「毎月3万円ずつ貯金をしても、老後資金なんて貯まらないのではないか」
「投資を始めたいけれど、実際にどれくらい増えるのかイメージが湧かない」
資産形成において、味方にすべき最大の武器は「複利」です。あのアインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだこの仕組みを理解し、時間を味方につけることで、私たちの資産は雪だるま式に増えていく可能性があります。
この記事では、単なる用語解説ではなく、具体的な数字を用いた「複利シミュレーション」を通して、積立投資の威力を解説します。20代から始めた場合と40代から始めた場合の違いや、預金と投資の差など、パターン別のシミュレーション結果もご用意しました。
現実的な資産形成のロードマップとして、ぜひ参考にしてください。
単利と複利はどう違う?
資産運用における利益の受け取り方には、「単利」と「複利」の2種類があります。どちらを選ぶかによって、将来の資産額には驚くほど大きな差が生まれます。
まずは、この2つの基本的な違いと、なぜ複利が資産形成に有利なのか、そのメカニズムを解説します。
単利と複利の違い
一言で言えば、利益の増え方が「足し算」か「掛け算」かの違いです。
・単利:預けた「元本」に対してのみ利息がつく仕組み。
・複利:元本と、過去についた「利息」を合わせた金額に対して利息がつく仕組み。
例えば、100万円を年利5%で運用する場合を考えてみましょう。
「単利」の場合、毎年受け取れる利息は常に5万円(100万円×5%)です。10年経っても20年経っても、1年あたりの利益は変わりません。グラフにすると、直線的に増えていきます。
一方「複利」の場合、1年目の利息5万円を元本に組み込みます。2年目は105万円に対して5%がかかるため、利息は5万2,500円になります。
このように「利息が利息を生む」サイクルが繰り返されることで、利益額は年々増加し、グラフは放物線を描いて急上昇していきます。
時間が経過すればするほど、この曲線の角度は急になり、資産の増加スピードが加速していくのです。
複利計算の公式と積立の仕組み
複利の根本的なメカニズムを理解するために、まずは「最初にまとまったお金(元本)を預けた場合」がどう増えるかを示す基本公式をご覧ください。少し数学的な話になりますが、仕組みを知る参考になります。
FV=PV×(1+r)^n
FV:将来価値
PV:元本
r:年利
n:運用年数
この数式で重要なのは、運用年数が指数になっている点です。足し算や掛け算ではなく、累乗で計算されるため、期間が長くなればなるほど、将来の資産額に対して爆発的な影響を与えます。
※積立投資の場合の注意点
上記の公式はあくまで複利の「基本原理」を示すものです。毎月一定額を追加していく「積立投資」のシミュレーションでは、毎月の積立金それぞれに対して異なる運用期間(乗数)が適用されるため、実際の計算式はより複雑になります。
しかし、「期間が長くなるほど曲線を描いて雪だるま式に増える」という複利の根本的な性質は積立投資でも全く同じです。積立シミュレーションにおいて最も重要な要素も、やはり「どれだけ長く運用し続けられるか」という「時間」なのです。
積立投資シミュレーション【パターン別】
ここからは、実際に具体的な数字を使ってシミュレーションを行います。
「いつ始めるか」「何で運用するか」「いくら必要か」
これら条件の違いによって、将来の資産額にどのような差が生まれるのかを見ていきましょう。
※計算の簡略化のため、税金や手数料は考慮せず、年次は1年複利として計算しています。
ケース1「期間の差」:20代から開始 vs 40代から開始
まずは「時間」の価値を確認します。同じ「毎月3万円」を「年利5%」で運用し、60歳まで積み立てた場合、開始年齢によってどれだけの差が出るのでしょうか。
【シミュレーション条件】
- 毎月の積立額:3万円
- 想定利回り:年利5%
- ゴール:60歳
【結果比較】
| 開始年齢 | 積立期間 | 元本合計 | 運用収益 | 60歳時点の資産額 |
|---|---|---|---|---|
| 40歳から | 20年間 | 720万円 | 約513万円 | 約1,233万円 |
| 30歳から | 30年間 | 1,080万円 | 約1,416万円 | 約2,496万円 |
| 20歳から | 40年間 | 1,440万円 | 約3,130万円 | 約4,570万円 |
この結果から分かる残酷な事実は、遅く始めて元本を倍にしても、早く始めた人には勝てないということです。
20歳から始めた人は、元本1,440万円に対し、利益だけで3,000万円以上を生み出しています。運用期間が2倍(20年→40年)になると、最終的な資産額は2倍どころか、約3.7倍に膨れ上がっています。これが複利における時間の魔法です。
ケース2「利回りの差」:預金(0.2%) vs 投資信託(3%〜7%)
次に「利回り(金利)」の差を見てみましょう。
安全性重視で銀行預金だけにお金を置いている場合と、リスクを取って投資信託などで運用した場合の比較です。
【シミュレーション条件】
- 毎月の積立額:5万円
- 積立期間:30年間
- 元本合計:1,800万円
【結果比較】
| 運用先(想定利回り) | 運用収益 | 30年後の資産額 |
|---|---|---|
| 普通預金(0.2%) | 約55万円 | 約1,855万円 |
| 投資信託(3%) | 約1,113万円 | 約2,913万円 |
| 投資信託(5%) | 約2,361万円 | 約4,161万円 |
| 投資信託(7%) | 約4,297万円 | 約6,097万円 |
金利上昇により、30年間預金を続ければ約55万円の利息がつくようになりました。かつての「ほぼゼロ金利」時代に比べればマシですが、それでも投資信託のリターンと比較すると大きな差があります。
年利5%で運用できた場合、運用益は2,000万円を超え、元本以上の利益を生み出します。もちろん投資にはリスクがありますが、長期的な視点で見れば、この「利回りの差」が将来のゆとりを左右する決定的な要因となります。
ケース3「目標金額からの逆算」:老後2000万円作るには?
