渡瀬謙,雑談術,グッズ活用
(写真=The 21 online/渡瀬 謙(サイレントセールストレーナー))

「相手のモノ」を話題にして距離を縮めよう

雑談の取っかかりを作るために、珍しいグッズが役に立つと考える人は多いだろう。だが、内向的で話し下手な営業マンのための教育事業や書籍の執筆で活躍する渡瀬謙氏は「目新しいグッズに頼ろうとするのは危ない」と指摘する。一方で、視点を変えることで、グッズ活用の新たな可能性が見えてくるともいう。雑談におけるグッズの効果的な使い方をうかがった。

グッズを用意しても、まず役には立たない

まず大前提として、「『雑談を弾ませるために、こちらで何か目新しいグッズを用意していこう』という発想は間違いの元です」と渡瀬氏は言う。

「『これがあれば絶対に盛り上がる』と期待して、ネタになりそうなグッズを仕込んでいく、というやり方だと、ハズすことが多いですね。たとえば、携帯電話にストラップをジャラジャラとつけて、わざと相手の目の前に置いて突っ込まれるのを待つ、といった方法です」

雑談に自信がないと、ついネタになりそうな「面白いグッズ」「珍しいグッズ」を用意したくなるものだが、なぜそれが間違いなのだろうか? それは、ビジネスにおける雑談の本質に関わる。

「雑談の目的は、相手に警戒を解いてもらい、そのあとのビジネスの話を進めやすくすること。そのためには、こちらが面白い話をするのではなく、相手に話してもらうことが重要です。

では、相手に話してもらいやすい話題とは何か。それは、相手にとって距離が近い話題です。つまり、相手自身や、相手の会社などについての話題を選ぶのがいい。

ということは、こちらで『面白いグッズ』を用意して、その話をしても効果がないということです。相手にとっては距離が近い話題ではありませんから。せいぜい『ああ、そうですか』で終わり。ヘタをすると『なんだ、こいつは?』と警戒心を強めさせてしまいかねません」

相手の持ちモノを初対面で褒めるのはNG

こうした失敗をしないために必要となるのが、「相手目線」によるグッズ選びだ。

「まずは、『相手にとって距離が近いグッズ』を持っていくことです。相手も愛用している、あるいは愛用している可能性の高いグッズを自分も使うのです」

もう一つは、自分が持っているグッズではなく、相手が持っているグッズを話題にすることだ。

「自分が『面白いグッズ』を仕込んでいくのは禁物ですが、相手が突っ込んでほしそうなグッズを持っている場合には、見逃さずに『それはなんですか?』と話題にしましょう。

相手先を訪問した際なら、その部屋にあるモノを話題にするのもいいですね。『これはなんですか?』『電話会議システムなんですよ』というように、オープンクエスチョンにすることも、雑談を弾みやすくするちょっとした工夫です。

また、相手の持っているグッズを話題にするときは、褒めようとしないことも大事です。初対面の相手に『素敵なネクタイですね』などと褒められて、素直に嬉しいと感じられるかどうかは微妙なところではないでしょうか。『おべっかでは?』と勘ぐりたくなる人も多いはずです。下手に褒めるよりも、『ネクタイの色、鮮やかですね』『見たことのない手帳ですが、どこのですか?』などというように、関心を持っていることだけを伝えるほうがいいでしょう。

雑談においては、相手や商談の場を観察し、相手に近いことを話題に選んで、相手に話してもらう。これが鉄則です。自分がグッズを持っていく場合でも、それは『補助』にすぎないことを忘れないでください」