贈与税がかからない方法ってある?贈与税が非課税になる特例の内容を徹底解説
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通常、人から無償で財産を受け取った場合は贈与税の対象となります。

贈与税の対象になった場合には、「誰から」「どんな財産を」「いくら受け取ったか」によって計算された贈与税額を納めなければなりません。

ただし、無償で財産を受け取ったからといって必ず贈与税がかかるわけではありません。

本記事では、贈与税がかかる仕組みと、贈与税が非課税になる特例について詳しく解説します。

今後財産の受け渡しを考えている人は、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること
  • 贈与税は基礎控除額110万円を超えると課税される
  • 教育資金や結婚資金などに非課税特例が適用可能
  • 特例利用には要件確認と必要書類の提出が必要

目次

  1. 贈与税とは
  2. 贈与税がかかる仕組み
  3. 贈与税が非課税になる特例
  4. 贈与税が非課税となる特例を利用する際の注意点
  5. まとめ

贈与税とは

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まずは贈与税に関する基本を解説します。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税制度」があり、贈与税を納める人、つまり財産を受け取った人はどちらかを選択することができます。

「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の概要は以下のとおりです。

特例贈与財産 一般贈与財産
対象者 直系尊属(親・祖父母)から18歳以上の直系卑属(子・孫)への贈与 それ以外のすべての贈与(兄弟姉妹、配偶者、友人、法人などを含む)
対象財産 直系尊属から贈与された財産 特例贈与財産以外のすべての財産
適用年齢 贈与を受ける人が1月1日時点で18歳以上(2022年以前は20歳以上) 年齢制限なし
税率 優遇された低い税率(10%~50%) 高い税率(10%~55%)
主な例 親から成人の子へ住宅資金や学費として贈与された場合 兄弟間や夫婦間、または法人から個人への贈与
利用目的 次世代への早期財産移転を促進するための税制優遇 通常の贈与全般
速算表の適用範囲 基礎控除額110万円を差し引いた後、優遇された特例税率で計算 基礎控除額110万円を差し引いた後、一般税率で計算
税負担の比較 同じ贈与額でも一般贈与財産より低い税負担 特例贈与財産と比較して高い税負担
例外事項 利用要件を満たさない場合は一般贈与財産として扱われる 特例贈与財産に該当しないため、速算表に従って計算

詳しくは以下で解説します。

暦年課税とは

暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額に対して課税される方法です。

基礎控除額は110万円で、年間110万円までの贈与であれば贈与税はかかりません。

たとえば、毎年100万円ずつ贈与する場合、贈与税は発生しません。

暦年課税のメリットは、少額の贈与を非課税でおこなえることです。

また、贈与者が亡くなる前7年以内の贈与は、相続財産に加算されて相続税の対象となりますが、それを超える期間の贈与は相続税の対象外となります。

デメリットとしては、贈与額が基礎控除額を超えると贈与税が課税されること、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されることです。

暦年課税は、少額の贈与を毎年おこないたい場合や、相続までの期間が比較的長い場合に適しています。

・暦年課税のメリット・デメリット

暦年課税のメリット・デメリットは以下のとおりです。

<暦年課税のメリット>
毎年110万円まで非課税:毎年少額の贈与を非課税でおこなえる。
贈与回数に制限なし:何度でも贈与が可能。
相続対策に利用可能:相続税の節税に繋がる場合がある。

<暦年課税のデメリット>
贈与額が多いと課税:基礎控除額を超えると贈与税が発生。
相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算:相続税の対象となる。
高額贈与には不向き:税率が高くなる場合がある

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、贈与時に贈与税を納めるものの、相続時にその贈与財産と相続財産を合算して相続税を計算し、既に納めた贈与税額を控除する制度です。

60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫への贈与に対して選択できます。

特別控除額は2,500万円で、この金額までは贈与税がかかりません。

ただし、この制度を選択すると、その贈与者からの贈与は全て相続時精算課税となり、暦年課税に戻すことはできません。

メリットは、多額の財産を非課税で贈与できる可能性があることです。

デメリットは、一度選択すると暦年課税に戻せないこと、相続時に相続税の計算が必要になることです。

相続時精算課税制度は、まとまった財産を早期に移転したい場合や、相続税の納税額を抑えたい場合に適しています。

また、令和5年度の税制改正により、相続時精算課税制度を選択した場合でも、毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからなくなりました。

