「動物の本能」を捨てる時代が来た

こうして理路整然と解説されると、「分類しない」ことは理にかなっていると納得できる。なぜ私たちは、「整理とは分類である」という思い込みから抜け出せないのか。

「その理由は明白で、分類は動物の本能だからです。動物はエサを見つけたら、食べられるものと食べられないものに分ける。かつては人間にとっても、安全な野草と毒草を区別することが重要でした。つまり分類は、動物が生きるために必要な作業だったのです。

ところが、その本能を捨てるべき時代が来てしまった。今や私たち人間は、本能に反するほどの高度な文明社会に生きています。むしろ、本能に従っていては生きられない時代と言って良いでしょう。しかし多くの人は、動物の本能をいまだに引きずっている。それは何億年にもわたって受け継がれてきた遺伝子なので、今さら分類をやめろと言われても簡単にはいかないのでしょう。

私にも、書類や情報を分類しようと試みた時期があります。しかし、すべて失敗した。いわば整理の劣等生だったからこそ、『分類しようとするのが、そもそもの間違いである』という本質に気づくことができたのだと思います」

『話すだけで書ける究極の文章法』

話すだけで書ける究極の文章法
野口悠紀雄著
講談社/1,620円(税込み)
人工知能による音声入力機能を用いて書いた本。野口氏の仕事スタイルを一変させた、仕事が驚異的に進む音声入力の使い方とは。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問/一橋大学名誉教授
1940年、東京都生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、イェール大学Ph.D(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2011年より現職。著書に、『「超」整理法』(中公新書)、『超「超」整理法』(講談社)など、ベストセラー多数。(取材・構成:塚田有香 写真撮影:長谷川博一)(『 The 21 onlin e』2016年11月号より)

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