ストライク<6196>は9月18日、VC(ベンチャーキャピタル)の集積拠点「Tokyo Venture Capital Hub」(東京都港区)でスタートアップ企業と事業会社の提携促進を目的としたイベント「第29回 Conference of S venture Lab.」を開いた。法律事務所ZeLo・外国法共同事業との共催で「新産業創出とルールメイキング」をテーマにしたトークセッションやピッチ、名刺交換会などで交流を深めた。オンラインを含めて100人以上が参加した。

規制改革に挑むメリット、イノベーションへの布石

トークセッションでは法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士の島内洋人氏、山田真由葉氏と、内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 参事官補佐 安井隆紀氏、難波直樹氏が登壇した。革新的な産業・ビジネスをつくるうえで、法整備が十分に追いついていないときに必要となるルールメイキングの制度、サンドボックス制度について語り合った。

M&A Online

(画像=トークセッションに聞き入る参加者、「M&A Online」より引用)

セッションは、ハードローやソフトローといった規制の種類の説明から始まった。「新しいことをするときに落とし穴になりうるのが規制」(山田氏)だが、規制改革にルール作りから参画すると企業規模に関係なく「ファーストムーバー」になれる可能性があり、他社が手出しできない部分に迅速に参入できるため、「かなりのアドバンテージ」(島内氏)があるという。

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(画像=トークセッションで規制のサンドボックス制度について語る法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士の島内洋人氏(右側)と山田真由葉氏(左側)、「M&A Online」より引用)

新しいビジネスのスキームを実装する場合、抵触する可能性のある法令を特定し、規制改革に取り組む必要が出てくる。こうしたシーンで必要になるのが、規制のサンドボックス制度だ。制度利用した際には、内閣官房が、関係省庁との調整役や事業者の伴走支援を担ってくれる。

規制のサンドボックス制度とは?

規制のサンドボックス制度とは、安井氏によると、「革新的なアイデアを民間側で実証、そのデータを官庁側が確認し、社会的メリットを確認した上で立法事実として生成、制度改革・規制改革につなげていく仕組み」だ。臨床試験を行い、安全性を確認する製薬業界の治験の考え方と類似しているという。これまでに31計画、150社が利用し、法改正にもつながってきた。日本のサンドボックス制度はイギリスを手本に作られたものだが、金融分野のみの適用に限られる現地と違い、日本はあらゆるものに適応可能という特徴がある。

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(画像=内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 参事官補佐の安井隆紀氏(左側)と難波 直樹氏(右側)、「M&A Online」より引用)

セッションでは、規制のサンドボックス制度により実現に結びついた次の3つの事例が挙げられた。旧来の法制では電動機付き自転車に該当していた電動キックボードを大学構内で実証実験を行い、公道で利用できるように規制緩和に結び付けた例や、不正な銀行口座の開設防止のために3事業者が連携して相互にデータや技術を持ち寄り、なりすます防止策を設けた例、自動販売機での医薬品の販売例だ。

このように、「新技術モデルの実用化により、イノベーションを促進して経済成長を促し、国際競争力の強化につなげていく点に制度の意義がある」(安井氏)。島内氏も「規制官庁の人たちと膝を突き合わせて議論することで、ルール変更に必要なモメンタムをステークホルダーに波及させることができる」と意義を確認し、セッションは閉じた。