この改正により、相続時精算課税制度の使い勝手が向上しました。

ただし、相続時精算課税制度を利用する際には、所定の書類を管轄の税務署に提出しなければなりません。

一度相続時精算課税制度を選択すると暦年課税には戻せないなどの、相続時精算課税制度のメリット・デメリットをよく理解したうえで利用しましょう。

・相続時精算課税制度のメリット・デメリット

相続時精算課税制度のメリット・デメリットは以下のとおりです。

<相続時精算課税制度のメリット>
最大2,500万円まで非課税:まとまった額の贈与が可能。
早期の財産移転が可能:財産を早く子や孫に移せる。
贈与時の価格で評価:将来の値上がり益を抑えられる。

<相続時精算課税制度のデメリット>
一度選択すると暦年課税に戻せない:その贈与者からの贈与は全てこの制度になる。
相続時に相続税計算が必要:相続時に贈与財産も合算して計算。
贈与税の申告が必要:贈与の都度申告が必要。

贈与税がかかる仕組み

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暦年課税では、1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合に贈与税が発生します。

1人から受け取った合計額ではなく、受け取った財産の額の合計額が110万円を超えた場合に発生することに注意しましょう。

複数の人から財産を受け取った場合は、最終的に1年間で受け取った財産の合計が110万円を超えていないか確認してください。

暦年課税での贈与税の計算の仕組みは、「誰から財産を受け取ったか」によって変わります。

贈与税の対象となる財産は「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に分けられます。

特例贈与財産とは

特例贈与財産とは、直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上の子や孫(直系卑属)への贈与財産を指します。

令和4年3月31日以前の贈与については、受贈者の年齢は20歳以上でした。

この制度は、次世代への早期の財産移転を促進し、経済の活性化を図る目的で設けられています。

特例贈与財産は、一般贈与財産に比べて税率が低く設定されています。

これは、世代間の財産移転を円滑に進めるための税制上の優遇措置です。

特例贈与財産の税率は、贈与額に応じて10%から50%まで段階的に高くなります。

一般贈与財産と比較すると、同じ贈与額でも税負担が軽減されることがわかります。

たとえば、親から成人の子へ贈与する場合、特例贈与財産の税率が適用され、一般贈与財産の税率よりも低い税率で贈与税が計算されます。

ただし、特例贈与財産の適用を受けるためには、贈与者と受贈者の関係が直系尊属と直系卑属であること、受贈者が18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与は20歳以上)であることが条件となります。

贈与税は以下の速算表で計算できます。

特例贈与財産のほうが一般贈与財産よりも税率、控除額ともに優遇されていることがわかります。

基礎控除額である110万円を差し引いた後の金額を表に当てはめてください。

金額の下に税率、その下に控除額を記載しています。

【特例贈与財産】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
※直系尊属から受け取った財産で、受け取った人がその年の1月1日時点で18歳以上であること
出典:国税庁 財産をもらったとき

20歳の人が祖父から300万円の金銭を受け取った場合、基礎控除額である110万円を引いた額は190万円です。

この190万円に対して贈与税が課税されるため、上の速算表に当てはめると190万円×10%=19万円が納めるべき贈与税額になります。

一般贈与財産とは

一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない全ての贈与財産を指します。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

・ 夫婦間の贈与
・ 兄弟間の贈与
・ 親から子への贈与で、子が18歳未満の場合(令和4年3月31日以前の贈与は20歳未満)
・ 祖父母から孫への贈与で、孫が18歳未満の場合(令和4年3月31日以前の贈与は20歳未満)
・ 法人から個人への贈与

一般贈与財産は、特例贈与財産に比べて税率が高く設定されています。

これは、特例贈与財産が次世代への早期の財産移転を促進する目的で税制優遇されているのに対し、一般贈与財産はそうした政策的な配慮が少ないためです。

一般贈与財産の税率は、贈与額に応じて10%から55%まで段階的に高くなります。

たとえば、基礎控除額の110万円を超えて贈与を受けた場合、その超えた部分に対して贈与税が課税されます。

税率が高いため、高額の贈与をおこなう場合は、贈与の時期や方法を慎重に検討する必要があります。

また、一般贈与財産であっても、贈与税の配偶者控除(最大2,000万円)や住宅取得資金の贈与の特例など、特定の要件を満たせば非課税となる制度も存在します。

以下が一般贈与財産の速算表になります。

【一般贈与財産】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
※特例贈与財産に当てはまらない贈与
出典:国税庁 財産をもらったとき

