本記事は、三浦 真氏の著書『考え方には型がある 「答えのない問い」に答えを出す思考法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
自由と安定、どちらが大切か
「自由に生きることと安定した暮らし、どちらが大切ですか?」
まずは、この問いに対する答えを考えるための足掛かりとして、次のように考えてみてください。
「自由」とは、あなたにとってどんな状態でしょうか?
時間や場所に縛られないことかもしれませんし、好きな仕事を選べることかもしれません。
一方で、「安定」とは何を指しますか?
毎月の収入があること、家族が安心して暮らせること、人間関係が穏やかなこと。それぞれのなかに違う形の安定があります。
まずは、自分がどんなときに「自由だ」と感じ、どんなときに「今の暮らしが続くといいな」と感じるかを思い出してみましょう。
その感覚を言葉にしていくうちに、自分のなかの価値の優先順位が見えてきます。
どちらが正しいという話ではなく、自分にとって「これが自由かな、安定かな」としっくりくる答えを見つければいいのです。
「自由」と「安定」、どちらが自分にとって大事なのか。
この問いについて、自分でもしばらく考えてみました。
若いころの私は、迷わず安定と答えていたと思います。
公認会計士という資格を取ったのも、「ちゃんと食べていけるように」「一生困らない仕事を」と思ったからです。
でも実際に、経営の現場でたくさんの会社を見てきて、考えが変わりました。
「安定している会社ほど、危うい」と感じる場面が多かったのです。
売上は悪くないのに、新しい挑戦をしない。同じやり方を続けるうちに、気づけば競合に抜かれてしまう。
一方で、リスクを取ってでも新しいことに挑む会社は、最初こそうまくいかなくても、時間が経つほど強くなっていくのです。
そういう姿を間近で見てきて、私のなかで安定の意味が変わりました。
将来、等松農夫蔵先生のような存在を目指すのであれば、守るだけではだめだ。むしろ、変化のなかに飛び込んでいく「自由さ」が必要だと思うようになりました。
新しい挑戦をすることで、自分も顧問先の会社も、一緒に成長できる。現状維持ではなく、自由な発想を持ちながら、管理会計や経営学といった基本を大切にして、会社をしっかり支えていきたい。
だから、私の答えは「自由」です。
主張と協調、どちらが大切か
次に、2つめのソフトな問いに答えてみましょう。
「自分の意見を通しますか? それとも周囲の意見に歩調を合わせますか?」
この問いも、すぐに答えるのはむずかしいかもしれません。
自分の意見を通すとは、わがままを通すことではなく、自分の考えに責任を持ち、必要なときにしっかりと意見を言うことです。
一方で、周囲の意見に歩調を合わせるとは、ただ人に流されることではありません。周りの人との関係を大切にしながら、チームとして目的を達成するために柔軟に行動することです。
自分の意見を貫く強さと、周りを尊重する優しさ。
どちらが大切かは、場面や立場によって変わるものだと思います。
私自身、若いころはどちらかといえば周囲に合わせるタイプでした。
監査法人で働いていたとき、上司の考えをくみ取り、チームの意見に従うことが大切だと思っていたからです。
実際、そのおかげで職場はスムーズに回り、大きなトラブルもありませんでした。
でも、独立して経営者と直接関わるようになってから、考えが変わりました。
経営の現場では、周りに合わせてばかりでは会社を守れないことがあるのです。
社長が迷っているとき、誰かが「私はこう思います」とはっきり言わなければ、組織は前に進めません。
もちろん、意見を通すには勇気がいります。
反対されることもあるし、結果的に間違うこともあります。
それでも、自分の考えに責任を持つ姿勢こそが、信頼を生むのだと気づきました。
今の私はこう考えています。
私は将来のビジョンを明確に持っているので、まず自分の意見をはっきり持ちます。
そのうえで相手の意見をしっかり聞き、原理原則にしたがって、判断は根拠に基づいて行います。
相手の考えが目的や事実に照らしてより良いと感じたら、素直に自分の考えを修正します。
逆に、自分の意見のほうが適切だと判断できる場合は、根拠を示してはっきりと主張します。
大切なのは、自分の意見を持ちながら、周りの意見にも耳を傾けること。
この自立と協調を両立させる姿勢を、私は何より大切にしています。
やりがいと収入、どちらが大切か
最後のソフトな問いにも答えましょう。
「仕事を選ぶときに大切にするのはやりがいですか? それとも収入ですか?」
この問いは、多くの人が一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
どちらも大切で、どちらも欠かせないという人も多いでしょう。
けれど、どちらを優先するかと聞かれたら、私の答えははっきりしています。
私は「やりがい」を優先します。
私の仕事の目的は、「強く、賢い会社を増やすこと」です。
もし自分の収入だけを第一に考えてしまうと、すでにうまくいっている大企業や優秀な経営者だけを相手にするようになってしまいます。
それでは、本来の目的から外れてしまうのです。
私は、これから成長していく会社や、努力して変わろうとしている経営者を支えたい。
そのためには、収入よりも「やりがい」を大切にすることが欠かせません。
もちろん、仕事は理想だけで成り立つものではありません。収入がなければ生活も続きませんし、会社も存続できません。
でも、私はこう考えています。
原理原則に従ってお客様の課題を丁寧に解き、誠実に向き合っていけば、信頼は自然と積み上がる。その信頼の積み重ねが、結果として収入を生み、長く続く仕事につながる。
逆に、収入だけを追えば、短期的には得をしても、信用を失って長期的には不安定になります。
だから私は、まず「やりがい」を選び、その結果として「収入」がついてくるという順番を大切にしています。
結論としては、自分の判断軸に照らすと、やはり「やりがいを重視する」という答えになります。
と、ここまで参考までに私の考えを例として見てきましたが、答えのない問いを考えるうえで大切なのは根拠を持つことです。
自分のミッション・ビジョン・バリューをはっきりさせておけば、正解のない問いに対しても、自信をもって自分なりの答えを導くことができます。
2006年東京大学経済学部卒業。
2007年監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)東京事務所に入所し、金融事業部にてメガバンクの監査業務に従事。
2012年から2014年にかけて、Deloitte Touche Tohmatsu香港事務所に出向し、日系金融機関の監査を担当。
2015年に独立して公認会計士事務所を開業。
経営者の意思決定を支えるコンサルティングを中心に、経営顧問、社外役員、CFOなどの業務を幅広く行っている。
経営者団体、国立大学、地方自治体などでの講演・講義活動を通じ、経営を実践するための指導、人材の育成に取り組む。
ミッション・ビジョン・バリューを起点に、戦略的思考と組織の成長を支える経営フレームワークをクライアントの実務に実装している。
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