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(写真=PIXTA)


予想通り利上げをしなかったFOMC

28日から29日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)が行なわれ、大方の予想通り政策金利の引き上げ(利上げ)の決定は行なわれなかった。ただ、今後の経済指標次第で次回FOMCで利上げ決定が行えるように声明文で若干の変更が行なわれた箇所があった。今回の声明文の変更箇所や今後の利上げ時期の考察についてお伝えしたい。

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まず、米国経済の現状認識は「緩やかに拡大した(has been expanding moderately)」と総括した。家計支出と住宅市場の改善にも言及した一方で、企業の設備投資や純輸出は「軟調のまま(stayed soft)」だと記した。労働市場については堅調に回復しているとの認識を示した。経済認識については、大きなサプライズはなく、その他にも明確な9月の利上げ開始を示すシグナルのようなものは発せられなかった。

ただ、利上げを行う際に整うべき条件ついて、やや特筆すべき変化があった。前回6月のFOMCでは、「労働市場の改善がさらに見られた際に(when it has seen further improvement in the labor market)」だったのが、今月のFOMCでは「労働市場の改善がさらにいくぶん見られた際に(when it has seen some further improvement in the labor market)」という表現に修正された。わずかな変化にも見えるが、当然FRBは無意味に表現の変更はしない。

素直に解釈すれば、「もう少しだけ労働市場の改善が見られれば」ということで、利上げに向けてのハードルを引き下げたと考えられるだろう。市場ではこれをもって、9月利上げの可能性が高まったと見る向きが有力なようだ。実際にFOMC声明発表後に、10年債利回りはじわりと上昇し、ドル高が進んだ(グラフ参照)。

米10年債


利上げ開始はいつなのか?

では利上げ開始はいつなのだろうか?FRBが法的責務を負っているのは、(1)物価の安定(2)雇用の最大化の2点である。

(1)の物価の安定については、声明発表で「労働市場がさらに改善し、エネルギー価格の急速な下落と輸入価格の下落の一時的な影響が消えれば、インフレ率は中期的に(FRBの目標値である)2%に向かって徐々に上昇する(inflation to rise gradually toward 2 percent over the medium term as the labor market improves further and the transitory effects of earlier declines in energy and import prices dissipate)」と述べられているとおり、一時要因と労働市場の改善によってインフレ率は目標の2%に近づくと考えているようだ。

つまり、2つの責務のうち短期的により重要視しているのは労働市場の改善だということになる。

以下の表の通り、次回のFOMCは9月16日から17日にかけて開催される。それまでに発表される労働市場関連の経済指標は、(1)7月・8月分の雇用統計、(2)毎週発表される新規失業保険申請件数、(3)6月・7月分のJOLT求人労働異動調査などとなる。当然(1)の雇用統計の注目度が最も高いが、(2)(3)も普段以上に注目度が高まるとみられ、相場変動要因として意識される可能性がありそうだ。

スケジュール

現時点で筆者は、9月利上げ開始は見送られ、12月利上げ開始になる可能性が高いのではないかと考えている。

その理由の1つ目は、米国労働市場は堅調に推移しているものの、6月分の雇用統計を見る限り改善加速と言った状況にはないこと、2つ目は中国経済の鈍化という不安要素だ。

先日発表された中国のCaixin製造業景況感指数は48.2と前月から1.2ポイントの悪化となった。1.2ポイントの悪化幅は2014年8月の1.5ポイントの悪化以来約1年ぶりの大きさである。中国ビジネスを展開している日本企業の決算短信などをみても、足下の中国の景況感の減速は加速している可能性が高そうだ。

米国の対中国輸出のウェイトは全体の10%程度で、中国の景気鈍化によって大幅に米国経済が鈍化するリスクがあるとは考えにくいが、悪影響が出ることは否定できない。そうした潜在的なリスクが今後現れてくる可能性を考慮すると、FRBは9月利上げに踏み出しにくいのではないか。

そして、まだ利上げについて議論を尽くしたような印象はなく、ひとまず様子を見るというバイアスがかかりやすいとも思われる。夏場の経済指標次第という側面は大きいが、よほど強い内容でない限り9月利上げはない、そのように考えている。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部

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