マネー統計,貸出・預金動向
(写真=PIXTA)

貸出動向: 伸び率は鈍化したが、見た目ほどは悪くない

日銀が7月8日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.0%で前月(前年比2.2%)から低下した。伸び率は3ヵ月ぶりの低水準となる。業態別では、都銀等が前年比0.6%(前月は0.9%)、地銀が3.3%(前月は3.4%)とともに低下したが、都銀等の低下が顕著になっている(図表1・2)。

ただし、円高の進行によって外貨建て貸出の円換算額が押し下げられた影響が大きいとみられる。6月のドル円レートの前年比は▲14.8%と5月(▲9.6%)からマイナス幅が大きく拡大しており(図表3)、貸出の見た目の伸び率が押し下げられている。円高による円換算額の押し下げは貸出の実勢とは関係がない。従って、貸出の実勢が大きく勢いを増しているわけではないものの、見た目ほど悪くはないと推測される。

実際、ここ数ヵ月、見た目の伸び率は低下ぎみだが、為替変動等の影響を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(図表1)(*1)は堅調に推移しており、直近判明分である5月の伸び率は前年比2.6%と2009年7月以来の高水準を更新している。

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なお、5月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が0.657%(4月は0.68%)、長期(1年以上)が0.695%(4月は0.794%)とともに低下した(図表5)。短期は14年8月の0.643%に次ぐ過去2番目の低水準、長期はこれまでの最低であった16年3月の0.705%を下回り、過去最低を更新した。

マイナス金利政策導入による市場金利の低下が、引き続き貸出金利に波及している(図表5)。

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(*1)特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは5月分まで。
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マネタリーベース: 初めて400兆円を突破

7月4日に発表された6月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通するお金)を示すマネタリーベース平均残高は前年比で25.4%の増加となり、伸び率は前月(同25.5%)からわずかに低下した。日銀当座預金の伸び率が前年比33.9%と前月(34.1%)から低下したうえ、日銀券発行高の伸び率も前年比6.2%と前月(6.5%)から低下したためだ。

日銀当座預金の伸び率低下は、単に分母にあたる前年の残高増加に伴うもので、日銀当座預金の前年差額は、74.1兆円と前月の71.6兆円から増加している。

また、日銀券(紙幣)発行残高の伸び率低下は2ヵ月連続となるが、前年の同時期に伸びが急伸していたため、その反動が出ている面もある(図表6~7)。

マネタリーベースの月末残高は404兆円と初めて400兆円台に乗せている。

金融政策との関係では、現行の金融政策におけるマネタリーベース増加目標は「年間約80兆円増」であり、単純計算では月当たり6.7兆円増が必要になるが、6月の月末残高の前月末比増加額は17.2兆円に達した。ただし、6月は季節柄、国債の償還が多いことから日銀当座預金が増加しやすいという事情があり、季節調整済みのマネタリーベース平均残高は前月差7.1兆円増と、目標達成ペースをやや上回る程度である。

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また、同ベースにおいて、今年に入ってからの1-6月の平均増加額を見ると、月6.4兆円の増加ペースに留まっており、目標達成ペースの月6.7兆円をやや下回っている。まだ十分挽回可能なレベルだが、今後は多少のペースアップが必要になってきた(図表8)。