女性や総務社員の可能性が大いに広がる

もちろん、社会保険労務士事務所は零細な所が多く、多忙なわりには給与がよくない。待遇面では中小企業以下かもしれない。それでも子供がいる主婦にとってパートや派遣社員で働くよりはいい。女性活躍を謳っていても、一度退職した主婦が正社員として入社することは難しい。いったん、パートや派遣社員で働くと昇給や正社員への転換は困難だ。

一方、社会保険労務士事務所は零細な反面、実力さえあればパートから正職員になることもできる。子供の成長に合わせて働く時間を増やせば、容易に転換できる。

また日本の99%を占めると言われている中小企業では、総務部などのバックオフィスで働く人を冷遇しがちだ。30代でも年収300万円台という人もいる。また、こうした部署には社長の親族や金融機関からの出向組が突然役職者としてやってきて、出世を阻まれることもしばしばだ。

社会保険労務士事務所も薄給であるが、年収300万台はそれほど難しくないし、本人の頑張り次第で幹部への昇格や独立も可能だ。中小企業で働き続けるよりは昇給や昇進の機会があるのだ。

執筆や講演のチャンスも増える

加えて、普通の会社員にはない大きなメリットがある。それは書籍や専門誌などへの執筆やセミナー講師が可能になることだ。

私自身も書籍を出し、大手週刊誌から取材を受けた。セミナーの講師も務めたことがある。社会保険労務士という資格を取っていなければ、こんなことはなかっただろう。一般の会社員が書籍を出すのは難しい。営業マンであれば、会社ではなく業界でダントツの実績を出さない限り無理である。自営業と同じで定年がないのもメリットだ。

難関資格を取得したからといって収入が劇的に上がるわけではない。正直、勉強代もかかるので持ち出しかもしれない。ただ、セカンドキャリアを得るチャンスや仕事の広がりが期待できることは確かなのだ。

佐藤敦規(さとう・あつのり)FP・社会保険労務士
1964年東京生まれ。中央大学卒業後、パソコン関連誌の編集に携わる。30代中盤からは印刷会社に勤務し、テクニカルライターとして家電製品からシステム関連まで100種類以上の取扱説明書を作成。2年前よりFP・社会保険労務士に転向。のべ700人以上のライフコンサルタントを行っている。著書に『税理士ツチヤの相続事件簿』(星雲社)などがある。(『 The 21 online 』2016年08月10日 公開)

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