◆カバン

あるとき、床に置いたカバンの中にある書類を探しながら、かがんだ状態で受付の女性と話していた渡瀬氏は、相手の緊張感が解けるのを感じたという。

「私の身長だと、たいていの女性は見下ろす形になってしまいます。かがむことで目線の位置が変わり、見上げる形になったとたん、リラックスした雑談ができるようになったのです」

手に持ったまま中をのぞけるカバンは機能的だが、相手の警戒心や緊張感をほぐすためには、地面に置かないと中を探れないカバンが役立つこともある。そういうカバンを選ぶべきだ、というわけではなく、いつも持っているグッズを雑談に使えるという例だ。

◆ちょっとした新商品

雑談を苦手とする人にとって、会議室で面と向き合う以上に気まずいのが、相手と一緒に移動するとき。たとえば一緒に電車に乗る場面だ。周りに多くの人がいるので仕事の話をするのも難しく、気まずさは頂点に達する。そんなときに役立つのが、ちょっとした新商品だ。

「キャンディーのような、配ることができる新商品を見つけたら買っておくのです。それを『どうぞ、新商品らしいですよ』と勧めると、『変わった味ですね』『意外といけますね』などと雑談が弾みます」

ついでに、「新しいモノにアンテナを張っている人」という印象づけもできそうだ。

◆喫茶店のメニュー

喫茶店で人と会う場合に、渡瀬氏はメニューを見て、そこから話題を探すことをルーティーンにしていた。

「何も用意をしていなくても、メニューは必ず店にあります。メニューを見て、何か気がつくことがあれば話題にできます。『意外とコーヒーが高いですね』とか『キウイジュースって珍しいですよね』とか。しかも、メニューだったら相手と自分との共通の話題になります」

喫茶店に限らず、どうしても話題に困るようなら、机の上や壁を見てみよう。「そこにあるグッズ」を使うという視点を忘れないようにしたい。

渡瀬 謙(わたせ・けん)サイレントセールストレーナー
1962年、神奈川県生まれ。〔株〕リクルートで内向的な性格のままの営業スタイルを貫き、全国営業達成率トップを獲得した経験を持つ。現在は、営業職を中心としたビジネスマンの教育事業・セミナー講演などを行なう。また、テレビやラジオ、ビジネス雑誌などにも登場。近著に『超一流の相手にしゃべらせる雑談術』(PHP研究所)などがある。(取材・構成:川端隆人 写真撮影:まるやゆういち)(『 The 21 online 』2016年5月号より)

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