首都圏ではJR、地下鉄など鉄道の駅売店が続々とコンビニになっている。取り扱っている商品の目新しさはないように見えるが、売り上げを以前の50、70%も伸ばしている店舗もあるほど好調だ。キヨスクが消えている理由は何なのだろうか。

駅の売店キヨスク誕生から83年

駅の売店の始まりは、日本の鉄道開通の1872年に英国人のジョン・ブラック氏が新橋駅と横浜駅で新聞を販売したことと言われている。そしてキヨスクは1932年4月鉄道弘済会が上野駅・東京駅構内に10店舗で物品販売を始めたことから始まった。

ちなみに英語ではKIOSKと書くが、カタカナではキヨスク。KIOSKとはペルシャ語が語源の簡易な建物のことだが、日本ではJR駅構内の売店としてキヨスクが使われていた。しかしJR東日本管轄の地域では、売店を経営する会社・東日本キヨスクが東日本リテールネットに変更された時に、読みをキオスクに変更している(ほかのJR管轄では変更されていない)。

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キヨスクが消えた3つの理由

キヨスクといえば、店舗内に女性の販売員がいるスタンド型の店舗を思い浮かべるのではないだろうか。電車待ち、乗り換えの合間に新聞や雑誌、ガムなど買い求める「サラリーマンの店」というイメージが強い。買いたいものをさっと決めて、さっと支払いを済ませるイメージもある。

キヨスクが伸び悩んだ理由の1つに、扱っている商品数の少なさがある。いくら詰め込んだところで、場所が狭いため点数が限られる。メーン商品といえば新聞、雑誌、たばこの他、お土産品、お菓子、飲み物といったところだろう。特に新聞や雑誌、たばこの3大商品は2000年代に入ってから売り上げが激減している。そもそも新聞や雑誌はキヨスクに限らず売れなくなっているし、喫煙可も減っているのだからうなずけるというものだ。

またスタンド型店舗では自分では手の届かない場所に商品があることも影響しているだろう。商品を確認しながら悩むこともできない。商品を指差してから「やっぱり止めます」と言いづらい。

2つ目の理由はキヨスクの歴史にある。ここではJR東日本に絞って紹介したい。キヨスクの販売員はJR東日本リテールネット(東日本旅客鉄道 <9020> の子会社)の正社員だった。かつて財団法人鉄道弘済会の一事業だったという流れで、旧国鉄で働いていた男性の配偶者をキヨスクの正社員として雇っていた。キヨスクの販売員に年配の女性が多いのはこのためだ。

しかし財団法人から株式会社に変わったことにより、一般の会社と同じように変わらなくてはならなくなった。そこで行われたことが、正社員の早期退職制度導入だ。2006年に約400人の正社員が退職した。キヨスクの販売員の穴埋めのために行った契約社員、アルバイトの募集もうまくいかなかったことも理由の1つと言えるだろう。

3つ目の理由は、電子マネーの推進の影響だ。現在ではほとんどのキヨスクでSuica対応のPOSレジが導入されている。以前のスタンド型のキヨスクを支えていたのは、女性販売員達のパッと暗算しながら商品とつり銭を同時に手渡すというスゴワザだった。商品の仕入れも、売れ筋を把握していた販売員が行っていた。しかしPOSレジ導入により、販売員はレジの操作ができれば誰でもよくなってしまったのだ。結果的にキヨスクが消え新しい形態の店舗に変わっている。