この記事は2024年4月8日に「CAR and DRIVER」で公開された「【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学」を一部編集し、転載したものです。


【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学
レクサスRX500h・Fスポーツパフォーマンス/価格:6SAT 901万円。RXはレクサスを象徴する世界的な人気モデル。メルセデスやBMW、ポルシェやアウディなど欧州プレミアムブランドがライバル。新型の造形はダイナミック

RXは独自の存在感と走りで羨望を集める

ミッドサイズでほどよく高級、しかも乗用車感覚のドライブフィールを持つSUVとして1997年末に登場した初代RXは、アメリカ市場で大ヒット。日本ではハリアーのモデル名で販売され、こちらも大人気を博した。
RXはミッドサイズ・プレミアムSUVの先駆である。現在、世界中のほぼすべてのブランドが力を入れるカテゴリーのパイオニアだ。

【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学
1997年末に誕生した初代RXは日本ではハリアーとして販売。当時のSUVは「クロカン4WD」が主力だったが、FF上級サルーンをベースに構築した点が世界中に衝撃を与えた。初代ハリアー(RX)は、流麗なスタイリングと抜群の快適性、そしてSUVの自由を持つ新種のラグジュアリーモデルとして瞬く間に高い人気を獲得する

初代RX、日本名ハリアーの何がそれほどユーザーの心をとらえたのか? それまでの「クロカン4駆」とはまるで異なるデザインセンスがまず支持された。高級サルーンと変わらぬ質感とディテールを背の高いワゴンスタイルにまとめ、クロカン4WDが持ち味とする武骨さや泥臭さを徹底的に排除した。
当時、そんなクルマはなかった。レンジローバーでさえ、煌びやかさとは無縁だったのだ。

インテリアデザインも群を抜いていた。当時の高級サルーンそのもので、クロカンにはまったく見えない。しかも豪華さにあふれていた。RXは、マルチパーパスに使えるスペシャルティカーというまったく新しいジャンルとして歓迎される。そこからしだいに高級車の定番商品として成長していったのだ。

走りも人気を得た大きな要因である。思い返せば最新のSUVほど乗用車ライクに走ることはなかったはずだが、それでも記憶の中にはミッドサイズのFFサルーンと遜色ないドライブフィールという印象が残っている。当時、背の高いモデルといえば、クロカンのギクシャクとした動きがまだ一般的だった。そんな中、洗練されたRXの驚きは大きかった。決してスポーティではない。だが快適に泰然と走るたたずまいは、なるほど北米市場で引っ張りダコになるわけだと感心したことを覚えている。

最新RXは4種のパワートレーンを設定。スポーティからジェントルまで守備範囲は広い

そんなハリアーと海外向けレクサスRXが同じモデルの「バッジ違い」であったのは第2世代まで。2005年以降は日本市場においてもレクサスブランドを展開。その関係で、それぞれ別個に進化を続けることになった。RXは第4世代までで累計360万台以上を世界市場で販売した。2022年にデビューした現行モデルはRXとしては第5世代となる。

【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学
【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学

レクサス専用モデルとなった3代目以降、RXのデザインと性能は完全にプレミアム領域に達している。とく2015年登場の4代目からは立派なグリルと凝ったルーフライン、そしてゴージャスなインテリアで名実ともにレクサスの主力モデルとなった。現行型はこれまでのRXの集大成ともいうべき存在である。

全体的なフォルムや特徴的なディテールを引き継ぎつつ、最新モードの「メッキなし」スピンドルグリルを与えることで新しさを存分にアピールした。リアフェンダー周辺のグラマラスなデザインも大いに目を引く。

先代がモデル末期まで人気だったこともあって、正常進化にして斬新な雰囲気を放つ現行モデルは、以前にも増して、注目のラグジュアリーSUVに成長した。
現行モデルのポイントは「選べるパワートレーン」だろう。2.4リッターガソリンターボ+8AT(350)から、2.5リッターガソリンHEV+無段変速(350h)、2.5リッターガソリンPHEV+無段変速(450h+)、そして2.4リッターガソリンターボHEV+6AT(500h)の4種から選べ、4WDシステムはそれぞれに最適システムを組み合わせるなど、凝ったグレード構成になった。なお、6気筒エンジンは今回から見送られている。余談だがRXの使うGA-Kプラットフォームはカムリが大元で、現在のクラウンやアルファード系にも採用されている。パワートレーン構成をしっかり理解しておくと、他のモデルとの比較もわかりやすくなると思う。

【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学
【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学

最もパワフルに走ってくれるのは最上級グレードの500hだ。走り出した瞬間から筋肉質を感じる車体で、少々ハードな走りにも十分に応える。とはいえあまりにスポーティすぎるというか、ドライバーとの対話性を意識したグレードであることも確か。

ゆったりと、ある意味「レクサスらしく乗りたい」のであれば450h+もしくは350hをお勧めした。2.4リッターターボの350も、8ATとの組み合わせで実に安心して扱える。エンジンのマナーにやや難はあるものの、デイリーカーとして過不足のないモデルである。

アメリカ、とくに東海岸のフリーウェイを走っていると、本当によくレクサスを見かける。その大半がRXだ。RXは名実ともに国際車といっていい。

実は初代ハリアーの頃から「帰国子女の魅力」が備わっていて、それが日本市場においても独特なポジショニングを構築した。インポートカーではないし、さりとて純然たる国産車とも違う。高級ブランドながら鼻につかない。でしゃばりすぎないアピールの数々が、日本を含め世界中のユーザーを魅了するポイントではないか。

レクサスRXには独特のオーラが備わっている。日本でレクサスブランドが定着して早20年。RXは生まれ故郷の日本においても、LSやLC以上に、ブランドのイメージリーダーカーとして君臨するまでになった。

レクサスRX主要諸元

【魅力あるクルマ】ミッドサイズ・プレミアムSUVの創造者、レクサスRXのクルマ哲学

グレード=500h・Fスポーツ・パフォーマンス
価格=6SAT 901万円
全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース=2850mm
トレッド=フロント:1650/リア:1675mm
車重=2100kg
エンジン(プレミアム仕様)=2393cc直4DOHC16Vターボ
エンジン最高出力 kW(㎰)/rpm=202kW(275ps)/6000rpm
エンジン最大トルク Nm(kgm)/rpm=460(46.9)/2000〜3000rpm
モーター最高出力=フロント:64kW(87ps)/リア:76kW(103ps)
モーター最大トルク=フロント:292Nm(29.8kgm)/リア:169Nm(17.2kgm)
WLTCモード燃費=14.4km/リッター(燃料タンク容量65リッター)
(市街地/郊外/高速道路:11.8/14.3/15.8 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=235/50R21+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m

フォトギャラリー

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Writer:西川淳、Photo:山上博也


(提供:CAR and DRIVER