受け取った相手が直系尊属でない場合は、同じ金額を受け取ったとしても納める贈与税額は高くなります。

課税金額が300万円以下なら特例贈与財産と変わりませんが、300万円を超えると税率が高くなることに注意してください。

確定申告が必要

贈与税を納める際には、確定申告を行わなければなりません。

申告時期は財産を受け取った年の翌年の2月16日から3月15日までで、納税もその間におこないます。

納税は現金でおこなう必要があり、口座引き落としやクレジットカードの他、一部のキャッシュレス決済も利用できます。

一括で納めなければならないため、納税額が10万円以上と大きく、一括で納められないことに足る理由がある場合には、申請することによって5年以内の年払いに分けて納めることもできます。

ただし、この制度を利用するにあたっては担保が必要で、利子税も発生することに気をつけてください。

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贈与税が非課税になる特例

贈与税がかからない方法ってある?贈与税が非課税になる特例の内容を徹底解説
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要件を満たすことで、贈与税が非課税になる特例があります。

特例によって要件や非課税限度額などが異なりますので、内容を理解した上で利用しましょう。

今回紹介する特例は以下のとおりです。

1.住宅取得等資金の贈与

父母もしくは祖父母などの直系尊属から住宅用の家を新築、購入、リフォームをおこなうための金銭を受け取った場合で、一定の要件を満たせば贈与を受けた人ごとに500万円までの贈与税が非課税になります。

さらに、新築もしくは購入、リフォームする家が省エネ等住宅に該当する場合は、非課税限度額が1,000万円になります。

この制度は2024年3月31日で終了していますが、この間に該当する贈与を受けた場合は非課税限度額までの金額について非課税扱いになるので、忘れずに申告しましょう。

ただし、この住宅取得等資金贈与の特例は2022年以前にも存在しており、2022年以前にこの特例を利用したことがある場合は、今回は利用できません。

また、住宅ローンを利用し、住宅ローン控除を利用する場合は、家の購入や新築、リフォームにかかった費用からこの特例を受けた金額を控除した金額をもとに住宅ローン控除額を求める必要があることに注意してください。

住宅取得等資金贈与の特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

・利用するための要件

1. 金銭を受け取った人は、受け取った年の1月1日時点で18歳以上である

2. 金銭を受け取った人のその年の所得税にかかる合計所得金額が2,000万円以下である(ただし、新築などをおこなう家の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は合計所得金額が1,000万円以下である)

3. 金銭を受け取った人は、受け取った時点で贈与者の子どももしくは孫など直系卑属に該当する

4. 金銭を受け取った年の翌年の3月15日までに、その金額の全額を以下に示す贈与の要件を満たす住宅の新築や購入、リフォーム費用に充てる

5. 金銭を受け取った年の翌年の3月15日までに、新築や購入もしくはリフォームした家に居住しているか、3月15日以降遅滞なく居住することが決まっている

・特例を利用するための贈与の要件

1. 家を新築するための費用に充てるための金銭である

2. 建売住宅もしくは1982年1月1日以降に建てられた中古住宅、もしくは地震における安全性にかかる一定の基準に適合している中古受託の取得費用に充てるための金銭である

3. 居住用の住宅のリフォーム費用に充てるための金銭(ただし、工事費用が100万円を超えること)

・特例を利用するための住宅についての注意点

1. 日本国内にあり、床面積が40平方メートル以上240平方メートル未満である

2. 家の新築のための費用には土地の購入に充てるための費用も含む

3. 耐震性基準を満たしていない中古住宅を取得した場合でも、その後耐震改修をおこなって基準を満たすなどの要件を満たす

・利用する際の手続き

贈与税の申告期間(贈与を受けた年の翌年の2月16日から3月15日まで)に、贈与税の申告書に住宅取得等資金贈与の特例を受けることを記載し、以下の書類を添付して納税者の住所地を管轄する税務署に提出します。

