管理委託料とは、賃貸住宅の管理業務を委託する対価として、家賃と共益費に対する一定の割合で設定される報酬です。同じ料率でも含まれる業務の範囲は会社ごとに異なり、報酬とは別に請求される費用もあります。委託料の数字だけを並べても比較にならないため、業務範囲と別途費用まで含めて確認することが判断の基本になります。
賃貸経営を管理会社に任せるとき、多くの人がまず気にするのが委託料です。ところが、料率が低い会社を選んだのに、募集や修繕のたびに別料金が発生して結局高くついた、という話は珍しくありません。本記事では、管理委託料の決まり方、法律が管理会社に義務づけている業務、選ぶ際の7つの基準、変更の手順までを紹介します。
- 管理委託料は、家賃と共益費に対する割合で設定されるのが一般的である。
- 国土交通省の重要事項説明書には、報酬とは別に「報酬に含まれない費用」を記載する欄がある。
- 管理戸数200戸以上の事業者には、国土交通大臣への登録が義務づけられている。
- 管理会社は委託者に対し、少なくとも年1回以上の報告義務を負う。
- 料率の低さだけで選ぶと、別途費用と空室期間の長期化で差額を失う。
目次
管理委託料はどのように決まるのか
管理委託料は、家賃と共益費に対する割合として設定されるのが一般的です。
報酬は書面で示される
管理会社は、管理受託契約を結ぶ前に、報酬と具体的な管理業務の内容や実施方法について、書面を交付して説明しなければなりません(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 管理業者の業務」、2026年9月時点)。
国土交通省が公表する管理受託契約の重要事項説明書の様式では、報酬の欄が「家賃及び共益費(管理費)の○%」という形式になっています(出典:国土交通省「管理受託契約 重要事項説明書」、2026年9月時点)。委託料が定額ではなく割合で示されるのは、この様式に沿った実務が定着しているためです。
報酬に含まれない費用が別にある
見落とされやすいのが、報酬とは別に請求される費用の存在です。
同じ重要事項説明書には、「報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、通常必要とするもの」を記載する欄が設けられています。つまり、別途費用があること自体は制度上の前提であり、その内容を契約前に確認できる仕組みになっています。
ここで注意したいのは、料率が同じでも、この欄に書かれる内容は会社ごとに異なるという点です。委託料を比べるときは、料率ではなく、この欄まで含めて比較してください。
公表された相場は存在しない
委託料の水準について、公的な統計は公表されていません。
インターネット上には目安とされる数字が並びますが、根拠となる調査の出所はまちまちです。参考にするとしても、最終的な判断は自分の物件について提示された条件をもとに行ってください。周辺で同種の物件を扱う複数の会社から見積りを取れば、その地域における実勢は把握できます。
業務の分担も書面で確認できる
重要事項説明書の様式には、点検、清掃、修繕の見積り・手配、家賃の徴収、未収金の督促、敷金の管理、月次報告書の作成といった業務を一つずつ挙げ、どちらが担当するかを示す欄があります。
口頭の説明では「一通り任せられます」と聞こえても、この一覧を見れば範囲は明確になります。契約前に必ず受け取ってください。
そもそも「賃貸住宅管理業」とは何を指すのか
法律上の賃貸住宅管理業は、賃貸住宅の維持保全を行う業務を含むものに限られます。
金銭の管理だけでは賃貸住宅管理業に当たらない
国土交通省は、賃貸住宅管理業を「賃貸住宅の維持保全を行う業務」、または「維持保全を行う業務」と「家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務」を併せて実施する業務と定義しています。金銭の管理のみを行う事業は、法律上の賃貸住宅管理業には該当しません(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 管理業者の業務」、2026年9月時点)。
この違いは実務に直結します。集金代行だけを請け負う会社は、後述する登録や報告の義務の対象外になり得るためです。
管理戸数200戸以上には登録義務がある
賃貸住宅管理業を営む事業者のうち、管理戸数が200戸以上の場合は、国土交通大臣への登録が義務づけられています。自己所有物件の管理は戸数に含みません(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法に基づく賃貸住宅管理業登録申請について」、2026年9月時点)。
なお、200戸未満の事業者が登録できないわけではありません。任意で登録している会社もあるため、登録の有無だけで規模を判断することはできません。
委託の方式を整理する
賃貸経営における委託の方式は、業務の範囲と法律上の位置づけが異なります。
| 方式 | 主な業務範囲 | オーナーの手間 | 空室時の家賃収入 |
|---|---|---|---|
| 自主管理 | 募集から入居者対応まで自分で行う | 大きい | 途絶える |
| 集金代行のみ | 家賃の集金と送金が中心 | 中程度 | 途絶える |
| 管理委託 | 維持保全と金銭管理を委託 | 小さい | 途絶える |
| サブリース | 一括借り上げのうえ転貸 | 小さい | 契約に基づき支払われる |
一方、サブリースは管理の委託ではなく賃貸借契約です。賃料が見直される場合があるなど、確認すべき点が管理委託とは異なります(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 適正化のための措置」、2026年9月時点)。
法律が管理会社に義務づけていること
登録を受けた管理会社には、配置、説明、分別管理、報告などの義務が課されています。
業務管理者の配置
管理会社は、営業所または事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識と経験を持つ業務管理者を1名以上配置しなければなりません(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 業務管理者」、2026年9月時点)。担当者個人の力量に加えて、営業所としての体制が整っているかを見る手がかりになります。
