日本でも話題のFinTech(フィンテック)だが、自分には関係のない話だと思っている方も少なくない。そこでFP(ファイナンシャルプランナー)の立場から、「意外に生活に密着した話かも」と思える話を紹介したい。今回は「ロボットアドバイザー(ロボアド)」について。

フィンテックってドラえもん? ロボットアドバイザーとは何か

FinTechに詳しくはない20代女性に「ロボットアドバイザーって何だと思う?」と聞いたところ、「ドラえもん?」という答えが返ってきた。一瞬、まゆをひそめるかもしれないが、これはなかなか的を射ている。ロボアドは、お金の管理に関してのドラえもんなのかもしれない。

ロボアドは「あなたはどのような資産活用をしたいですか?」といった複数の質問に回答することで、運用期間やリスク許容度などの「投資における顧客の好み」を分析し、それをもとに「お勧めする運用方法」を提示してくれるサービスだ。

証券会社が提案している既存のサービスでは、個人投資家が投資運用を証券会社に「一任」する「ラップ口座」が代表的だろう。ロボアドは機械に任せる分、通常かかってくるコストが不要となり、廉価でのサービス提供をしているところが評価され、拡大している。

ロボアドはFPの仕事を奪うのか

ロボアドが得意としている「顧客の投資傾向を分析し、的確なアドバイスをする」ことを専門分野としているのがFPだ。

FPのビジネスモデルは、顧客の相談に乗ったうえ、最終的に紹介した商品の手数料(コミッション)を報酬として受けるFPと、相談そのものに「1時間〇〇円」といった価格設定を設け、「相談料(フィー)」として受けるFPのスタイルがある。

どちらのスタイルでも、ロボアドが展開しているビジネスモデルと重複している部分は多い。筆者もよく「ロボアドがFPの仕事を奪っていくのではないですか」と聞かれるが、「今はないと思う」と答えるようにしている。

FPは「傾聴力」を武器に対抗

ロボアドの技術やサービス力は日進月歩で進化しているため、あえて「現在」という言い方をするが、現在はFPの持つ傾聴力はロボアドに勝っていると思う。最も顧客の信頼を得てから聞くべき話が「財産状況」。

ただ単に「どれくらいの資産を持っていますか。それをどうするつもりですか」と聞かれても、相談者は心を開かない。

筆者の先輩で個人相談を得意とするFPは、顧客の信頼する紹介者の案件だとしても、初回面談の前にメールで丁寧に関係を築き、資産状況を聞ける土壌を作るという。

「お金や相続といったナイーブな部分への尋ね方」がFPの腕を確認できるという話は、同業者からよく聞く話だ。聞くときの表情、言葉遣い、抑揚、そして相手との会話が成り立つかどうか。信頼関係はとても単純だが、このようなところから生まれる。

手数料勝負よりも共存して高め合う道を

ロボアドに参入する企業も増え、よりサービスの差別化や、それぞれのロボアドの「特色」が出てくるだろう。今後、既存のFPも巻き込んで「資産活用の専門家を顧客が選ぶ時代」が到来するのかもしれない。

ロボアド企業の経営者や実際の現場責任者に話を聞くと、「もうロボアドだけでは差別化できない」という話を聞くことも多い。インデックス、新興市場など投資対象を限定したロボアド、コモディディ紹介に特化したロボアドといった、「専門性」が問われる流れがあり、それはFPも一緒だ。

「相談に乗ります」だけではなく、どのような専門性を持っているのか。ロボアドが勝つか、FPが勝つかではなく、専門性を顧客に評価され、信頼を得たものが残っていく。そんな「切磋琢磨」を期待したい。

手数料を安くという「価格競争」ではなく、サービスの良さで勝負し、良さを磨きあっていくことがそのサービスを使う側にとっては望ましい。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。雑誌寄稿、WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。