中国でネット児童ポルノ事件が摘発された。児童ポルノの制作と流通に関わる大規模なもので、捜査対象者は数百人に及んでいる。この方面の犯罪は、犯罪の百貨店のような中国でも比較的珍しい。どんな経緯をたどったのか記事の内容を見ていこう。
米国からの通報
2016年3月7日、北京市公安局網絡安全保衛隊に、公安部から連絡が入った。米国国土安全保障省税関国境警備局からの通報を知らせてきたのだ。米国土安全保障省の行っている日常のネット巡回中、国境外の“隠蔵網絡空間(クラウド)”上で大量の“児童色情”画像と動画を発見した。管理者のアドレスは中国・北京である、という内容だった。
米側の情報提供は、管理人とそのアドレスなどに限られていた。捜査チームは手探りでその“暗黒空間”への進入方法を探した。隠蔵網絡空間は、インターネットの技術資源が集中したところである。ネット空間の構造解析や、高度な知識を必要とし、捜索は難航した。しかし2~3日後には、暗黒空間への第1次進入に成功した。
摘発された視聴者
さらに数日の追跡を経て、捜査チームはアメリカ側の情報にあったこの“色情ネット”のVIP会員容疑者を特定した。この容疑者は摘発されたとき、100本以上の動画を視聴し、再生回数は2万回に及んでいた。
また警察は、北京市朝陽区内にある孫容疑者の自宅を捜索した。すると31本の動画、400ギガ分を保存しているのを発見した。孫は19歳、北京の某大学2年生で、学業成績は非常に優秀だった。彼は、QQ群、百度など中国を代表するネットインフラを通じて購入した、と供述している。また彼は英語力やコンピューター知識にもすぐれ、これらの映像を“伝播”させるのに貢献していた。
彼はスマホとコンピューター上で30以上のグループを持ち、すでに彼を通じて数千人がダウンロードしていた。捜索チームの責任者は「これほど多くの中国人が児童ポルノを視聴していたとは悪夢だ」と述べている。現在捜査対象地域は、20省に跨り、逮捕者17人、捜査中の被疑者は数百人に及んだ。
視聴者は制作者を兼ねる
基本的に視聴者も制作者も中国国内だった。また視聴者は制作者でもあった。捜査チームによると、被害にあった児童のほとんどは農村出身である。長期にわたって性的虐待を受け、制作者の住居に拘束されていた。
また容疑者の職場周辺の児童もいた。これらの児童は被害にあっても、どんな理由からか警察には通報していない。捜査チームは特にこの点には心痛を感じているという。
クラウド空間は日常的に強い匿名性で覆われている。北京市公安局網安総隊の責任者は、メンバー30人以上のサイトは、創立者、管理者、伝播者に対し、結果の重大さに応じ刑事罰を適用する。違法犯罪活動の打撃に全力を挙げる、と宣言した。
孫は法廷で懲役1年6月の有罪判決を受けた。暗黒空間との闘いは開始されたばかりだ。記事はこう結ばれている。
中国では女性が強いこともあり、痴漢その他の変態犯罪はこれまであまり目立たなかった。それも今は昔、街では新聞には出ない、いかがわしい事例も噂されるようになっている。中国人も高度ストレス社会にさらされるようになったのが、こうした現象の一因だろう。今後も繰り返されるに違いない--。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)