したい」というニーズを満たすために考案されたのが不動産小口化商品です。
不動産小口化商品は個人投資家にも人気で、すでにさまざまな種類があります。主な不動産小口化商品は、以下のとおりです。
商品の名称 | 概要 |
---|---|
REIT | ・不動産での運用に特化した投資信託で、東京証券取引所に上場している銘柄群はJ-REITと呼ばれる ・「いつでも買えて、いつでも売れる」という流動性の高さが魅力 |
不動産クラウドファンディング | ・投資家から集めた資金で不動産を運用し、その運用益を分配する ・少額の資金を広く集めることが前提のクラウドファンディングであるため1万円などの少額から投資が可能 |
区分オフィス投資 | ・マンションを1戸単位で所有する区分マンション投資と同様にオフィスビルの中にある物件を区分所有する投資形態 ・一棟を購入する場合に比べると参入障壁が低い |
このように、不動産小口化商品といってもさまざまな種類があります。「初期投資額の問題さえクリアできれば不動産に投資したい」と考える人は多く、小口化へのニーズが高いことがうかがえます。
2.オフィスは区分所有できる
先ほど紹介した不動産小口化商品の中に、区分オフィス投資があります。
一棟物件に投資をする場合と比べると部屋単位やフロア単位で所有できるため、小口化されているといえます。
しかし一棟が数十億円のオフィスビルを一部所有するとなると、区分所有でも購入費用が数千万円、数億円になることも珍しくありません。これでは、個人投資家にはまだまだ手が届かないでしょう。
「メリットの多いオフィスビル投資だけに、もっと少額から参入できれば」というニーズに応えているのが区分オフィスをさらに小口化した商品です。
例えば、ACNの「Aシェア」という商品は1口100万円で5口から投資できるので、500万円からオフィスビル投資を始めることができます。
以下が「Aシェア」の小口化イメージです。
一棟を所有するとなると50億円が必要なオフィスビルを1フロア所有へと小口化すると5億円。それでも高いので、さらに小口化して複数の投資家が所有するという考え方です。
これなら、500万円という多くの個人投資家にとって現実味のある金額でオフィスビル投資のメリットを享受できます。
区分オフィス投資のメリットと注意点
区分オフィス投資は近年登場し、人気を集めている投資形態です。多くのメリットがあるため、オフィスビル投資の定番になりつつあります。
ここでは、区分オフィス投資のメリットと注意点について解説します。
メリット1.少額から始められるので手軽
少額から始められることは、不動産小口化商品が開発された最大の理由でありメリットです。
区分オフィス投資やそれをさらに小口化した「Aシェア」のような商品の魅力は、少額で本格的なオフィスビル投資ができることです。
メリット2.区分所有だと管理の手間いらず
オフィスビルを一棟丸ごと所有する場合は、管理などもすべてオーナーの責任で行うことになります。
管理会社を決めて契約し、管理費を支払いつつ適切に管理されているかのチェックも必要でしょう。
これに対して区分オフィス投資の場合は、すでに管理会社が入っているビルの一部を所有することになるため、区分所有者に管理の負担はありません。
これは区分マンション投資と同じメリットで、管理の手間が煩わしいと感じる人にとっては特に大きいメリットといえます。
メリット3.出口戦略で失敗しにくい
出口戦略は、不動産投資の「最後」にあたる部分です。所有している物件を売却して1つの投資を終了させる場合、所有している物件を高く売ることが極めて重要です。
それまで家賃収入を得られていたとしても、売却時に大きなマイナスが出るとトータルでもマイナスになるおそれがあるからです。
売却完了時に、より多くの利益を残すことを目指すのが出口戦略です。
区分オフィス投資として購入できる物件の多くは、ディベロッパーが立地条件や周辺事情などをしっかり分析した上で建築しているため、資産価値が落ちにくい物件といえます。
不動産は劣化するため売却価格が購入価格を下回るのが一般的ですが、オフィスビルの場合は立地条件などが良ければ売却時に利益が出ることもあります。
一棟オフィスビル投資の場合は、どのビルを購入するかを決めるのもオーナー自身です。経験が豊富でなければ、優良物件であるかどうかを判断するのは簡単ではありません。
区分オフィス投資はプロが認めた物件なので、初心者が価値の低い物件をつかまされる可能性は低いでしょう。
メリット4.オフィス需要に合致している
区分オフィス投資として購入できる物件の多くは、中小規模のビルです。
大型ビルよりも中小規模のビルのほうがテナントからの需要が高いため、区分所有オーナーにとっては空室リスクが低いというメリットにつながります。
入居者のニーズに合致していることが賃貸経営の安定化につながるのは、マンションやアパートであっても同じです。
オフィスビル投資ではオフィスビルの需要を確認することが重要ですが、区分オフィス投資はこうした需要を踏まえた上で設定されているため、空室リスクに悩まされる可能性は低いでしょう。
注意点1.欲しいと思っても買えるとは限らない
メリットが多い区分オフィス投資ですが、注意点もあります。留意しておくべきことは以下の2つです。
まず、欲しいと思っても買えるとは限らないことです。区分オフィス投資は物件の流通量がまだ少なく、お目当ての物件に出会いにくいといえます。
同じオフィスビルの中であっても、希望する区画を買えるかどうかはわかりません。
注意点2.景気変動の影響を強く受ける
また、オフィスビルの需要は景気変動の影響を強く受けます。
景気悪化によって空室リスクが高まるおそれがあるのは、区分所有でも同じです。
まとめ
不動産投資の一種であるオフィスビル投資について解説しました。
アパートやマンションといった住居向け不動産とは異なる特性やメリット・デメリットがあることがおわかりいただけたと思います。
初期投資額が大きくなるという最大のネックを解決できる方法として区分オフィス投資、そして区分オフィス投資をさらに小口化した商品なども紹介しました。
少額からオフィスビル投資のメリットを享受できるユニークな商品なので、オフィスビル投資に興味がある方はぜひ一度検討してください。
(提供:ACNコラム)