(写真=PIXTA)
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ドル円予想レンジ  115.55-119.50

「まさか、本当に導入するとはね・・」-。これは大手短資会社幹部の見解だ。短資会社とは、日本銀行をはじめ市中金融機関の相互間資金調整の仲介機能を果たす機関であり、日銀は短資会社を通じて当座預金取引、為替取引、貸出取引、そして「公開市場操作(オペレーション)」などを行う。

FRBは、昨年12月に9年ぶりの利上げに踏み切った。FOMCの声明によると、利上げの理由を「労働市場は今年、顕著な改善を示したと判断でき、物価も2%の目標に中期的に上昇していくと合理的に確信できる」としている。しかし米利上げ以降の世界経済見通しは悪化。1/21にはIMFが世界経済見通しを下方修正し、1/28のFOMC声明文では「経済成長は昨年末にかけて減速」としている。

FRB幹部の発言は過度な期待への牽制か

「Fed official flags tight conditions(FRB幹部は厳しい環境を示した)」-。これは2/4の英経済紙一面だ。2月に入ってフィッシャーFRB副議長は、「(年内の利上げペースについて)4回は検討されている選択肢の一つだが、予め決まっているわけではない」と発言。

そして、イエレンFRB議長の側近とされるNY連銀ダドリー総裁までもが、「金融情勢が昨年12月より著しく逼迫しており、こうした状況が3月の会合まで継続するようなら、金融政策決定を行う上で考慮する必要がある」と、市場の利上げテンポ感を曇らせた。当然、ドルブル派の勢いは鈍化した格好となる。

1ドル115円以下になるのか

今後の動向を紐解く上で2点注視したい。一つは、1/29の「日銀マイナス金利導入」に際し、黒田総裁は「誰も予想しなかった原油の大幅下落」「リスクの顕現化を未然に防ぐ」などを理由としたことだ。もっとも、緩やかな景気回復基調や物価目標2%に向けた自信は揺らがず、市場の信認性に努めた格好だ。

二つめは、2/10-11のイエレン議長による上下院議会証言である。そもそも12月利上げに対して米経済は耐えられるとした判断は、労働市場や物価目標に合理的確信を持ったからの決断のはずだ。

それにもかかわらず、利上げ後僅か2ヶ月弱で米経済の脆弱性を議会で証言するだろうか。同証言(草稿は事前配布)に法的拘束力は無いが、市場の信認を低下させる発言は避けると読む。日米金融政策の方向性の違いが明確であることから、イエレン証言の強弱で円の振り幅が拡がるだろう。

ドル円下値焦点は1/20安値115.96と示現後の戻り安値116.20。同水準圏を下抜けると2015/1/16安値115.84、2014/12/16安値115.55。上値焦点は2/4高値118.25。越えれば2/3下落帯(119.30-118.65)が視野入りとなるが、日足雲下限が緩やかに119.73を指針しており、120円台示現は望外と推考。

週間為替相場見通し2

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長 兼 シニアストラテジスト