英語で話すことに完璧さは必要ない
英語の楽しさを知った大谷氏は、「海外留学をする」という次の目標を立て、今度は奨学金を得るための勉強を続けた。
「出社前の朝と仕事が終わった後の夜に勉強し、通勤時は引き続き『やさしいビジネス英語』を聞き、話す。上司や同僚からの飲みや遊びの誘いも断って、ひたすら勉強に打ち込みました。
この時のモチベーションは『30歳までにキャリアの基礎を築きたい』ということ。いずれ結婚や出産も考えていましたから、その時期が来たらどうしてもキャリアにおいてハンデを負うことになる。
それでも周囲から必要とされる人材であるには、若いうちに色々な勉強をしておくべきだと考えたのです。その最優先事項が英語であり、留学してMBAを取得することでした」
目標としてから約3年後、イギリスの大学院へ念願の留学を果たす。ところがそこで、新たな壁に突き当たった。
「日本では英語に自信を持っていましたが、実際に海外へ行ったら、私の英語なんて赤子同然。英語の議論についていけず、何を言おうか考えているうちに発言できないまま終わってしまう。本当に情けない気分でした。
ただ、しばらくすると、他の人も議論の内容を完璧に理解しているわけではないと気づいたのです。活発に発言している人も、実は周囲と議論がかみ合っていないことも多い。
つまり、誰も完璧な英語なんて話していないんですね。ネイティブでさえ、『三単現のs』が抜けていることくらいよくある。それがわかってからは気がラクになったし、間違ってもいいから積極的に発言するようになりました」
恥をかいた分だけ、英語は上達する!
こうした体験から、「英語が上達するには、場数を踏むしかない」と大谷氏は話す。
「実際に外国の人とコミュニケーションすれば、英語に完璧さは必要ないと実感できますし、度胸や勇気もつくはずです。外国人が話す英語を真似ることも大事。自分の英語が通じなかったら、他の人の言い方を真似してみる。それで通じたらその単語や表現が自分のものになるし、英語を話すのが楽しくなる。
こうしてトライ&エラーを重ねないと、ビジネスで使える英語は身につきません。私自身がそうだったように、恥をかいた分だけ英語は必ず上達する。最初からカッコ良く英語を話したいなんて思わないことが、英語学習を楽しくする秘訣です」
大谷弘子(おおたに・ひろこ)日本ケロッグ合同会社執行役員/マーケティング本部長
1964年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、日系の大手通信企業に入社。英国エジンバラ大学経営大学院でMBA取得。外資系飲料・食品メーカーでブランドマーケティングを担当。食品メーカー勤務時には2005年から2年半、シンガポールのアジア・パシフィック本社に赴任。13年、日本ケロッグ入社。マーケティング本部長として『厳選素材 フルーツグラノラ』などのヒット商品を手がけ、同社のシリアルビジネスの2桁成長に貢献。14年より執行役員。
(取材・構成=塚田有香、写真撮影=まるやゆういち)(『 The 21 online 』2016年2月号より)
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