先月までの動き
年金記録訂正分科会では、新しい訂正請求手続きがスタートして1年が経ったことなどから、2015年度の請求状況について速報値が報告されました。
今後、処理状況の把握と内容分析などが行われ、その結果が「年金記録の訂正に関する事業状況」として秋頃に公表される予定です。年金部会では、これまで議論してきた改革案が「国民年金法等の一部を改正する法律案」として国会に提出されたことが報告され、意見交換が行われました。
○社会保障審議会 年金記録訂正分科会
3月8日(第3回) テーマ 年金記録訂正分科会長の選任、平成27年度における年金記録の訂正手続の現況等
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000115297.html (配布資料)
○社会保障審議会 年金部会
3月14日(第38回)テーマ 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案について(報告)
URL http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000116227.html (配布資料)
ポイント解説:年金改革法案の国会審議
2016年3月11日に新たな年金改革法案が国会へ提出されました。本稿では、過去の年金改革法案の審議過程を振り返り、今回の法案の審議見通しについて考えます。
◆過去の審議:年金法案が政局を動かすことも
近年で最も大幅な改革法案は、2004年の法案です。この骨子は2003年9月に厚労相試案として提示され、同年10月の衆議院選挙で争点となりました。
この選挙では自民党が議席を減らしたものの連立与党では過半数を確保し、経済財政諮問会議での変更を経て法案が国会へ提出されました。国会では民主党が対案を提出し、一旦は3党合意が結ばれたものの参議院本会議で牛方戦術が行われるなど紛糾する中で成立しました。
成立直後(2004年7月)の参議院選挙では、厚労省が法案成立前に判明していた出生率の低下を成立後に発表したことへの批判もあり、民主党が躍進しました。
2012年の社会保障と税の一体改革では、同年6月の3党合意を受け、特別委員会へ付議された法案は同年8月に成立しました。しかし、予算関連法案として同年2月に提出された法案は厚生労働委員会へ付議され、通常国会では審議されませんでした。
最終的には、同年11月14日の党首討論における首相の解散総選挙の提案を受け、同日に衆議院で審議入りし、翌15日に衆議院で可決、解散日となった翌16日に参議院で可決・成立しました。
◆今回の審議:参院選を考慮して審議延期か
2001年の省庁再編で厚生労働省となってから、国会での審議日程が厳しくなっています。本国会で審議対象となっている内閣提出法案64本のうち、厚労省の提出分は11本です。
本国会で提出された法案だけを見ても、55本中7本が厚労省提出です。今年7月には参議院選挙が予定されているため本国会の会期延長は難しく、今回提出された年金改革法案が本国会で成立するかは不透明です。
また、年金改革法案と選挙との関係を考慮して、本国会中の審議入りが延期される可能性もあります。法案には、今年10月に施行される厚生年金の適用拡大に対する見直し(*1)(今年10月の施行と同時に見直しも実施予定)が含まれているため、今後の審議状況が注目されます。
(*1)今年10月の適用拡大では正社員500人以下の企業が適用拡大の対象外となりますが、これらの企業でも任意の適用拡大を可能にするもの。拙稿「2016年 年金改革法案のポイント」『年金ストラテジー』Vol.238 参照。
中嶋邦夫(なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所
主任研究員・年金総合リサーチセンター
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