最後に、ゴールから逆算してみましょう。
「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、65歳までに2,000万円を作るためには、今から毎月いくら積み立てれば良いのでしょうか。ここでは現実的なラインとして「年利4%」で運用できた場合を想定します。
【目標:65歳までに2,000万円(年利4%運用)】
| 現在の年齢 | 積立期間 | 毎月の必要積立額 |
|---|---|---|
| 25歳 | 40年間 | 約1.7万円 |
| 35歳 | 30年間 | 約2.9万円 |
| 45歳 | 20年間 | 約5.4万円 |
| 55歳 | 10年間 | 約13.5万円 |
早めに気づいて行動すれば、月々2万円以下の負担で2,000万円を作ることは十分に可能です。しかし、着手が遅れるほど毎月の負担額は跳ね上がります。55歳から慌てて準備しようとすると、月13万円以上という厳しい貯蓄が必要になります。
このシミュレーションからも、「少額でもいいから、今すぐ始めること」の重要性がお分かりいただけるはずです。
資産が2倍になる期間は? 便利な「72の法則」
シミュレーションサイトを使わなくても、もっと簡単に「自分のお金がいつ倍になるか」を知る方法があります。それが「72の法則」です。
知っておくと、金融商品のパンフレットを見たときなどに、瞬時にその商品の実力を判断できるようになります。
暗算でできる将来予測
計算式は非常にシンプルです。
72 ÷ 金利(%) = 資産が2倍になるまでにかかる年数
例えば、金利ごとの「資産倍増期間」は以下のようになります。
・金利 0.2%(普通預金):72 ÷ 0.2 = 360年
・金利 0.5%(定期預金等):72 ÷ 0.5 = 144年
・金利 3%(債券・安定株等):72 ÷ 3 = 24年
・金利 5%(株式投資信託等):72 ÷ 5 = 14.4年
・金利 7%(積極運用):72 ÷ 7 = 10.3年
銀行に預けていてはお金が2倍になる頃には人類の歴史が変わっていますが、年利5〜7%程度で運用できれば、10年〜15年で資産が倍になる計算です。「72」という数字さえ覚えておけば、電卓なしでもおおよその将来予測が可能になります。
シミュレーション通りにいかない? 複利効果を最大化するコツ
ここまでのシミュレーションは、あくまで計算上の結果です。現実の相場は上がったり下がったりを繰り返しますし、税金や手数料も発生します。
机上の空論で終わらせず、シミュレーション結果を現実に近づけるために、押さえておくべき3つのコツをお伝えします。
利益を再投資することの重要性
複利効果の源泉は「利息が利息を生む」ことにあります。そのため、出た利益を受け取って使ってしまっては意味がありません。
例えば、投資信託で分配金が出た場合、「受取型」ではなく「再投資型」を選択しましょう。
手元に現金が入ると嬉しくなるものですが、複利のエンジンを止めないためには、利益を元本に組み込み続けることが絶対条件です。雪だるまを大きくするためには、雪(利益)を削らずに転がし続ける必要があります。
税金を考慮する(NISA・iDeCoの活用)
通常の投資では、得られた利益に対して20.315%の税金がかかります。
100万円の利益が出ても、手元に残るのは約80万円。この20%のマイナスは、複利効果を大きく阻害します。
そこで活用したいのが、国が用意している非課税制度です。
・NISA:成長投資枠とつみたて投資枠を併用でき、運用益が恒久的に非課税になります。
・iDeCo:運用益が非課税になるだけでなく、掛金が全額所得控除になり、節税効果も期待できます。
これらの制度を使えば、本来引かれるはずの税金分もそのまま再投資に回せるため、複利効果を最大化(=シミュレーション結果に近づける)することができます。
長期・分散・積立を忘れない
シミュレーションでは毎年一定の「年利5%」で計算しましたが、実際には「今年は+20%、翌年は-10%」といった変動を繰り返しながら、平均して5%程度に収束していきます。
暴落が起きたときに、「もうダメだ」と売却してしまえば、そこで複利効果は途絶えます。
・長期:一時的な下落に一喜一憂せず、10年、20年と持ち続ける。
・分散:世界中の株式や債券に分けて投資し、リスクを抑える。
・積立:毎月定額を買い付け、購入単価を平準化する(ドルコスト平均法)。
この「長期・分散・積立」の原則を守り続けることこそが、シミュレーション通りの成果を手にするための唯一の近道です。
まとめ
複利シミュレーションの結果を見て、どのような感想を持たれましたか?「毎月3万円なんて無理」と思われた方もいるかもしれませんし、「意外と自分にもできそう」と感じた方もいるでしょう。大切なのは、金額の多寡ではなく時間を味方につけることです。
最初から大きな金額を投資する必要はありません。ネット証券であれば、月々100円や1,000円からでも積立投資は可能です。
「いつか余裕ができたら」と先送りにしている今の時間が、将来受け取れるはずだった数百万円、数千万円という複利の果実を失わせているかもしれません。
まずは、金融庁のサイトや証券会社のツールを使って、ご自身の年齢と予算でシミュレーションをしてみてください。
(提供:ACNコラム)