ドル円予想レンジ 112.50-115.50
「ABCD包囲網」-。これは1930年代後半に、米(A)、英(B)、中華民国(C)、オランダ(D)が行った対日経済制裁の呼称だ。勿論、現代は米国をはじめ各国と良好な関係が維持されているが、ドル円レートに対する「ABCD包囲網」の形成には注意を払う必要がある。
円のABCD包囲網(米America)(英Britain)(中China)(蘭Dutch)
(A)11月に向け、米大統領候補者による農業・製造業の有権者向けに円安批判が強まる懸念がある。昨秋に、米財務省為替報告書が「円は過小評価」としており、候補者の発言に利用され易い。もっとも、「日米金融政策の差異」が明確なうえ、米雇用情勢や景気腰折れ懸念が強まらない限り、緩やかなドル高・円安基調と読んでいる。突破材料は米景気の基調持続だ。
(B)6月英国民投票に向け、英国(Britain)のユーロ圏離脱(exit)、「Brexit(ブリクジット)」懸念が存在。英国警戒が転じてポンド売り円買い、そしてドル円を圧迫する可能性もある<3/3時点200日終値比でのドル円・ポンド円相関係数【0.930】>。突破材料は英国の世論動向とリスクの織り込み度合いとなろう。
(C)2/29に中国人民銀は、預金準備率を0.5%引き下げた。しかし、2/15に銀行業監督管理委員会は、2015年第4四半期末の国内商業銀不良債権残高を1兆2744億元(1元約18円)、前四半期末比881億元増と公表。商業銀の不良債権率上昇は、金融機関の健全性を脅かし、人民元安・円高を燻らせる。突破材料は中国の人治政治であり、全人代後、3/16の李克強首相会見に期待となる。
(D)上海G20後、ユーロ圏財務相会合のダイセルブルム議長(オランダ財務相)が、「為替相場の下落に繋がるような政策決定を行う際には、事前に通知することで合意」と説明。これを以て今後は、日銀の大規模緩和や円高阻止介入が制約されたと見られた。しかし浅川財務官は、円の議論は全くなかったと否定。真相先送りである。
1ドル115円越えが突破口
現実的な問題は期末対策・来期前倒しでの円転需要が115-118円から膨らむ可能性だ。対して安倍政権の意を汲んだオールジャパン国内機関投資家が吸収できるかが鍵となる。
ドル円上値焦点は2/17高値114.52、2/16高値114.89。越えれば115.00節目や週足一目均衡表雲下限115.52が意識される。下値焦点は113円前半維持。割れると3/1安値112.15、2/25安値111.88が推考される。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長 兼 シニアストラテジスト