8月の上場企業がかかわるM&Aは活況を保ち、“夏枯れ”懸念を追いやった。件数は111件と8月として最多で、金額も1兆5454億円と2020年(3兆203億円)に次ぐ高水準だった。こうした中、将来的なM&Aの端緒にもなり得る資本業務提携の動きはどうだったのか。

セブン銀行に伊藤忠が出資へ

セブン銀行<8410>は8月半ば、伊藤忠商事と資本業務提携に向けた協議に入ることで合意したと発表した。伊藤忠による出資額や比率は今後詰めるが、幅広い金融分野で協業を検討する。

その具体策の一つとして伊藤忠傘下のコンビニのファミリーマートにセブン銀行のATM(現金自動預払機)を導入することを模索するとみられている。

セブン&アイ・ホールディングスがコンビニ事業への集中の一環として6月に、セブン銀行の持ち株比率を40%未満に引き下げ、連結子会社から外す方針を発表。これを受け、伊藤忠が株式の譲渡先候補として取りざたされていた。

セブン銀行は「セブン‐イレブン」の店舗を中心に商業施設や空港・駅など全国に2万8000台以上のATMを展開。従来の現金入出金機能に加え、本人確認書類読み取り機能や顔認証機能などを備えた新型ATMの配備を完了している。

現在、伊藤忠傘下のファミリーマートには都市銀行や地方銀行などが設立したイーネット(東京都中央区)や、ゆうちょ銀行のATMを設置しており、提携を機にセブン銀行に切り替える方向で検討が進められる見通しだ。

SBI、東北銀行と連携へ

銀行関連ではもう一つ、注目される動きがあった。SBIホールディングスと東北銀行の資本業務提携だ。

SBIは東北銀行の株式2.95%を取得し、東北銀行もSBI株式を1億円を上限に取得する。SBIによる地銀への出資は3年ぶりで、島根銀行、福島銀行、大光銀行などに続く10行目となる。

SBIは傘下のSBI新生銀行(旧日本長期信用銀行)を中核とする「第4のメガバンク」構想を掲げ、その一翼を担うのが地銀連合の取り組み。

東北銀行は盛岡市に本店を置く。同行は2022年、荘内銀行(山形県鶴岡市)、北都銀行(秋田市)を傘下に置くフィデアホールディングスとの経営統合で合意したものの、これを撤回したことがある。

SBI新生銀行は7月末、懸案だった公的資金の残額約2300億円を完済。年内再上場に向けて動き出している。

ひとまいる、ミクリードを持ち分法会社に

7月1日付でカクヤスグループから社名変更した「ひとまいる」は業務用食材卸を手がけるミクリードの株式23.67%を取得することを決めた。取得額は8億8100万円。酒類以外の食材の取り扱いを増やし、飲食店の幅広いニーズにこたえるのが狙い。

M&A Online
(画像=ひとまいるが展開する酒類販売店「カクヤス」、「M&A Online」より引用)

クラダシは、日本郵政傘下の日本郵便から第三者割当増資引き受けを通じて10.2%の出資を得た。郵便局ネットワークとの連携を進め、主力とするフードロス削減事業の全国的な拡大につなげる。

自動車用樹脂部品メーカーのイクヨは、ステーブルコイン(暗号資産)を活用したBtoB(事業者間)越境決済インフラ事業を手がける米国Galactic Holdings(テキサス州)の第三者割当増資3億円を引き受け、2.15%を出資する。

イクヨはステーブルコイン関連を新規事業の柱の一つに位置付けており、Galacticとの協業を推し進める。