地図情報最大手のゼンリン<9474>は2024年4月に、地形などの3次元データをオンライン上で処理、解析できる建設、土木、測量現場向けのクラウド型ソフトウエアを手がけるローカスブルー(東京都渋谷区)を子会社化した。
ゼンリンの地図データベースや情報収集ノウハウと、ローカスブルーの点群(物体や地面の形状などを表す点の集まり)の処理、解析技術などを組み合わせることで、企業や自治体のDX(デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化支援を促進し事業を拡大する。
ゼンリンは2025年3月期を最終年とする6カ年の中長期経営計画 「ZENRIN GROWTH PLAN 2025」に取り組んでおり、2025年3月期に売上高638億円、営業利益58億円の目標を掲げている。
同社が発表した業績予想によると2025年3月期の売上高は643億円、営業利益は36億円で、売上高は中長期経営計画の目標を上回るが、営業利益は60%ほどに留まる見込み。
ローカスブルーの子会社化は、この差の縮小につながるだろうか。
【ゼンリンの業績推移】2025/3は予想
決算期 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) |
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2020/3 | 597.71 | 33.00 |
2021/3 | 572.25 | 14.36 |
2022/3 | 590.53 | 26.70 |
2023/3 | 589.33 | 17.99 |
2024/3 | 613.35 | 19.81 |
2025/3 | 643.00 | 36.00 |
建設業界向けに売り込み
ローカスブルーは、3次元データをオンライン上で処理、解析できるソフトウエア「ScanX(スキャン・エックス)」を販売しており、すでに国内外の約1万を超える建設、土木、測量現場で利用されている。
同ソフトは大量の3次元点群データを自動で処理し、設計データなどと重ね合わせることで、現場での状況解析や工事の進捗管理を行うことができる。
不要なデータを取り除き、必要なデータを取り出すフィルタリングの作業時間を3分の1ほどに短縮できるほか、一般的な点群処理ソフトウエアに比べると、利用料が安く高機能パソコンなども必要ないため、初年度費用をおよそ10分の1に抑えることができるなどの特徴を持つ。
ゼンリンは、全国の顧客基盤と地図データベースを活用して、建設業界向けにScanXの活用を提案することで事業を拡大する。
CVCによる出資も
ゼンリンの中長期経営計画 「ZENRIN GROWTH PLAN 2025」では、M&Aを含む成長分野への投資を目標に掲げているが、現中長期経営計画期間中に適時開示した案件はない。
同社の沿革によると、今回のローカスブルーの子会社化は2017年のマーケティングソリューション事業を手がける大東マーケティングソリューションズ以来、7年ぶりとなる。
一方、同社は2021年にCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のゼンリンフューチャーパートナーズ(東京都千代田区)を設立。
同年に移動情報サービスの開発支援などを手がけるレイ・フロンティア(東京都台東区)に出資したのを手始めにスタートアップなどへの投資を行い、2024年1月には宇宙ビッグデータを活用した土地評価サービスを行っている天地人(東京都中央区)に出資している。
年 | ゼンリンの2010年以降の主なM&A |
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2010 | 地図データの入力業務を委託している沖縄インターマップを子会社化 |
2014 | ダイレクトメール発送代行などのセプテーニ・ダイレクトマーケティングを子会社化 |
2016 | 位置情報マーケティングのゼンリンジオインテリジェンスを子会社化 |
2016 | 車載ソフトウェア開発の米 Abalta Technologiesを子会社化 |
2017 | マーケティングソリューション事業の大東マーケティングソリューションズを子会社化 |
2024 | 建設、土木、測量現場向けのソフトウエアを手がけるローカスブルーを子会社化 |
文:M&A Online