本記事は、三浦 真氏の著書『考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

株式投資に挑戦してリスクとリターンを追いかけるべきか

2024年1月から新しいNISA制度が始まりました。
これは、従来の一般NISAとつみたてNISAを、成長投資枠とつみたて投資枠として一体化した新制度で、非課税保有期間の無期限化や制度の恒久化が導入されました。
さらに、投資枠を再利用できるようになり、資産運用の柔軟性は大きく向上しました。
こうした制度の後押しもあり、私の周りでも、株式投資を始める人が増えている印象があります。

ただし、投資は自己責任ですので、株式投資も自分で決めるべきことがらです。
友人に勧められて始める人もいますが、最終的には自分の目的や将来像、価値観を基準に、自分なりの答えを創る必要があります。
投資を考えるときは、まず判断の軸をつくることが出発点です。
資産運用を考える際にも、目的(ミッション)、将来像(ビジョン)、価値観(バリュー)を明確にすることが大切です。
公式は「資産の運用を考えるにあたり〇〇を目的にし、将来△△を実現したい。そして□□を大切に運用する」と表せます。

たとえば、目的が将来の生活資金を守ることであれば、貯金による安定が安心をもたらします。逆に余剰があり資産をより増やして自由度を高めたいという目的なら、株式投資が選択肢となります。
将来像として、老後に安心して暮らすのか、若いうちから積極的に資産を増やすのかで方向は変わります。
価値観として、堅実さを重視するのか、それとも挑戦や成長を重視するのかも、判断の軸になります。

次にSWOT分析を使って現状を整理します。

この場合、強みには安定した収入や投資の知識、余剰資金の確保が含まれます。
弱みは投資経験の不足や判断の未熟さ、生活費と投資資金の区別が難しいこと、リスクに対する不安です。
外部の機会には株式市場の成長、新産業の拡大、NISAやiDeCoといった税制優遇制度があります。
脅威としては株価の急落、インフレや金利上昇、経済危機、大きな損失による生活への影響が挙げられます。

これを「資産の運用を考えるにあたり、強みは(SS)、弱みは(WW)、外部の機会は(OO)、脅威は(TT)です」と言葉にすると、より明確になります。

さらにクロスSWOT分析を行うと、方向性が見えてきます。

強みと機会が重なれば、株式投資に挑戦する積極戦略が合理的です。
弱みと機会が重なれば、少額から投資を始めて経験を積む改善戦略が有効です。

強みと脅威が重なれば、投資と貯金を組み合わせてリスクを分散する差別化戦略が適切です。
弱みと脅威が重なれば、投資を急がず貯金を優先する撤退戦略が現実的です。

具体例を挙げます。

強みと機会が重なる場合、安定収入があり余剰資金を確保できる人が、NISAやiDeCoを利用できる状況にあるのではないでしょうか。
このときは積極戦略が合理的です。
生活費を除いた資金を安定的に投資へ回し、株式や投資信託を活用すれば、長期的な資産形成が可能です。
インデックスファンドや分散投資を取り入れることで、強みを背景に制度という機会を最大限に活かせます。

弱みと機会が重なる場合は、投資経験が浅く判断に不安がある人が、新産業の成長や制度拡充という追い風を受ける状況です。
このときは改善戦略が効果的です。
大きな資金をいきなり投じず、毎月1万円ほどから積み立て投資を始め、実際に投資に触れて知識と経験を積みます。
金融機関や証券会社のセミナー、書籍、YouTubeなどで学ぶことも役立ちます。
弱みを補いながら機会を活かせば、将来より本格的な投資に進む準備ができます。

強みと脅威が重なる場合、収入や資金に余裕がある一方で、世界的な経済危機やインフレの加速などの不安要素があるケースです。
この場合は差別化戦略が必要です。
株式だけでなく、債券や金、不動産投資信託(REIT)などリスク特性の異なる資産を組み合わせます。
また、固定金利の住宅ローンを選ぶ、生活費の半年から1年分を現金で確保するなどの対策も有効です。こうすることで、脅威に備えつつ強みを活かすことができます。

弱みと脅威が重なる場合、投資経験がなく、貯蓄も少ないうえに金利上昇や物価上昇が進む不安定な状況です。
この場合は撤退戦略をとるのが妥当です。
無理に投資せず、生活資金の安定を最優先に考えます。
毎月の収支を見直し、支出を抑えて緊急資金を積み上げることが重要です。
投資は基盤が整ってからであり、準備不足で始めると生活を圧迫し、不安を増やす原因となります。
撤退もまた合理的な選択であり、長期的には次のチャンスに備える戦略です。

このようにクロスSWOT分析を使い、自分の強み・弱み・機会・脅威を組み合わせて、現実的な戦略を導くことができます。

考え方の方向性は、次の4つに整理されます。

  • 強み(SS)を活かし、機会(OO)を生かす積極戦略
  • 弱み(WW)を克服し、機会(OO)をつかむ改善戦略
  • 強み(SS)を活かして脅威(TT)に備える差別化戦略
  • 弱み(WW)と脅威(TT)が重なったら何かをやめる撤退戦略

株式投資と貯金のどちらが正しいかという普遍的な答えはありませんが、自分の状況を冷静に把握し、どの戦略が合っているかを考えることで、納得できる答えを見つけられます。

考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法
三浦 真(みうら・まこと)
公認会計士
2006年東京大学経済学部卒業。
2007年監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)東京事務所に入所し、金融事業部にてメガバンクの監査業務に従事。
2012年から2014年にかけて、Deloitte Touche Tohmatsu香港事務所に出向し、日系金融機関の監査を担当。
2015年に独立して公認会計士事務所を開業。
経営者の意思決定を支えるコンサルティングを中心に、経営顧問、社外役員、CFOなどの業務を幅広く行っている。
経営者団体、国立大学、地方自治体などでの講演・講義活動を通じ、経営を実践するための指導、人材の育成に取り組む。
ミッション・ビジョン・バリューを起点に、戦略的思考と組織の成長を支える経営フレームワークをクライアントの実務に実装している。

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