村上世彰氏の長女で、投資家の野村絢氏が実質的オーナーとされる旧村上ファンド系投資会社が議決権比率33.3%まで株式を買い増すとフジ・メディア・ホールディングスに通達したことが明らかになった、巳之助は、この一番でどちらの肩も持たない。フジテレビも応援しない。旧村上ファンド系も応援しない。「行事」 巳之助として、ただ土俵を整え、勝負の中身だけを見るよ。
「行事」巳之助が最初に思うのは、今回の争点は単なる株の取り合いではないことだ。フジ・メディアHDが「普通の上場企業としての経営」を示せるのか、それとも「放送法に守られた特別な存在」で居続けるのか。一方、旧村上ファンド系グループは、かつての劇場型アクティビストとは明らかに違う。最近の彼らは、数字と論理で株主が腹落ちする形を作ってくる。ここが最大の変化だ。
なぜ今、この話なのか?年末というタイミングは偶然ではない。株主の視線は「今年」から「来年」に切り替わる。この局面で改革の論点を提示できた側が、来年の主導権を握る。これは短期決戦ではない。来たる大相撲の前哨戦だ。
■三番勝負その一:「経営」を見せられるか
旧村上ファンド系は「経営を変えろ」とは言わない。彼らが突きつけるのは「なぜこの資本構成なのか」「なぜこの利益率なのか」という説明責任だ。フジ側が「放送局だから」「公共性があるから」という言葉に逃げた瞬間、この一番は落とす。経営としての言語で語れるかどうか。「行事」巳之助はここを最初に見る。
■三番勝負その二:「利益構造」は正直か?
フジ・メディアHDの直近決算を見ると、メディア事業の利益率は民放キー局の中でも高いとは言えない。不動産事業は安定収益を生んでいるが、それが本業の緊張感を緩めてきた側面もある。フジ側は、すでに一定の説明は始めている。だが、同業他社と並べた時に「なぜ低いか」を自ら語れなければ、この一番も厳しい。
■三番勝負その三:「世論と株主」をどう味方につけるか
旧村上ファンド系は、世論の使い方が格段にうまい。感情ではなく「納得」を積み重ねる劇場型。これはフジにとって明確な脅威だ。フジが内向きの説明で終われば、自然と外の声はアクティビスト側に傾く。この一番は、経営そのものではなく「伝え方」の勝負になるはずだ。
株価は、3,591円(12月15日終値)。PBRは約0.8倍。資産価値と改革余地を考えれば、株主から見た是正余地はまだ残る。巳之助の見立てでは、改革の道筋が具体化すれば4,000円前後までは評価の余地がある。ただし、これは「物語」ではなく「実行」が伴った場合に限るが。
この一戦は、どちらが嫌いかで見るものじゃない。どちらがより納得できる経営を示すかを見る勝負だ。だが、株主にとってはそんな事情はまったく関係ない。実はこの勝負、影では「フジ」「旧村上」「株主」の三つ巴の戦いというのが本質なんだよ。巳之助は「勝負は平和理に終わってほしい」と「日本の株式の歴史に残る名勝負を頼みます」で少し迷うけど。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。