2023年9月7日、東京証券取引所に6本の「アクティブ運用型ETF(上場投資信託)」が上場しました。アクティブ運用型のETFが上場するのは日本で初めてのケースで、銘柄名がユニークだったこともあり、話題になりました。

「アクティブなETF」ってなにがどうアクティブなの?そう思った方も多いでしょう。

今回は、アクティブ運用型ETFに関する基本的な理解を深めながら、株式市場のテーマのひとつである「PBR1倍割れ」、同テーマにスポットを当てた上場ETF「PBR1倍割れ解消推進ETF」について解説します。

目次

  1. 「指標連動型ETF」と「アクティブ運用型ETF」
  2. 注目テーマ「PBR1倍割れ」のアクティブ運用型ETF
  3. 「PBR1倍割れ解消推進ETF」の組み入れ比率上位10銘柄(2023年9月末現在)

「指標連動型ETF」と「アクティブ運用型ETF」

国内初のアクティブ運用型ETFが新規上場 注目テーマ「PBR1倍割れ」を解説
(画像=Ratana21/stock.adobe.com)

「ETF」とは

まずは「ETF」について簡単に説明します。

ETFとは、「証券取引所に上場している投資信託」のことです。メディアで取り上げられる際には「上場投信」などと言われます。

上場しているため、株式の個別銘柄と同様に取引所立会時間内に売買することが可能(リアルタイムでの取引ができる)で、売買手数料も証券会社ごとに定められた国内株式の委託手数料に準じます。また、投資信託のコストのひとつである「信託報酬」が、通常の投資信託に比べて安いケースが多いことも魅力の1つとされています。

アクティブ運用型ETFとは

では、アクティブ運用型ETFとはどういうETFなのでしょうか。ここでいうアクティブとは、「積極的に売買する」という意味ではなく、『インデックス型(パッシブ型)』の投資信託との対比で用いられます。

・インデックス型(パッシブ型)
日経平均株価などの株価指数や、特定の指標に連動した投資成果が得られるように設計・運用される

・アクティブ型
連動対象となる指標を設定せず、さまざまなテーマや手法のもと、インデックス運用を上回るパフォーマンスを目指して運用される

日本市場に初めてETF(NEXT FUNDS日経300株価指数連動型上場投信)が上場した1995年以降、ETFは銘柄数を増やし、2023年10月末現在で303本が東京証券取引所に上場しています。

アクティブ運用型ETFは、2023年3月に東京証券取引所が「アクティブETFの上場を可能にする」と発表、2023年9月に6本が上場しました。

注目テーマ「PBR1倍割れ」のアクティブ運用型ETF

▽2023年9月7日に上場したアクティブ運用型ETF

商品名 証券コード 運用会社
1 PBR1倍割れ解消推進ETF 2080 シンプレクス・アセット・マネジメント
2 政策保有解消推進ETF 2081 シンプレクス・アセット・マネジメント
3 投資家経営者一心同体ETF 2082 シンプレクス・アセット・マネジメント
4 日本成長株アクティブ上場投信 2083 野村アセットマネジメント
5 日本高配当株アクティブ上場投信 2084 野村アセットマネジメント
6 高配当日本株アクティブ上場投信 2085 三菱UFJアセットマネジメント

2023年9月7日に上場したアクティブ運用型ETFは上表の6本です(※)。1から3は、各ETFの運用テーマがそのままETFの名称になっています。

2023年3月に東京証券取引所が「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業」に改善策を要請したことから、日本の株式市場では「低PBRの水準訂正」がひとつのテーマになっていますが、このテーマに沿ったETFとして注目されているのが「PBR1倍割れ解消推進ETF」です。

※:2023年10月5日に「上場Tracers 米国債0-2年ラダー(為替ヘッジなし)」が新たに上場され、現在は7本になっています

「PBR1倍割れ」とは

PBRとは、「株価が1株当たり純資産の何倍の水準なのか」を示したものです。PBR1倍割れは、株価<1株当たりの純資産ということを示し、「企業の純資産に対して株価が安い(割安)」ということを示しています。この状態は理論上、「会社を維持するよりも、解散して資産を株主で分けたほうが得だ」ということになります。

2023年10月末現在、国内の証券取引所に上場する銘柄でPBRが1倍を割り込んでいるのは、約1,800銘柄。日本の株式市場では上場銘柄の半数近くがPBR1倍を割り込んでいる状況になっています。

PBR改善要請以降の市場の動き

2023年3月に東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して改善策を要請して以降、PBR1倍割れ企業が人気化し、PBR1倍を回復する銘柄が相次ぎましたが、その1つがトヨタ自動車(7203)です。トヨタ自動車のPBRは、2022年の終わりごろから1倍を割り込んで推移していましたが、2023年の6月には1倍を回復、2023年9月には上場来高値を更新しています。

また、2023年4月から9月にかけての自社株買いの設定件数は383件と、2018年4〜9月以降最多となっており、今後もこの流れが続くとみられています(自社株買いによって自己資本を減らすことは、PBRの上昇につながります)。

「PBR1倍割れ解消推進ETF」への投資も選択肢のひとつ

2023年の4月以降、日経平均株価は2万8,000円台から7月のバブル後高値3万3,753円まで大きく上昇しました。株価上昇の要因はひとつではありませんが、「PBR1倍割れ企業の人気化」が要因のひとつと考えられます。

「PBR1倍割れ解消推進ETF」は、PBR1倍割れ銘柄の中から業績や財務状況、流動性などを基に中長期的に株価上昇が期待できる銘柄で組成されたアクティブ運用型ETFです。PBR1倍割れ銘柄への投資は伝統的な割安株投資の手法であり、PBR1倍割れ銘柄を分散投資する同ETFをポートフォリオに組み込むことは有効な手段といえます。また、組み入れ銘柄を見ることで個別銘柄投資のヒントを得ることもできるのではないでしょうか。

「PBR1倍割れ解消推進ETF」の組み入れ比率上位10銘柄(2023年9月末現在)

銘柄名 組み入れ比率
1 三菱UFJフィナンシャルグループ 4.79%
2 三井住友フィナンシャルグループ 4.78%
3 本田技研工業 4.76%
4 みずほフィナンシャルグループ 3.70%
5 ゆうちょ銀行 2.70%
6 日本郵政 2.38%
7 豊田自動織機 2.20%
8 住友商事 2.09%
9 オリックス 1.98%
10 日本製鉄 1.91%

東京証券取引所がPBRの改善要請を行ってから半年が経過していますが、「PBR1倍割れ企業」に対しては、継続的な改善に向けた計画を示すよう求める方針を打ち出していることなどから、2024年以降も息の長いテーマになると考えられます。

「PBR1倍割れ解消推進ETF」に注目してみるのも面白いのではないでしょうか。