自治体間の税収格差是正は期待できない

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まず、ふるさと納税と地方交付税について、地方税との相関係数を算出した。そして、都道府県、市町村に加え、都道府県の額に同一都道府県に属する市町村の総額を合算した都道府県合計でも算出した(図表3)。

ここでは、マイナス幅が大きいほど、逆の関係が強いことを示す。すなわち、地方税が少ない自治体ほど多くのふるさと納税、もしくは地方交付税を受け取る傾向が強いことを示している。

「自治体間の財源の不均衡を調整するため、国税として徴収し、合理的な基準に基づき再配分する役割」を担う地方交付税と比べると、ふるさと納税のマイナス幅は小さい。更に、データ数の少なさも手伝って、都道府県と都道府県合計では、有意にマイナスとは言えない。以上から、ふるさと納税に地方自治体間の税収格差の是正効果は期待できないと言えそうだ。

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最後に、散布図を用いて都道府県合計における地方税とふるさと納税の関係を確認する(図表4)。横軸に人口調整後の地方税、縦軸に人口調整後のふるさと納税(地方交付税)をプロットした。左のグラフは、左上部はまばらで左下部は密集している様子が見て取れる。つまり、人口調整後の地方税が少ない都道府県のうち、人口調整後のふるさと納税が多い都道府県は一部にとどまる。

そして、地方税、ふるさと納税共に、ふるさと納税相対的小額率(納税者の選択結果、集中が半端ではない(2)ふるさと納税相対的小額率)算出に用いた全体の中央値に満たない都道府県が14県もある(赤色付け部分)。このうち2県(赤色囲み部分)は、人口調整後のふるさと納税においても、人口調整後の地方税で独走する東京都に負けている。一方、人口調整後の地方税と人口調整後のふるさと納税がともに上位10位以内に位置する都道府県もある(青色囲み部分)。

以上から、納税者が寄附先を選択した結果、寄附が特定の自治体に集中していることが確認できた。つまり、寄附は自治体のアピールに大きく依存し、ふるさと納税の制度自体に自治体間の税収格差是正を期待するべきではないと言うことだ。

人口調整後のふるさと納税においても東京都に負ける2県も、今後のアピール次第では十分巻き返し可能だ。しかし、同じことが東京都をはじめとする都市部についても言える(*3)。巻き返し策も含め、今後の動向に注視していきたい。

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(*3)銀座のブランド品店でも使える「中央区ふるさと感謝券」等が返礼品となることも、理論上考えられる。
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高岡和佳子(たかおか わかこ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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