働き方改革,労働力人口,長時間労働,ダイバーシティ
(写真=PIXTA)

要旨

日本政府は人口や労働力人口が継続して減少している中で、長時間労働・残業などの悪しき慣習が日本経済の足を引っ張って生産性低下の原因になっていると考え、最近、働き方改革に積極的な動きを見せている。

日本政府が働き方改革を進めている理由としては、(1)日本の人口、特に労働力人口が継続して減少していること、(2)日本の長時間労働がなかなか改善されていないこと、(3)政府が奨励しているダイバーシティー(多様性)マネジメントや生産性向上が働き方改革と直接的に繋がっていることが挙げられる。

働き方改革が生産性向上や経済成長だけを優先にすると、労働者の生活の質はより悪化する恐れが高い。そこで、働き方改革がマクロ的な数値を引き上げることを優先にするより、労働者の健康や生活の満足度を優先的に考慮して実施されることを望むところである。それこそが働き方改革による弊害を最小化し、より住みやすい社会の構築に繋がる「真の働き方改革」であるだろう。

はじめに

日本政府は人口や労働力人口が継続して減少している中で、長時間労働・残業などの悪しき慣習が日本経済の足を引っ張って生産性低下の原因になっていると考え、最近、働き方改革に積極的な動きを見せている。

2015年には企業及び労働者が働き方改革に積極的に参加できるように「働き方・休み方改善ポータルサイト」を開設し、事業主等に対して自社の社員の働き方・休み方の見直しや、改善に役立つ情報(働き方・休み方改善指標等)を提供している。

また、厚生労働省は、労働時間等の設定の改善により、所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を図る中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する助成金制度も導入した。

さらに、安倍首相は働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づけ、今年の8月3日に発足した第3次安倍再改造内閣に「働き方改革担当相」を新設し、そのもとに「働き方改革実現会議」を開き、年度内をめどに実行計画をまとめて行く方針を固めた。

8月26日には2017年度に働き方改革を推進するために、特別会計を含めて877億円を計上しており、最近では来年度から、退社から次の出社までに一定の休息時間を保障する「インターバル規制」の導入に取り組む中小企業に対して助成金を支給する方針を固めた。

企業の対応も手早い。トヨタ自動車は今年の6月にほぼすべての総合職社員を対象に週1日、2時間だけ出社すれば、それ以外は自宅等社外で働ける在宅勤務を導入することを発表した。また多くの企業で時間外勤務ゼロ運動や積立休暇制度、リフレッシュ休暇等の措置など長時間労働を減らすための措置が実施されている。

今なぜ働き改革が急速に進んでいるだろうか。本稿ではその理由を明確にしたい(*1)。

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(*1)本稿では、金明中(2016)「曲がり角の韓国経済第11回 労働者を優先した働き方改革を」東洋経済日報2016年9月2日を一部引用している。
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