2010年に創業し、「アウトソーシング事業」「メディアプラットフォーム事業」「エネルギー事業」の3事業を展開する株式会社コレックホールディングス。代表取締役社長の栗林憲介氏は、大学受験の挫折後、株式会社サイバーエージェントの藤田晋社長の著書に触発され、26歳で起業した。
「挫折した人が奮起できる場をつくりたい」、そして社員とその家族を幸せにしたいとの思いから、創業当初から上場を目指したという。独自の「営業科学」を武器に、今後は住生活のインフラ企業を目指す同社の軌跡と今後の展望について、栗林氏に聞いた。
企業サイト:https://www.correc.co.jp/
反骨心を原点に起業
── 起業の原点についてうかがいます。藤田晋氏の書籍「渋谷ではたらく社長の告白」を読み26歳で創業していますが、その際に最も大切にしたこと、藤田氏の著書のどのような部分に心を動かされたか、教えてください。
栗林氏(以下、敬称略) 一番大切にしていたのは、自分のような境遇の人のための「場をつくりたい」という気持ちです。私は地元ではエリート高校と呼ばれる学校に通っていましたが、大学受験に失敗し、周りが超一流大学や企業に進む中で人生に迷っていました。
一流企業への就職も厳しいと感じ、「自分で会社をつくるしかない」という思いで過ごしていました。そんな中で株式会社サイバーエージェントの藤田さんの本に出会い、自分のような人間でも人生のメインストリームに乗れるきっかけになるのではないかと感じたのです。
挫折した人がもう一度奮起できるような場をつくりたい、その強い思いが、私のすべての原点でした。
── ある種の悔しさや反骨心があったということでしょうか?
栗林 そうですね。また、私の父は一部上場企業を定年まで勤め上げ、それを尊敬しています。父のおかげで何不自由なく、安心して暮らせる環境で育ててもらいました。自分もそのような環境を社員に提供したいという思いもありました。
── 書籍に出会ったきっかけは、もともと藤田氏がお好きだったのですか? それとも、ビジネス書を多く読まれる中で出会ったのでしょうか?
栗林 人生をどう再スタートさせようかと四六時中、考えていた時期でした。当時、プロ野球選手を目指して上京し挫折した経験を持つ友人、そして双子の弟と、3人で暮らしていたのです。
このままではいけないと焦りもあった中で、「社長になるのが事態を変える方法ではないか」という話になり、本を読み漁るようになりました。その中で藤田さんの本に出会いました。
── 最初の事業は営業代行から始められたのですね。
栗林 はい。藤田さんの本に加えて、別の起業家の方が書いた本にも「営業代行」について書かれていたんです。当時の私たち3人はビジネスの知識も起業資金もありませんでした。
「どうやって起業するのか」と模索していたときに、彼らが営業代行から始めたと知り、私たちも同じ事業から始めることにしました。コレックホールディングスとは別に、学生起業という形で始めたのが最初です。
上場の過程で栗林社長が感じた「必要な痛み」とは?
── その後、現在の源流となる会社へとつながり、上場まで一気に突き進んでいくことになります。
栗林 「絶対に上場する」という決意は、スタート当初からありました。サイバーエージェントのようなメガベンチャーをつくり、父のように社員とその家族が幸せになれる会社にしたいという思いが強かったからです。そのためには、上場は必須だと強く思っていました。
── スタートのタイミングから、上場を目指すことが社員の幸せにつながるという考えがあったのですね。
栗林 はい。もちろん、資金調達の手段を増やせたり、採用力を高められたりといった経営的なメリットもありましたが、それ以上に、社員の幸せを追求するためには上場が必要だと考えていました。
── 上場企業となって、ご自身や周囲からの見られ方、あるいは生活面などで変化はありましたか?
栗林 自己紹介がしやすくなったというのはありますね。コミュニケーションを取る相手が事前に調べてくださると感じるようになりました。また、社会的信頼という点では、かつて展開していた主要クライアントの営業代行事業において入札の評価点が格段に上がり、事業拡大につながっています。採用力も向上しました。
── 一方で、マイナス面はありましたか。
栗林 内部統制やコンプライアンス体制が厳しくなったことで、昔から働いてくれている社員の中には、「必要なのは理解するが、会社の雰囲気は変わってしまった」と言われることもありました。そこは経営者として、本当につらい経験でした。
── 上場準備段階では5年ほどかかったとのことですが、その間に組織文化や風土での摩擦はありましたか?
栗林 上場準備の段階で、社内の摩擦はありましたね。5年の間に途中で辞めてしまう人もいましたが、少しずつその摩擦を乗り越えて前に進めていきました。成長痛のような、必要な痛みだったと思います。
売り上げの8割を占める事業からの撤退
── 主要クライアントの営業代行事業は安定基盤だったと思いますが、そこからメディアプラットフォームの投資へ事業を転換した背景には、どのような理由があったのでしょうか?