契約前の説明と契約時の書面交付
契約前の重要事項説明に加えて、契約を締結したときには、確定した契約条件を記載した書面を改めて交付する義務があります。締結前の重要事項説明書とは別の書面です。
財産の分別管理
家賃や敷金など入居者から受領する金銭は、会社自身の財産と分けて管理しなければなりません。専用の口座を別に開設し、どの契約に基づく金銭かを帳簿上で直ちに判別できる状態にすることが求められます。
委託者への定期報告
管理会社は、少なくとも年1回以上の頻度で、オーナーに報告する義務を負います。報告の対象は、家賃等の金銭収受状況や維持保全の実施状況といった管理業務の実施状況と、入居者からの苦情の発生状況および対応状況です。
もっとも、年1回は法律上の最低限です。月次で収支や入居状況の報告を受けたい場合は、その頻度を管理受託契約に定めておく必要があります。
帳簿の備付けと標識の掲示
管理会社は、営業所または事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに契約年月日などを記載して保存しなければなりません。あわせて、公衆の見やすい場所に標識を掲げる義務があります。
標識には、登録番号、登録年月日、登録の有効期間、商号または名称、主たる営業所の所在地が記載されます。訪問した際に確認できる、数少ない客観的な情報です。
失敗しない管理会社の選び方7つの基準
料率、業務範囲、体制、実績の4つの観点から、次の7項目を確認します。
- 報酬に含まれない費用の一覧:重要事項説明書の該当欄に何が書かれているかを確認します。募集時の広告費、更新事務手数料、修繕の手配料などが典型例です。
- 業務の分担表:点検、清掃、督促、報告といった業務ごとに、どちらが担当するかを一覧で確認します。
- 賃貸住宅管理業の登録:登録を受けている会社は、営業所に標識を掲げる義務があります。標識には登録番号、登録年月日、登録の有効期間が記載されています。
- 報告の頻度と内容:法律上の下限は年1回です。希望する頻度と項目を契約に盛り込めるかを確認します。
- 入居者募集の力:掲載する媒体、自社での客付けの有無、繁忙期の体制を聞きます。空室期間の長さは委託料の差額を容易に上回ります。
- 連絡の取りやすさ:設備の故障や騒音の苦情は時間を選びません。夜間や休日の対応窓口があるかを確認します。
- 担当者と物件エリアの理解:周辺の家賃相場や入居者層について具体的に話せるかどうかで、客付けの実力はある程度わかります。
もちろん、すべてを満たす会社は多くありません。物件の規模と自分がかけられる時間を踏まえて、優先順位をつけて判断してください。
安さだけで選んではいけない理由
料率の差は、別途費用と空室期間によって簡単に逆転します。
別途費用で総額が変わる
報酬に含まれない費用が多い契約では、入退去や修繕のたびに支出が発生します。料率が低くても、年間の総額では高くなる場合があります。
空室期間の差は委託料の差より大きい
委託料は家賃に対する割合であるのに対し、空室になれば家賃そのものが入りません。客付けの力が弱い会社を料率の低さで選ぶと、失うのは差額ではなく家賃の全額です。
対応の遅れは退去につながる
反対に、費用がかからないように見えて損失が大きいのが、入居者対応の遅れです。設備の不具合が放置されれば更新時に退去され、原状回復と募集の費用が発生します。
管理会社を変更する手順
解約の予告期間を確認し、引き継ぎの範囲を決めてから進めます。
1. 現在の契約内容を確認する
管理受託契約書で、解約の申し入れに必要な予告期間と、違約金の定めの有無を確認します。
2. 新しい管理会社を選定する
前章の7項目で比較し、引き継ぎに対応できるかを確認します。
3. 引き継ぎの範囲を確定する
入居者名簿、賃貸借契約書、敷金、鍵、修繕履歴、滞納の状況を引き継ぎます。敷金は預り金として分別管理されているため、金額と保管状況を書面で確認してください。
4. 入居者に通知する
家賃の振込先や連絡先が変わるため、入居者への案内が必要です。通知の主体と方法を、新旧の管理会社と事前に決めておきます。
なお、変更の時期は繁忙期を避けるのが無難です。1月から3月は募集が集中し、引き継ぎの手続きと重なると対応が遅れやすくなります。
FAQ:管理会社の選び方に関するよくある質問
管理委託の実務で問い合わせの多い項目をまとめました。
Q.管理会社が登録を受けているか確認できますか
確認できます。登録を受けた事業者は、営業所ごとに公衆の見やすい場所へ標識を掲げる義務があります。標識には登録番号、登録年月日、登録の有効期間、商号、主たる営業所の所在地が記載されています。
Q.管理会社は業務を他社に再委託できますか
管理業務の全部を他社へ再委託することは禁止されています。名義貸しの禁止や秘密を守る義務とあわせて、賃貸住宅管理業者に課される義務のひとつです。
Q.重要事項説明はオンラインでも受けられますか
受けられます。管理受託契約の締結前の重要事項説明は、オンラインでの実施と電子書面の交付が認められています。書面を手元で確認しながら説明を受けられる状態にしておくことが前提です。
Q.管理会社の担当者が名乗る証明書はありますか
あります。賃貸住宅管理業者は、業務に従事する従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させる義務があります。訪問を受けた際に提示を求められます。
Q.管理委託料に消費税はかかりますか
かかります。管理委託料は事業者が提供する役務の対価であるため、課税取引にあたります。見積りを比較する際は、税込か税別かをそろえて確認してください。
まとめ:管理会社は「料率」ではなく「業務範囲と別途費用」で選ぶ
管理委託料は家賃と共益費に対する割合で示されますが、その数字だけでは会社の良し悪しは判断できません。同じ料率でも、含まれる業務と別途請求される費用は会社ごとに異なるためです。法律は、契約前に報酬と業務内容を書面で説明することを管理会社に義務づけています。この書面こそが、比較のための共通のものさしになります。まずは、候補となる管理会社から重要事項説明書を受け取り、報酬に含まれない費用の欄を確認するところから始めてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。制度の内容は変更される場合があります。
(提供:ACNコラム)