11月の実質消費支出は減少幅が拡大
総務省が12月27日に公表した家計調査によると、16年11月の実質消費支出は前年比▲1.5%(10月:同▲0.4%)と9ヵ月連続で減少し、減少幅は前月から拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比0.2%、当社予想は同▲0.8%)を大きく下回る結果となった。前月比では▲0.6%(10月:同▲1.0%)の減少となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲1.9%(10月:同▲0.1%)、前月比▲0.7%(10月:同▲1.5%)となった。
実質消費支出の動きを項目別に見ると、食料は名目では前年比0.1%の増加となったが、生鮮野菜を中心に食料の物価上昇率が前年比3.6%の高い伸びとなったことから実質では前年比▲3.4%の減少となった。また、教育(前年比▲10.9%)、住居(同▲7.7%)が大幅に減少するなど、10項目中7項目が減少した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲1.8%(10月:同▲0.5%)と2ヵ月連続で低下した。同指数は16年4-6月期の前期比2.1%、7-9月期の同▲0.5%の後、10、11月の平均は7-9月期を▲1.1%下回っている。同指数は16年度入り後持ち直していたが、夏場以降は天候不順の影響もあり弱い動きとなっている。
その他の消費関連指標は家計調査ほど弱くない
家計調査以外の11月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の公表は12月28日だが、百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲2.4%(店舗調整後)と9ヵ月連続の減少となったものの、10月の同▲3.9%から減少幅が縮小した。前年比で二桁の大幅減少が続いていた外国人観光客向けの売上高が前年比▲7.1%と7ヵ月ぶりに前年比で一桁の減少まで持ち直した。
また、外食産業売上高は休日が前年より1日少なかったこともあり、前年比1.7%と10月の同5.3%から伸び率は鈍化したが、客数、客単価ともに前年の水準を上回り3ヵ月連続の増加となった。
16年11月の家計調査は非常に弱い結果となったが、月々の振れが大きい統計であることや他の消費関連指標の動きと合わせて考えると、消費の回復基調が途切れてしまったと判断するのは早計だ。
家計調査の弱さの一因は、生鮮野菜の価格高騰が実質(数量)ベースの消費の抑制要因となったことである。11月の生鮮野菜の購入単価(平均価格)は前年比で30%台の高い伸びとなり、購入数量が10%近く落ち込んだ。また、購入数量の減少にもかかわらず価格高騰によって生鮮野菜の支出金額が20%近く増えたことがその他の消費の抑制につながった可能性もある。
東京都区部の消費者物価指数では生鮮野菜の上昇率が11月の前年比36.6%から12月には同21.0%へと鈍化したが、依然として高い伸びとなっている。生鮮野菜の価格高騰による消費への悪影響には引き続き注意が必要だ。
斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
経済調査室長
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