【必要書類】
・金銭を受け取った人の戸籍謄本
・登記事項証明書
・住宅性能証明書(省エネ住宅の場合)

また、2003年1月1日から2023年12月31日までの間に住宅取得等資金の特例を受ける場合には、相続時精算課税制度の併用が可能です。

その際には、贈与税の申告書に相続時精算課税の選択の特例を受ける旨を記載し、相続時精算課税選択届出書や登記事項証明書などの書類を添付して税務署に提出します。

2.教育資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属から教育資金に充てるための費用として受け取った金額について、要件を満たす場合に最大1,500万円までが非課税になる制度です。

この特例に当てはまる教育資金は、以下のとおりです。

・ 学校などに対して直接支払う費用(入学金、授業料、施設設備費、教材費用、修学旅行用の費用、給食費など)
・ 学校外に対して直接支払う費用で、社会通念上認められるもの(塾などに支払う費用や、習い事にかかる費用、通学に必要な定期代、学校が認めた教材費用など)

ただし、学校外に対して直接支払う費用については、費用を受け取る人が23歳に達した日の翌日以降の場合は教育訓練給付金の支給対象などの費用に限られます。

また、学校外に対して直接支払う費用の上限は500万円です。

・利用するための要件

直系尊属から受ける金銭でなければならず、また受け取る人の年齢が30歳未満でなければなりません。

この特例は利用できる時期が決まっており、2013年4月1日から2026年3月31日までに受け取る金銭である必要があります。

・利用する際の手続き

金銭を受け取る人が、金融機関(営業所を含む)などに教育資金非課税申告書を提出しなければなりません。

ここでいう金融機関とは、信託銀行、銀行、および証券会社を指します。

教育資金口座を開設した後で教育資金を振り込み、金銭を受け取る人はその口座から必要な額を引き出して利用します。

制度を利用している間は、引き出した額を教育費用に充てたことを証明するために、領収書などを金融機関に提出する必要があります。

また、提出する期限も決まっており、教育費用を支払った後に実際に支払った金額を口座から引き出す場合は、領収書などに記載された支払年月日から1年以内に提出しなければなりません。

それ以外の場合は、領収書などに記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日が提出期限です。

3.結婚・子育て資金の一括贈与

父母や祖父母などの直系尊属から、結婚および子育て資金として受け取った金銭の一部が非課税になる特例です。

結婚資金に該当するのは、結婚式にかかる費用や結婚後に住む新居を契約する際の敷金、転居費用などです。

結婚式にかかる費用は、婚姻日の1年前以降に支払われるものでなければなりません。

また、結婚資金の非課税限度額は300万円です。

子育て資金は妊娠・出産・育児にかかる費用で、不妊治療も含まれます。

また、子どもの医療費や保育所などに支払う保育料も該当します。

非課税の上限額は、結婚および子育て資金の合計で1,000万円までです。

・利用するための要件

この結婚・子育て資金の一括贈与の特例を受けるためには、その贈与が2015年4月1日から2025年3月31日までの間に受け取った金銭でなければならず、また、受け取る人の年齢も18歳以上50歳未満である必要があります。

・利用する際の手続き

利用にあたっては、金融機関(営業所を含む)などで結婚・子育て資金口座を開設し、口座を開設した金融機関に対して「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出しなければなりません。

通常、口座を開設した日に提出します。

結婚・子育て資金口座はどの金融機関でも開設できるわけではないので、事前に確認しておきましょう。

結婚・子育て資金は教育資金と同様に、資金使途を証明する領収書を提出する必要があります。

事前に支払った後で、その金額を充当するために口座からお金を引き出した場合は、領収書などに記載された支払年月日から1年以内が提出期限です。

それ以外の場合は、領収書などに記載された支払年月日が属する年の翌年3月15日までに、口座を開設した金融機関に提出する必要があります。

4.夫婦の間で居住用の不動産を贈与したとき

贈与税の配偶者控除の一つで、一定の要件を満たす夫婦間で居住用の不動産もしくは居住用の不動産を取得するための金銭の受け渡しがあった場合は、贈与税の基礎控除額である110万円に加えて最高2,000万円の控除が受けられます。