栗林 サイバーエージェントのような企業をつくるという目標があり、藤田さんが営業代行で得たキャッシュをIT事業に投資する戦略に感銘を受けました。私たちも同様に、営業代行で得たキャッシュをIT事業、特にメディア事業に投資することで、安定的な収益基盤を築こうと考えたのです。
メディア事業は、当初は先行投資でしたが、現在は右肩上がりに成長しています。
── 上場までの8年間で、特に苦しかった時期や眠れなかった夜はありましたか?
栗林 ハードワークではありましたが、眠れないほどではありませんでした。ただ、成長スピードが早かったため、30人の壁や組織マネジメントの壁には常に直面していました。しかし、気がついたらそうした壁は壊れていたという感覚です。
企業を分割して高速で回す組織運営が、その壁を乗り越えることにつながったのかもしれません。
── 2021年の主要事業からの撤退は、売り上げの8割を占めていたため難しい決断だったと思います。その際の社長の考えを教えてください。
栗林 社員の前では決して弱音を見せないと決めました。そして、死ぬ気で事業を立て直す覚悟を持って、経営に臨みました。また、もともとその事業が永続するとは思っていませんでした。最悪の事態として会社の危機もあり得ると覚悟しつつも、まだ利益が出ている段階から動けたことが救いでした。
社員には笑顔で接し、3年間かけてその事業から徐々に撤退すると伝え、その間に新しい事業を一緒につくろうと呼びかけました。
── 当時の主力事業は価格競争が激しく、お客様からの感謝の声も届きにくい状況だったとうかがいました。
栗林 はい。しかし、その経験で培った営業力があれば、他の事業でも必ず成功できると社員を鼓舞しました。社員も、新しい事業に挑戦できるとポジティブに受け止めていた側面もあったと思います。
営業代行というビジネスモデルは、商品やサービスを変えれば継続できるものであり、そのノウハウや組織運営力は当社の強みです。
── その他、独自の強みは何でしょうか。
栗林 私たちは「営業科学」を実践しています。単なる根性論ではなく、営業の一連の流れを分解し、マニュアル化、フィードバック体制を整備しています。目標設定やKPI設定を行い、何が足りなかったのかを明確にして改善することで、再現性の高い営業を実現しています。
注力する住生活分野での事業展開と今後の展望
── 今後3年間で伸ばしたい領域についてお聞かせください。
栗林 アウトソーシング事業は、営業体制を強化することで成長の予測が立てやすいため、堅実かつ確実に伸ばしていきたい領域です。これまでクライアントの商品・サービスを広めてきたことに加え、今後は自社のストック型商材も扱うことで、安定的な収益基盤を築けるでしょう。
メディアプラットフォーム事業は、高収益体制を維持しつつ、AI時代に対応した戦略を進めます。エネルギー事業にも注力します。
── メディアプラットフォーム事業について、AI時代におけるSEOの重要性や広告収益の低下について懸念する声もありますが、どのように考えていますか?
栗林 おっしゃる通り、AI時代にはトラフィックがAI起点に移行する可能性があります。しかし、GoogleもAIでの上位表示を発表しており、SEOに準ずる動きが出てくると考えています。引き続きSEO対策は重要であり、メディアプラットフォーム事業で得たキャッシュを他の事業へ投資していく戦略です。
── コレックホールディングスの社会的な役割や、さらに注力される住生活分野での展開について教えてください。
栗林 これからは、注力している住生活分野において、さらに事業を深めていって社会を豊かにすることで貢献したいと考えています。通信回線、ウォーターサーバー、新電力、太陽光、リフォームなど、住宅に関するあらゆる商品・サービスを提供し、住宅周りの社会インフラとなる会社を目指します。
── 上場のメリットなどは、どう感じていますか?
栗林 上場すべきかと迷っている経営者の方には、「なりたい会社像が明確にあるなら、上場を目指す価値は間違いなくある」とお伝えしています。株主や市場からの厳しい目があるからこそ、「より正しく、成長し続けなきゃいけない」という良い意味での緊張感が生まれるからです。
上場準備やコンプライアンス体制を整えることは本当に大変でしたが、そのプロセスがあったからこそ、組織が大きくなっても崩れないしっかりとした土台ができました。売上高10億円規模くらいまでなら、社長個人の手腕や勢いだけでも会社を引っ張っていけるかもしれません。ただ、それ以上のスケールを目指すとなると、個人の力ではなく「組織としての仕組み」で勝負しなければ限界がきます。そうしたブレない組織の土台を作る意味でも、上場を目指すプロセスは不可欠だと感じています。
- 氏名
- 栗林憲介(くりばやし けんすけ)
- 社名
- 株式会社コレックホールディングス
- 役職
- 代表取締役社長