世界的に人気のあるイタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリ(Ferrari)がニューヨーク証券取引所(NYSE)で株式公開(IPO)を予定している。価格レンジなどの条件の提示はまだだが、すでに申請は受理されており、10月中に上場する見込みだ。

世界的な人気もあり、IPOは人気化するという見方が強いが、世界的な株価低迷とフォルクスワーゲン(VW)不正問題による欧州自動車メーカー株安に対する懸念もある。フェラーリのIPOについて考えていく。

米環境保護局(EPA)は、9月18日に独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジン車の排ガス試験での不正を認めたと発表。VW株は発表以降で一時43%も下げ、時価総額で4兆円以上を失った。EPAはVW以外のディーゼル車の検査も始めると表明している。


フェラーリのIPO延期はありえるのか?

環境対策で日米がハイブリッドカーをメインにしているのに比べ、欧州はディーゼルエンジン車の依存度が高い。VW以外の欧州自動車メーカーの株価もディーゼルエンジンへの懸念で売られ、9月18日以降、独BMWは一時14%、独ダイムラー16%、仏PSAプジョー・シトロエン26%、仏ルノー20%安まで下げている。VWを含めた欧州自動車株の時価総額は7.5兆円も減じてしまった。

欧州自動車メーカーの一社であるフェラーリは、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の子会社で、FCAが90%の株式を保有している。残りの10%は、創業者エンツォ・フェラーリ氏の息子、ピエロ・フェラーリ副会長が10%保有している。

VWショック前のフェラーリの企業価値は、100億ユーロ(約1兆3500億円)と見られていた。今回のIPOは、FCAによるフェラーリのスピンオフ(会社分離)で、10%を売出し、残りの80%はフィアットの株主に分配する。FCAを支配するアニェッリ家は、フェラーリの議決権も維持する見通しだ。フェラーリ副会長は株式10%の保有を続ける。売出し株数も少ないことやフェラーリ自体に熱狂的なファンが多いことから人気化は必至で、応募倍率は10倍を超えるとの見方もある。

懸念されるのはVWショックの影響だ。ドイツではVWの影響で自動車部品メーカーのIPOが延期されている。VWに部品を供給する独のベアリング、自動車部品メーカーのシェフラー (Schaeffler)の2社は9月21日にフランクフルト市場でのIPOの計画を発表したが、VWが主要取引先であることもあり、先週時点でIPOを延期した。

VWショックにより、フェラーリの価値も大きく下がったのだろうか、そしてIPOの延期があり得るのだろうか。