・利用するための要件

この特例を利用するにあたっては、夫婦の婚姻期間が20年以上でなければなりません。

さらに、夫婦のどちらか(配偶者)から受け取った財産が居住用の不動産もしくは居住用の不動産を取得するための金銭である必要があります。

また、財産を受け取った側が、受け取った年の翌年の3月15日までにその居住用の不動産、もしくは受け取った金銭で取得した居住用の不動産に住んでいなければならず、その後も引き続き住み続けることが明確でなければなりません。

この特例は、配偶者が同じ場合は一生に一度しか適用されないことにも注意してください。

・利用する際の手続き

この特例を受けるためには、贈与税の申告が必要です。

また、申告の際には以下の書類を添付しなければなりませんので、事前に準備しておきましょう。

・ 財産を受け取った日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本または抄本、そして戸籍の附票の写し
・ 居住用の不動産の登記事項証明書、もしくはその他の書類で、財産を受け取った人が居住用の不動産を取得したことを証明できるもの

金銭ではなく居住用の不動産そのものを受け取った場合は、その不動産の評価明細書も必要です。

5.相続時精算課税制度の利用

相続時精算課税制度は、財産を受け取った際に特別の控除額および一定の税率で贈与税を計算し、その後贈与した人が亡くなったときに相続税で精算する仕組みです。

そのため、贈与する人が直系尊属など将来被相続人になる人でなければ利用できません。

相続時精算課税では、相続時精算課税制度を選択した贈与者ごとに1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額(選択したときからの累計)から2,500万円の特別控除額を差し引き、残った金額に一律20%の税率を乗じて求めた贈与税を納めます。

また、2024年1月1日以降に受け通った金額については2,500万円に加え、110万円の基礎控除額も適用されます。

・利用するための要件

この制度を利用するには、贈与者や財産を受け取る人が以下の要件を満たす必要があります。

贈与者
贈与をする年の1月1日時点で60歳以上の直系尊属であること

財産を受け取る人
財産を受け取る年の1月1日時点で18歳以上であり、贈与者の直系卑属と推定される相続人もしくは孫であること

・利用する際の手続き

財産を受け取る人、つまり納税者が贈与税の申告期限内に贈与税の申告書に相続時精算課税選択届出書および必要書類を添付し、住所地を管轄する税務署に提出します。

その際には、財産を受け取る人だけでなく、贈与者の戸籍謄本なども必要です。

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贈与税が非課税となる特例を利用する際の注意点

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贈与税が非課税となる特例を利用する際には、以下の点に注意する必要があります。

贈与税が非課税となる特例を利用する際の注意点

1.利用要件の確認

特例ごとに厳格な利用要件が定められています。

たとえば、教育資金の一括贈与特例では、受贈者が30歳未満であることや、結婚・子育て資金特例では、受贈者が18歳以上50歳未満であることが条件です。

要件を満たしていない場合、特例の適用は受けられません。

2.必要書類の準備

特例の適用を受けるには、申告時に必要な書類を提出する必要があります。

たとえば、教育資金や結婚・子育て資金特例では、金融機関に非課税申告書を提出し、贈与の目的や使途を明確にする書類が求められます。

3.特例の適用回数や期間の制限

一部の特例は適用回数が制限されています。

たとえば、配偶者控除の特例は同じ配偶者に対して一生に一度しか利用できません。

また、特例の適用期間も法律で定められており、期限を過ぎると適用外となるため注意が必要です。

4.用途の制限

非課税特例では、贈与財産の使途が厳密に制限されています。特定の目的以外に使用した場合、特例が取り消されるリスクがあります。

たとえば、教育資金を資産運用に使った場合、贈与税が課されることがあります。

これらを踏まえ、特例を利用する際には事前に要件や必要書類を確認し、計画的に手続きを進めることが重要です

まとめ

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人から贈与を受けた場合は、基本的に基礎控除額である110万円を超える部分が贈与税の対象となります。

しかし、一定の要件を満たすことで非課税になる特例も存在します。

特例の利用にあたっては、要件を満たしていることを確認したうえで、それぞれの特例で決められた手続きをおこなう必要があります。

特に直系尊属から受け取った財産について非課税になる特例が多く用意されていますので、該当する場合は利用を考えてみましょう。

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新井智美
新井智美(著者)
トータルマネーコンサルタント。個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間100本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。
公式サイト:https://marron-financial.com/
(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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(提供:ACNコラム