エンジェル投資家と起業家の新たな出会いの場
ベンチャー企業がスタートアップの段階にあるとき、これまではベンチャーキャピタルが裕福な個人投資家から集めた資金を投資するか、知り合いのエンジェルと呼ばれる個人投資家から資金を得る方法しかありませんでした。 これは、ベンチャー企業が不特定多数のエンジェルを募集することが違法行為であったためです。 しかし、2012年にオバマ大統領が署名したJOB Act法により、ベンチャー企業が資金を募集していることを不特定多数の投資家に公言できることになりました。
そこで「 エンジェルリスト(AngelList) 」という、スタートアップ企業が不特定多数のエンジェルに資金を募る仕組みが注目されるようになります。 このエンジェルリストが提供するプラットフォームは、従来のベンチャーキャピタルのビジネスモデルにとっては脅威です。 ベンチャーキャピタルのビジネスモデルは、裕福な個人から集めたお金を、支援の価値があると判断したスタートアップ企業に投資するというものです。そこには投資先を見極める専門家が介在することで、投資家が管理報酬や成功報酬を負担する必要がありました。
しかもベンチャーキャピタルのスタートアップ企業への投資は、9割が失敗すると言われ、1割の成功で9割の失敗を賄う程の大成功が必要とされていました。 しかしエンジェル投資家は、自分たちでスタートアップ企業を見つけ、評価し、投資できる時代がやってきたのです。
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進化するエンジェルリスト(AngelList)とは
ベンチャーキャピタルにとって脅威となるエンジェルリストとはどのような仕組みを提供するのでしょうか。 エンジェルリストが提供するのは、エンジェルと起業家が出会えるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)であり、エクイティー・クラウドファンディング機能です。 エンジェルリスト上では、エンジェルと起業家がプロフィールを公開できます。その際、エンジェルのプロフィールには、これまでの投資経歴も公開されます。つまり、このエンジェルは過去にどのような企業に投資してきたのか、ということが分かるのです。
起業家側のプロフィールには、この企業にどのような投資家が投資しているのかというリストが表示されます。有名なエンジェルが投資している有望な企業かどうか、ということなどが確認できるということです。 このようにエンジェルと起業家、あるいはエンジェル同士の情報が確認し合えるというのは、ベンチャーキャピタルでは提供されていなかった画期的なサービスです。 そこにさらに画期的な「シンジケート」という機能が追加されました。それはどのような機能なのでしょうか。
エンジェルリストのシンジケート機能
すでにエンジェルリストでは、有名なエンジェルが投資している企業に他のエンジェル達が便乗投資することで、より成功率を高めようとします。 この傾向を起業家も利用する事ができ、有名なエンジェルからの投資を受けることができれば、他のエンジェルからの投資を呼び込みやすくなるため、大きな資金を得るためには有効な手法となります。
この手法を、エンジェル側から仕掛けることが出来るのが「シンジケート機能」です。 これは、ある有名なエンジェルが、自分が投資する企業の資金調達目標を達成しやすくするために、他のエンジェルを誘うことができる機能です。例えば、投資先の企業が目指している資金の30%を自分が引き受け、不足分を他のエンジェルから集めるためにシンジケートに割り当てる、といった利用方法です。
当然、他のエンジェル達は、有名なエンジェルが投資している企業であれば、投資先として魅力を感じるわけです。 実はこのような手法は、従来ベンチャーキャピタルが内部で行っていた情報活用手法です。 つまり、シンジケート機能を装備したことで、エンジェルリストはベンチャーキャピタルが担ってきた役割をオープンな環境で提供し始めたのです。
ベンチャーキャピタルの役割が無くなる?
以上の様に、エンジェルリストの機能が充実するほどに、これまでベンチャーキャピタルの担ってきた機能に近づいて来ます。 既に紹介しました通り、シンジケート機能などは、ベンチャーキャピタルの役割を奪ってしまう機能です。しかもエンジェルリストではベンチャーキャピタルのような管理費を必要としていません。 このことはベンチャーキャピタルにとって脅威でしょう。
彼らのビジネスモデルが成り立たなくなってしまう可能性を秘めているからです。 これからは個人投資家達が、ベンチャーキャピタルに頼ること無く、エンジェルリストを利用して直接投資先を選ぶことが可能になります。また、起業家たちもエンジェルリストで直接個人投資家を集めることが可能になったのです。
エンジェルリストがベンチャー投資の形を変える
以上の様に、エンジェルリストは、これまでベンチャーキャピタルが担っていた個人投資家と起業家を関係づけていた閉ざされた役割を取り払い、個人投資家と起業家が直接出会える場を提供し始めました。 既に述べたことの繰り返しになりますが、エンジェルは投資経歴を公開し起業家は誰に投資されているかを公開します。 そこにはベンチャーキャピタルが介入する必要性は見いだせません。 また、シンジケート機能によって、エンジェルが他のエンジェルを誘って企業の目標資金を調達させることが可能になったことも、ベンチャーキャピタルの役割を失わせてしまいます。
しかもベンチャーキャピタルが要求してきた管理費を、エンジェルリストは無料にしてしまいました。 このように、エンジェルリストは、ベンチャー投資のあり方を変えつつあります。
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