この記事は2026年9月18日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「韓国における外国人労働者政策の展開と課題」を一部編集し、転載したものです。
(法務部「出入国・外国人政策統計年報」ほか)
韓国では、少子高齢化と生産年齢人口の減少を背景に、外国人労働者の存在感が急速に高まっている。これまで外国人労働者は、製造業や建設業、農畜産業、漁業など、韓国人労働者の確保が難しい分野で不足する労働力を補完してきた。しかし近年では、地域経済や産業基盤を維持する重要な担い手になっている。
外国人労働者の受け入れが本格化するのが、2004年8月の「外国人勤労者の雇用などに関する法律」の施行だ。「外国人産業技術研修生制度」から「外国人雇用許可制」に転換され、非熟練外国人労働者を正式な労働者として受け入れる制度基盤が整備された。
その後、韓国の外国人労働者受け入れ政策は、単純・非熟練労働者に加え、専門・高度人材にも対象を広げた。11年1月には、科学や経済、体育などの分野で優れた能力を有し、韓国の国益に貢献するとされた外国人に複数国籍を認める改正国籍法が全面施行され、20年6月から対象範囲も拡大した。
また韓国政府は、投資や就労、研究、留学から永住・帰化に至るまで、優秀な外国人材の確保と定着を支援する制度を整備している。主なものに、投資移民制度や電子ビザ、外国人熟練技能人材点数制ビザ、優秀人材点数制居住ビザなどがある。さらに、海外研究者を誘致する「BRAIN POOL」、外国人留学生の拡大を目指す「Study Korea 300K Project」、科学・技術分野の優秀人材を対象に永住・帰化手続きを短縮するファストトラック制度も実施されている。
その結果、韓国の在留外国人数は144万5,000人(12年)から278万3,000人(25年)に増加し、総人口の約5.4%を占めるまでになった。外国人就業者数も、同期間に69万8,000人から110万9,000人に増え、全就業者の約3.9%を占める(図表)。ただ、韓国政府の外国人労働者の受け入れ政策の拡大には、制度上の課題も残されている。
第一に、外国人労働者が労働環境の厳しい分野に集中し、長時間労働や賃金未払い、労働災害などの問題が指摘されている。第二に、雇用許可制では勤務先変更に制約があり、不当な待遇を受けても職場を離れにくいなど、人権上の問題がある。第三に、雇用許可制は再入国のために一定期間出国する「クーリング期間」が設けられ、労働者に経済的・時間的負担を与えるほか、企業側にも熟練人材の空白や流出リスクをもたらす。第四に、外国人労働者に占める専門・高度人材の割合が低く、その確保と長期定着が課題となっている。
従って、韓国における今後の外国人労働者受け入れ政策はより総合的な外国人労働・人材政策に発展させる必要がある。具体的には、労働者の権利保護や勤務先変更制度の改善、クーリング期間に伴う負担軽減、専門・熟練人材の比率の拡大、長期定着と社会統合を視野に入れる必要があろう。
ニッセイ基礎研究所 上席研究員/亜細亜大学 都市創造学部 特任准教授/金 明中
週刊金融財政事情 2026年10月6日号