世界初の地方自治体発行仮想通貨Hullcoinを悪用した大掛かりな詐欺事件が、複数のメディアで報じられた。被害は中国投資家に集中しており、現在までに被害者500人以上、被害総額710万元(約1億2022万円)に上ることが分かっている。

Hullcoinは2014年に英国東海岸に位置する都市、キングストン・アポン・ハル市の自治体によって発行された。ハル市は犯罪に利用された架空のウェブサイトとの関連性を否定すると同時に、本格的な調査に乗り出している。

英政府、自治体との提携を装った巧妙な手口

中国人投資家を標的にした「UKハルコインズ・インベストメント・トレーディング」という名称のWebサイトは、実際に英法務省を通して法人登記済みの会社名を利用するという巧妙さだ。元ハル市の金融インクルージョン・オフィサーでHullcoinの開発メンバーであったデビッド・シェパードソン氏の偽コメントを掲載するなど、非常に手のこんだものだった。

事件が発覚したきっかけは、サイト上のファンド購入ページが突然消滅し、ログインが不可能になったことに不安を抱いた投資家から苦情が出てきたことからである。

「英国政府が促進する仮想通貨プロジェクトと提携」といううたい文句で、Hullcoin投資に興味を持っていた中国人投資家を募り、具体的な期間などは公表されていないが、短期間で荒稼ぎをしたものと推測されている。

現在までに、事件の背景にある「UKハルコインズ・インベストメント・トレーディング」の登記には、Shengqiang Suという個人名しか申請されておらず、オフィスも実在しないことなどが判明している。サイト上に掲載されていた昨年11月のカンファレンスなども実際には開催されていない。

ウェブサイトや連絡先のメールアドレスは生きていることから、メディアが接触を試みたが応答はなかったという。

仮想通貨市場が拡大するにつれ、それを悪用する事件も増えていくことが予想される。巧妙に作りこまれた場合、詐欺と見抜くのは至難の技だが、名前を使用された機関に問い合わせをするなど、投資家の自衛意識が求められる。( FinTech online編集部 )