マネーストック: 投資信託の不調が目立つ、普通預金の伸びは加速

日銀が7月11日に発表した6月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.4%(前月も3.4%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.9%(前月改定値も2.9%)と、それぞれ前月から横ばいとなった。

M3の内訳では、現金通貨の伸び率が前年比6.2%(前月は6.3%)、準通貨(定期預金など)の伸び率も▲0.8%(前月改定値は▲0.6%)とそれぞれやや低下したが、預金通貨(普通預金など)の伸び率が7.2%(前月改定値は7.1%)と上昇したことで補われた(図表9~10)。マイナス金利導入以降に様々な金利が低下したことで、もともとほぼゼロ金利で流動性が高い普通預金の相対的な魅力が高まり、法人預金が大量に流入しているようだ。

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M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比1.9%(前月改定値は2.3%)と前月から大きく低下。1月時点の3.6%から急激な低下が続いている。内訳のうち、M3の伸びは横ばいであったが、残高が比較的大きい金銭の信託(前年比伸び率:前月▲1.2%→当月▲1.9%)のマイナス幅を拡大したほか、投資信託(元本ベース・前年比伸び率:前月9.6%→当月7.1%)の伸びが大きく低下したことが響いた。

投資信託の伸び率は1月時点の16.5%から低下基調が続いている。マイナス金利の影響で運用難に陥ったMMFが販売停止となり、一部で払い戻しが行われているほか、円高・株安など市場の混乱が続き、家計などがリスク性資産への投資を手控えている可能性が高い。

上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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